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火曜日 リヒト&トールこの世に生まれてきたすべての女性が愛しい。

火曜日 リヒト&トールこの世に生まれてきたすべての女性が愛しい。2

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「2人が来たら、猫さん達が帰ってこないんですよ。定宗さんに見つかったら怒られるから、可哀想なのに」
「でも猫でも女の子は女の子だからね」
 店長は美味しそうなホットケーキとアイスクリーム、そしてチョコパフェをお盆に乗せた。誰のかなと首を傾げていると、視界にあるものが入った。カフェの入り口に、大勢の女性が開店を今か今かと待ち構えている。
「今日はまた一段と忙しそうです。お願いしてもいいですか?」
「はい!」
 手伝うのは何だろうと思ったら、店長はデザートを置いてまたキッチンへ走って行く。どうやらみかどに二人のお守りををお願いしたらしい。店長が現れると、猫四天王は浮気が見つかった彼女のように、気まずげに店長にすり寄っていく。
「見てみろよ! 鳴海んっ 俺のデザインしたその服、女の子が着たらヤバい程可愛いだろ」
「そうですね。華やかになります」
 美形二人から頭を撫でられ、良い匂いもしてくる上に目のセクシーさが半端なく、口から心臓が飛び出そうだ。
「みかどちゃんも、プリンをどうぞ」
 結局理由が分からないままの店長に椅子を引いてもらい、恐る恐る二人から少し離れて座った。店長が作った、蜂蜜プリンはとろっとしてて、甘くて美味しい。
「やっぱ、女の子のために、スイーツって生まれたと思う」
「美味しそうに食べる女の子って、食べちゃいたくなる程可愛い♪」
(ひっどうしよ、うた、食べられる……?)
 だがこの二人の浮世離れした美形さならば、吸血鬼だと言われても納得がいく。
「みかどちゃんを困らせないでください。みかどちゃん、この2人、女性を見れば口説くんだから気をつけて下さいね」
 二人は声を合わせて店長を睨みつける。
「失礼な。ただ、女の子は皆、生まれながらに美しい!」
「 男たちはそんな姫を守る為に生まれたんだ!」
 芝居かかった口調で言うが、生まれもって美しいのは二人だろう。みかどは口には出さないがそう思っている。
「だから、俺はデザイナーに。君みたいな可愛い子にお手軽に可愛くなって欲しくてね」
 そう言って金髪の人は、エプロンを指差した。
「君の永遠の専属デザイナー、リヒトと申します」
 そして、エプロンを捲りあげて、キスを落す。
「そして、俺は君の永遠の僕(しもべ)。悲しい時も嬉しい時も困った時もおそばに居させてね」
 ほっぺについていた蜂蜜を、指で掬われ、舐められた。そして、渡された名刺には高級ホストクラブの名刺で『No.1 トール』と写真、携帯の番号が書かれていた。
「ほ、すと」
 初めて見る職業にあわあわしていると、トールに慌てて名刺を奪われる。
「ごめん、それバイト先。俺はこっち。メイクの専門学生なの」
 ホストをバイトしているとは、さらに未知の説明にみかどは立っているのがやっとだった。
「外で待っている女の子たちは、この双子目当てでもあり、二人に洋服のコーディネートしてもらったりメイクの 指導してもらったりと、月曜は女の子がいっぱい来るんです」
「そ、そうだったんですね」
 外で待っているお客が、皆二人目当てなのは、その化粧や服装のヤル気から分かる。可愛くて、女の子らしくて、みかどは自分の部屋に置いたえる段ボールの中身を思い出した。ジャージに母が着てた古いワンピース、制服に体操服、ジーンズにTシャツ。お洒落なんてしたことがない。だが、オシャレをしなかったわけでは無く出来なかったのだと思い出した時だった。開店時間と同時に、待ち切れなくて店長の制止を振り切り、入ってきた集団にみかどは二人の前からはじき出された。
「みかどちゃん、危ない!」
 店長が庇おうとした時にはもう既にみかどは椅子で頭を打ち、美形二人のフェロモンから解放され緊張の糸も切れ気を失う寸前だった。
「大丈夫ですか? すぐ氷をお持ちしますから!」
「あ、ありがとうございます」
 眩暈がする中、店長の後姿を見る。今日は蝶の被りモノをする予定だったのか小さな蝶の羽を背負っているのが見える。
「じゃあ、皆並んで順番ね」
「自分の順番が来るまではケーキ食べて待ってなね」
 二人が、押し寄せる女の子たち一人一人に丁寧に接しているのを見て、みかどの胸は苦しくなった。
『で?』
 眩暈がする頭の中に響く声。
『その服を買えば、お前の成績は上がるんだな』
 耳を塞いでも、その声は記憶の片隅で音を鳴らす。
『小遣いはこの口座に振り込む。小遣いの額は統計データに基づいた、高校生の平均額だ』
 そうだ。その声は間違えてない。みかどに冷たく言い放つその声は、間違ってはいない。――統科学的には、きっと。だが、それはみかどを深く傷つけるだけだった。
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