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四、ウソツキ、嘘つき、うそつき

四、ウソツキ、嘘つき、うそつき⑥

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「そこまで観察されるのは悪い気がしないけど。じゃあちゃんと俺の気持ちもわかってくれてるのかな」

「今ははぐらかさないで」

 誤魔化そうとするあたり益々怪しい。

 私がにこにこ笑って、ただただ無言でパスタを食べると観念したように息を吐く。

「俺が父の跡を継いで、社長になった時だよ。お世話になっている人たちへ挨拶回りして――会食して――ってとき」

「ほお」

 じゃあ隠す必要はないんじゃないの。

「祖父の誕生日パーティーの時も会ってるし、なんなら華怜とうちの妹以外は、交流あるよ」

「そう。教えてくれてありがとう」

交流があったことを秘密にしていた理由は分からないけどじゃあ、母とも交流があるということ。

母は、借金の肩代わりをしてくれたってだけで急に一矢さんと改装の時に話が持ち上がったようは口ぶりだったのに。

「すまんすまん。ハニーが近くの和菓子屋の豆大福が食べたいらしくってそちらにもいかなければいけなくなった」

お爺ちゃんは、にこやかな私と黙々と食事をする一矢さんを見て、楽しそう。
「お一人で大丈夫ですか」

「もちろん。日本なんて儂の庭のようなものだ」

おじいちゃんデザートにチョコレートパフェも食べて帰っていった。

タクシーを二人で見送り、車が完全にいなくなってから彼は時計を確認した。

「悪い。急いで帰らなきゃギリギリだ」

「……だから、おじいちゃんの呼び出しに無理しなくていいって」

「無理じゃなくて、俺がしたかったってこと。じゃあ、今日は遅くなる」

 呼んでいたタクシーがもう一台、お店の前で止まってくれた。

 私は歩いて帰れる範囲なので、乗り込む彼に手を振る。

「じゃあ、私の方が帰るの早いかな。食事は?」

「うーん。華怜のハンバーグが食べたいかな」

「了解です」

意外と子どもっぽいメニューが好きだよね。助かっているけど。

ハンバーグなら、家にひき肉とパン粉があった気がする。

もしかして家にある食材の中から答えてくれたのかな。

くるんと振り返ると、コンビニの袋を持った辻さんと目が合ってしまった。

口元に手をおいて、笑いを必死に隠している。

「……新婚ぽいね」

「う……」

数週間会ってないのに、髪にとれかけてたパーマがしっかり掛かり、青みがかった黒になっている。

「しかも俺を見て怯えていない」
隣に並んでこようと距離を詰められたので、ちょっと横に逃げてしまった。

「怯えていないけど、怖くなくなったわけじゃないです」

「そう? 以前は体を震わせたり視線も絶対に合わなかった。嫌われているって言うより、視界にも入れたくないって言うか、男に人権なんてありませんよっていう、空気扱い?」

ちょっと気になってたから、意外と応えたんだよね、と笑った。

確かに、チャラそうだし、実際に女性との関係が派手だって言っていた。

ヘアサロンのSNSには、辻さんがUPされると女性のコメントで溢れるし、その中の女性を食べちゃうとかなんとか。

そのせいで警戒もしていた。舐め回す視線も怖かったのは事実だ。
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