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金曜日。 素敵なお嬢さんと猫。

金曜日。 素敵なお嬢さんと猫。1

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その日の店は、猫カフェに姿を変えていた。定宗を筆頭に、猫四天王、その配下がぞろぞろと店の中に歩き回っている。お客も週に一度の猫カフェを目的に来ている人が多かった。
店長も、この前の影はどこへやら、天真爛漫が似合うような笑顔でスキップしている。そんな猫カフェも終盤になった夕方だった。モデルの様な、高身長の美少女が入店した。
「はぁい。 私に炒飯大盛りお願ーい」
サングラスに長い手足、ミニスカートから生える太ももは白く美しい、誰もが目を奪われる美少女。だが、みかどはどこかで見た事あるような既視感を感じていた。
「鳴海、よろしくねん」
その美少女は、キッチンにいる店長に投げキッスをすると、お店の一番奥の席に座る。その姿を見た猫たちがぞろぞろ彼女の後を追っていく。
「炒飯なんてメニューは無いのに。毎回毎回、本当に我が儘ですね」
店長はぶつぶつ文句を言うが、冷蔵庫を開けて炒飯の材料を物色し始める。みかどがお冷やを渡すと、その美少女は微笑んでくれた。
「ありがとう。みかどちゃん」
「えっ どうして私の名前を……」
驚き後ずさると、美少女はサングラスを外した。
「彼氏の鳴海から、色々聞いていますの」
「かれ、しー……?」
頭にタライが落ちた来た様な、衝撃。何故か胸が、ズキズキ、呼吸が速くなっていくのを感じた。
「もぉ理人さん!」
けれど、その絶望はすぐに店長の怒鳴り声でかき消された。
「リヒトさん?」
「ハーイ。リヒトでーす」
リヒトさんは、長い茶髪の髪を取り、切れ長の目をウインクさせた。綺麗だと思っていたけれど、いざ女装されると、自分とは比べられない程に美しいと泣きたくなる。道理で猫たちが近寄って行くわけだ。猫をも虜にする色香は、女装しても健在だった。
「もうっ炒飯できるまで静かに待ってて下さい!」
みかどは店長に腕を掴まれ、引きずられる様に、キッチンへ連れて行かれてしまう。理人は、余裕綽々で優雅に手を振ってくれてました。
「すみませんね。透さんは冗談が好きなので、気にしないで下さいね」
「えっ はい。でも、あの、……腕が痛いです」
みかどは掴まれている腕を見た。
「す、すいません!」
慌てて単調は腕を放すと、頭を掻いて申し訳なさそうに謝った。何故か短い沈黙ができてしまい、みかどはお冷やのボトルを掴む。
「お、お水のお代わり見てきますね」
店長も腕捲りしてキッチンへ入って行く。
昨日、店長の話を聞いたからか、千景が『好きなの?』とか意地悪を言うからか、店長の顔を見るのに、少し身構えてしまう。みかどが初めて、恋愛対象として店長を見てしまいそうでうろたえている。理人店長の彼女だと言った時、凄く胸が苦しくなった。上手く言えないが、きゅーっとして、ポワンと足元が浮かぶような。チクチクして、フワフワするような。そうやって、色々考えながら歩いていたら、クスクスと笑っている声に気づいた。理人が、席に両肘をつき、可愛らしく顎を置いて此方を見ていました。
「百面相、もう終わり?」
余りにも色っぽく笑うから、みかどは思わず赤面してしまった。
「本っ当に、みかどちゃんは擦れてなくて可愛いね」
「そんなっ」
「俺ね、女の子って、息してるだけで、ううん、生まれてきただけでも可愛いと思うよ」
そう言って、水の入ったボトルを奪われ理人は自分で優雅に水を注いだ。
「みかどちゃん、この前1人で店に来てくれたでしょ? オシャレの第一歩に、自分の服を選んでくれて――本当にありがとう」
甘く、艶やかな雰囲気なのに、綺麗で、美しいのに、何故か話す理人は男らしくドキドキしている。女装して綺麗なのに、男らしいって不思議な人だ。
「慎ましやかなのも可愛いけど、今度またトールにメイクさせてあげてね」
ナイスタイミングで店長がキッチンから珈琲を持ってきたが理人は気づいていなかった。
「だって、『デート』するんでしょ? 千景ちゃんから聞いたよ」
「千景ちゃんから、誘惑できるぐらい綺麗にしてやってって言われたけど、このままでも俺はいちころなのにな」
体温が下がると同時に、みかどは店長を見上げたけれど、店長は急いで逸らすとキッチンへ入っていった。迷惑メールだからと着信拒否して貰い、尚且つ心配して何か力になりたいと言ってくれた、のに。たとえ、その感情に特別なモノなんでなくても。たとえ、メールを見た罪悪感から、力になりたいと言ってくれていたとしても。たとえ、土日なら助けてくれないとしても。みかどは今、優しい店長の気持ちを、蔑ろにした。内緒で、あんなメールの人とデートするって思われた。ズルくて、なんて酷い嘘つきなんだろうと誤解されたはずだ。
「どうしたの? 岳リンとデートなんでしょ?」
「ああああの」
「つまり、鳴海んの為なんだろ?」
「何故、僕の為?」
猜疑心の強い眼差しで理人を見るが、あっけらかんとした顔で言う。
「あぁ。鳴海んは接触禁止になってる人間なんだけどね。フラッシュバックの原因を知ってるみたいだから、みかどちゃんが誘惑して聞き出すんだってさ」
「な、何でみかどちゃんがそんな事を? 僕は、別に平気なんですよ?」
単調がオロオロし始めると、苛めるのを満足した理人が猫たちとテラス席に消えてしまった。
「あの、僕今の生活に不便なんて無いから、危険な事しないで下さいね?」
「だったら、私、201号室から出て行かなければいけなくなるんです。お兄さんの隣の部屋なのに、お兄さんがフラッシュバックを起こしてしまう、ワードや出来事を知らなければ、もし『それ』を言ってしまったら……? もし思い出させてしまったら……? 私は、もう此処には居られなくなるんですよ。だから、お兄さんを傷つけても、お兄さんの隣に居たいから、彼と対決するんです。大丈夫です。皇汰たちとしっかり相談しているんですから」
安心して貰おうと明るく笑うが、店長の顔は晴れない。店長は複雑そうな顔ではミキサーに牛乳、砂糖、苺、蜂蜜と氷を入れて、混ぜだした。ガリガリと氷が削らていく音は胸が高鳴りそうだが、みかどは意味が分からずただ見つめた。
「簡単だから、作り方すぐ覚えられると思う」
そう言ってグラスに流して渡してくれた。一口飲んだら、口の中に苺の甘酸っぱさが香り、すぐに甘い蜂蜜が喉を通り抜ける。とても美味しいと素直に思えた。
「新メニューにどうでしょうか? チーズケーキやパンに合わせようと思ってるのですが……」
なる程、試作品の味見だったようだ。
「凄く良いと思います。よく母が作ってくれてた苺ミルクセーキを思い出しました」
そう言うと、レモンタルトを差し出していた店長の手が止まった。
「何故ですかね、僕、みかどちゃんの笑顔が見たくて、試作品のふりして、みかどちゃんの好きな物を作ってしまいました。みかどちゃん、苺が好きだって千景さんに聞いたんですよ」
「え、あ、そういえば、千景ちゃんとそんなメールしたかも」
「タイミングが難しくて、ちょっと気まずい雰囲気になってしまったのですが……」
さきほどはちょっと意識してしまってたから、お互い軽い無言になってしまったようだ。安心して、へらへらと口元を間抜けに歪ませて笑ったみかどを見てクスクス笑い店長も、極上に、甘くとろけるように笑った。
「確かに、女の子って可愛くてズルいですね」
「あまーい! 甘いあまーい!」
パンパンと右上で両手で叩きながら、テラスから理人が登場した。
「ふうん。二人とも、そんな雰囲気なんだあ。だからみかどちゃんも店長の為に頑張るんだ」
「ほん、本当にお兄さんには関係ないから、違います!」
ぽかんとする店長はどんどん寂しそうに瞳を揺らす。
「――そんな、僕の事なのに」
(違う違う! これって功を焦って墓穴を掘る!? 口は災いの元!?)
喋れば喋る程にどつぼにハマりそうになり気まずくなったみかどは、固まっている店長を残し、そろりそろりと逃げ出した。
**
「うぅ……。理人さん酷いです」
四匹の店員は、綺麗な理人さんにうっとりしている。一匹一匹、色の違うお皿に盛られたご飯を食べてはトールさんを見てうっとり、食べては見てうっとりを繰り返す。でも、その美しい顔にみかどは騙されないと誓う。
「聞き出す事まで知ってるのに、お兄さんの前で言うなんて駄目ですよ」
ちょっと強めに言うと、理人はにっこり笑った。
「俺、女の子が影で努力してるのを気づかない奴、嫌いだから」
「それはっ 私が勝手にやって……」
すると、理人の長い人差し指がみかどの唇に触れた。魔性で極上にセクシーで艶めいていた。
「鳴海んは、もっと自分の感情に正直になるべきだし、皆が皆、腫れ物みたいに扱って、あいつ成長できないだろ?」
(やはり、綺麗な人の笑顔ってズルいな)
一喜一憂してるみかどを、理人の笑顔は全て受け止めて、安心させてくれる。店長には悪いがみかどだって店長や、出会った人々を大切にしたい。だから、それがエゴだとしても怖いけど、前に進む。
「頑張ります。今度は負けません」
理人さんには今の所、全てに置いて完敗中だがみかどはガッツポーズでそう言う。理人がこんなに綺麗な女装をしているのは、透のメイクのモデルをしたかららしい。こんなに綺麗にして貰えるメイクをみかどはして貰えるのだと思うとときめきが治まらない。散々、引っ掻き回し理人が帰ると、二人は気まずくぎこちない時間を過ごた。それが、今の二人の距離。優しくされればされる程、真実は遠ざかる。
『お父さん』への影を、取り払ってくれた店長に、一体、何ができるのだろう。分からないままも、みかどは決意を強く胸に秘める。
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