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四、ウソツキ、嘘つき、うそつき

四、ウソツキ、嘘つき、うそつき③

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「ん? うちの歯科、経営が苦しいのか?」

 しかも祖父には告げていないらしい。

 それはそうか。言ってしまえば、老後を楽しんでいる祖父の邪魔をしてしまう。

 一代でここまで築き上げてきた祖父が哀れだ。

「いや、シンボルであるお爺ちゃんがいないなら、大変じゃないのかなって」

「ははは。順調順調。お前の従兄弟たちは優秀だぞ」

「……そうなら、いいんだけど」

冷や冷やする。私が祖父にばらしたら、どんな火が起こるのか分からない。

「お前が心配することはなあんもない。借金は一昨年返し終わってるし、去年は年商も大幅アップしている。心配なら、見せてもいいぞ」
「えっ」

「じいちゃんがついつい最新の医療機器を購入してしまうがの、そんなんいつも数年で元がとれてる。一矢くんのおじいさんとツーカーだからね。あっちが新しいことすれば、じいちゃんもつい新しいものの手を伸ばしてしまう。嫁や息子の嫁からしたら、ハラハラだろうが結果は出してきてる」

祖父は自分の仕事に自信と誇りがあるからこそ、今の状況を知らされていない。

 感づいていても、信じられないのかな。

 ちょっと驚いたけど、ここはもう濁すしかない。

「それより、じいちゃん、華怜の純白のウエディングドレス見たいなあ。見たいなあ」

「えー……」

「まあ、華怜は芯がしっかりしていて頑固だから、お前の母親と一緒。絶対にじいちゃんの意見に譲ってくれないんだよねえ」

しゅんっと項垂れたふりをして、下を向く。

が、しっかりと携帯を見ているのには気づいている。

全く。油断ならない。

「ってなわけで、もうすぐ一矢くんがここにくるよ」

「はいは――は?」

「今すぐ来いって、怒ってるふりしたから飛んできてるよー」
「そんなの、急に言ったら彼の迷惑になるじゃない。一矢くんの肩書を知ってるでしょ」

「もう自分の孫のようなものだ。会って何が悪い」

 実はまだ孫ではないと言ってやりたい。

「ほれ、昔、小僧だった時に髪を切ったんだろ? 傷害で被害届を出すとお前の母の玲華が息巻く中、じいちゃんが説得したんだぞ」

「だからって。彼だって忙しいのに――」

 すぐに携帯で無理に来ないよう連絡を取ろうとした。

 カバンから携帯を取り出そうと横を向くと、タクシーが店の前で止まるのが見え、そこから慌ただしく出てくる一矢くんの姿が見えた。

 本当にまじめな人だ。少し前に、お昼のお弁当を一矢くんの分も作ろうかって提案したら『ゆっくり食べる時間がないし勿体ない。あと会食が入る場合もあるし』と残念そうに断っていた。

ゆっくりできないお昼に、わざわざこんな場所まで来てもらうなんて申し訳がない。

「忙しいのに、華怜のためなら駆け付けると。ほうほう中々じゃないか」

「おじいちゃん」
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