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三、雷、雨、不器用に降り積もる。
三、雷、雨、不器用に降り積もる。⑦
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女の子の態度だけでいけるかいけないか分かるなんて。
確かに御曹司で、性格もよさそうに見えるし顔もいいし完璧かもしれないけど。
だったら顔色がわかる簡単な女性と沢山遊べばいいのに。
私の心はとっくに冷えている。キスしてと迫ったのは私だったけど、一矢くんが女性との経験が豊富なことだけは分かった。
私みたいに男性と交流さえなかった女は、手玉にとれるように簡単な存在なんだろうね。
「ぷっ」
「なんで笑うの? 女性の敵」
「何を勘違いしてるのか分からないけどさ、多分違うよ」
拳で口を押えながら、一矢くんは体を震わせていた。
「俺は今までの華怜の反応の冷たさと今の反応を見て、ってことで。女性と遊びまくって得た経験なんてないよ。そんなもの、――華怜の前では無意味だし」
「はあ? その顔とその肩書で遊んでないっていうの?」
「どっかの『クソ』がつく父親のせいで、仕事が忙しくて遊ぶ時間はなかったと断言しとく」
それか、俺は実は一途なのかもね。
此方を向いて、ソファにもたれ掛かりながらの流し目。
自分の顔の良さで誤魔化そうとしても、私だけは騙されるものか。
***
「俺、今やばいぐらい楽しい」
「最低」
空になったカップを手に持ち、キッチンへと向かう。
最低だと思いつつも、ソファのすぐ横のカーテンが怖くて、彼の後ろをついていった。
「俺のことを親の仇って感じで睨んできたときは、悲しかったんだけど、俺は別に恥じる行為もしてないし、華怜への気持ちも嘘じゃないから。俺だけは華怜の前で偽らないように決めてたんだ」
「……そおだっけ。クールぶってお笑い好きなのも隠していたんじゃないの」
「格好つけは認めるけど。でも自分だって衝動的に華怜にプロポーズするぐらい舞い上がってたから、頑なに視線を合わせない君と一緒にいて心が折れそうにならなかったわけはない」
確かに私も素直じゃない部分は多々あった。
でも一矢がどう思っているかなんて全く考えていなかった。
借金の型に売られた形だと諦めていた部分もあるし。
「だから、こうやって普通に君と話せて、からかって、笑いあって、キスできてすげえ楽しいよ。絶対あきらめないね」
「……」
「お、照れた?」
照れたわけではない。経験値の少ない私には許容範囲以上の数々にショートしただけ。
「無関心より、嫌い、嫌いよりちょっと好き、その次はどうかな」
一人で盛り上がっているけど、別に私は一矢くんのことを『ちょっと好き』ではない。
触れても、平気。目を見れて話せる。
試す場合は好きに使って構わない。そう言われた存在だ。
言い返さず睨みつけて終わったが、珈琲を二人分いれる行為さえも楽しそうでなんだか少しだけ悔しかった。
まるで私の心みたいに、その夜は雷が何度も止んでは繰り返し鳴ったので、朝方まで一緒にホラー映画を見たのだった。
確かに御曹司で、性格もよさそうに見えるし顔もいいし完璧かもしれないけど。
だったら顔色がわかる簡単な女性と沢山遊べばいいのに。
私の心はとっくに冷えている。キスしてと迫ったのは私だったけど、一矢くんが女性との経験が豊富なことだけは分かった。
私みたいに男性と交流さえなかった女は、手玉にとれるように簡単な存在なんだろうね。
「ぷっ」
「なんで笑うの? 女性の敵」
「何を勘違いしてるのか分からないけどさ、多分違うよ」
拳で口を押えながら、一矢くんは体を震わせていた。
「俺は今までの華怜の反応の冷たさと今の反応を見て、ってことで。女性と遊びまくって得た経験なんてないよ。そんなもの、――華怜の前では無意味だし」
「はあ? その顔とその肩書で遊んでないっていうの?」
「どっかの『クソ』がつく父親のせいで、仕事が忙しくて遊ぶ時間はなかったと断言しとく」
それか、俺は実は一途なのかもね。
此方を向いて、ソファにもたれ掛かりながらの流し目。
自分の顔の良さで誤魔化そうとしても、私だけは騙されるものか。
***
「俺、今やばいぐらい楽しい」
「最低」
空になったカップを手に持ち、キッチンへと向かう。
最低だと思いつつも、ソファのすぐ横のカーテンが怖くて、彼の後ろをついていった。
「俺のことを親の仇って感じで睨んできたときは、悲しかったんだけど、俺は別に恥じる行為もしてないし、華怜への気持ちも嘘じゃないから。俺だけは華怜の前で偽らないように決めてたんだ」
「……そおだっけ。クールぶってお笑い好きなのも隠していたんじゃないの」
「格好つけは認めるけど。でも自分だって衝動的に華怜にプロポーズするぐらい舞い上がってたから、頑なに視線を合わせない君と一緒にいて心が折れそうにならなかったわけはない」
確かに私も素直じゃない部分は多々あった。
でも一矢がどう思っているかなんて全く考えていなかった。
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「だから、こうやって普通に君と話せて、からかって、笑いあって、キスできてすげえ楽しいよ。絶対あきらめないね」
「……」
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言い返さず睨みつけて終わったが、珈琲を二人分いれる行為さえも楽しそうでなんだか少しだけ悔しかった。
まるで私の心みたいに、その夜は雷が何度も止んでは繰り返し鳴ったので、朝方まで一緒にホラー映画を見たのだった。
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