艶夜に、ほのめく。

篠原愛紀

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二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。

二夜。傲慢じゃないが優越感は生まれる。九

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 その夜は、沸々と怒りが次から次へと沸き上がってきて眠れなかった。
 私と泉さんは過去を気にしないと言っているのに、偉そうにいう弟の出現。
 半ば八つ当たり的に、綾香と隆一のバカップルも二度と視界に現れないぐらいの暴言を吐けば良かったと、せっかく興味もなかった存在にまで怒りが込み上げてきた。

 こんな時こそ一緒に寝たいのに、泉さんはソファ。
 明日は大きなソファを買おう。
 大きなソファなら潜り込んでも一緒に眠る。

 私は泉さんが『今』そばに居ればそれでいい。
 だって貴方は『遊馬さんが元カノの話をしてきて辛い』と私が泣いても、きっと抱き締めてはくれないでしょ?

 だから我儘や弱音は吐かない。
 ただぬくもりをくれたらそれだけで嬉しい。

 苛々で浅い眠りだった夜明け前、ゴソゴソと私のベットに泉さんが侵入してきた。


「泉さん」
「ごめん、起こした?」
「ううん。でも驚いた」

 無断で部屋に入ってくる人ではなかったから。
 キャミとパンツという恥じらいも無い姿に戸惑うけれど、泉さんはそのまま私を抱き締めた。

「あいつがいるから落ちつけなくて。美琴の体温に縋りたくなったのかもしれない」
「泉さん」
「今日も居座るのなら、犬小屋でも部屋の隅においてやろう」
「……それは優しい」


 クスクスと笑いながらも、高尚に私を諭した遊馬さんに優越感が止められない。
 本当に私は根性というか性根から腐ってるなあと自覚できる。


「やっとお互い平凡に生きられると思っていたのに、――邪魔は要らないよね」
「いらないいらない」

 ついでに部屋に鍵を閉めたので、どうしますか?と、ゴムを手に持っていた泉さんには笑った。
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