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エピローグ。
エピローグ。①
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貴方は、私の中の忘れられない、たった一人の人。
全て、生涯も青春も初恋も初めても捧げた人。
もう二度と戻れなくても、
貴方がくれた命と、私は生きて行くって決めた。
この命を、助けてくれた幹太のおかげでそう決めた。
幹太の心に甘えたくなくて、言わない幹太が悪い。
正直に言わなくて、背中を向ける幹太が悪いと、
私は何もかもから逃げてきた。
それでも、空は朝になるし夜になるの。
夕暮の空は、幹太が照れた空の色。
朝焼けの明星が輝く紫色の空は、夜から私を奪い去って行く貴方の色。
ネクタイを緩めながら、台所に近づいてきて鍋を覗きこむのが貴方の日課で、
お皿を並べてくらながら、鼻歌を歌って嬉しそうな貴方が好きだった。
今も心を埋め尽くす。
放課後の予鈴が鳴る中、貴方はテープでツギハギだらけの学校新聞を貼り直してくれた。
廊下に伸びる、貴方と私の影は、離れたくないと寄りそっていた。
中学になって、檀祖は男子、女子は女子にと群れる中、貴方は顔を出してちゃんと私に手を振った。
学校から戻って、二人や三人で勉強するのが好きだった。
堪らなく愛しくなる。
高校になると、カップルは増えて行って、私と貴方が一緒に居るのが増えても別に中学みたいに冷やかさせることもなかったんだ。
――貴方の思い出の中にもちゃんと幹太は居るんだね。
新聞を破った巴ちゃんと立ち回りして、右手に包帯をぐるぐる巻いてきたね。
心配して、お礼とごめんねをしたら、怪我が治るまでずっと無視されてた。
今なら分かるよ、私が責任を感じないようにわざと距離を置いたのを。
店番ばっかで、一緒に勉強会に参加してくれなくなったのも。
製菓の学校になったのも、私が言った宝物を守ろうとしてくれたんだって。
見えなかったのと見なかったのでは、もう罪の重さも違うと思うんだ。
私は、貴方の事が――好き。
桔梗の花に溜まっていく朝露のように、貴方の気持ちも私の気持ちも、もう隠せない。
キラキラと輝いている。
じゃあ、晴哉の帰りを待つのを止めて、幹太の隣に歩いていけるのかな。
「おかえりなさい、桔梗ちゃん」
とぼとぼと重い足取りで家に帰ろうとして、家の門の前に巴ちゃんがいた。
「壁に擬態しないでよ……」
今は、もう誰にも会いたくなかったのに。
「私ね、レーサーになるとき、親に散々反対されて、親父やおじいちゃんにぼこぼこにされるぐらい反対されて。まあ、そうよねぇ、喧嘩ばっかしてきて、ロクに勉強もしなくてさ。それなのに、レーサーとかふざけた夢を語るなんてね」
急に、家の前で始めた話に、面食らいつつも、巴ちゃんの狙いは何なのか聞き入ってしまう。
「一緒に頭を下げてくれたのは、晴哉よ。私に馬鹿にされたりいじめられそうになると、幹太が二倍になってやりかえりて来て、ぬくぬくと守られていた晴哉が、私の為に頭を下げてくれたの。一緒に土下座までしてくれて、ね」
「晴哉が……」
信じられない。こんな奴にまで晴哉が優しくしてたなんて。
全て、生涯も青春も初恋も初めても捧げた人。
もう二度と戻れなくても、
貴方がくれた命と、私は生きて行くって決めた。
この命を、助けてくれた幹太のおかげでそう決めた。
幹太の心に甘えたくなくて、言わない幹太が悪い。
正直に言わなくて、背中を向ける幹太が悪いと、
私は何もかもから逃げてきた。
それでも、空は朝になるし夜になるの。
夕暮の空は、幹太が照れた空の色。
朝焼けの明星が輝く紫色の空は、夜から私を奪い去って行く貴方の色。
ネクタイを緩めながら、台所に近づいてきて鍋を覗きこむのが貴方の日課で、
お皿を並べてくらながら、鼻歌を歌って嬉しそうな貴方が好きだった。
今も心を埋め尽くす。
放課後の予鈴が鳴る中、貴方はテープでツギハギだらけの学校新聞を貼り直してくれた。
廊下に伸びる、貴方と私の影は、離れたくないと寄りそっていた。
中学になって、檀祖は男子、女子は女子にと群れる中、貴方は顔を出してちゃんと私に手を振った。
学校から戻って、二人や三人で勉強するのが好きだった。
堪らなく愛しくなる。
高校になると、カップルは増えて行って、私と貴方が一緒に居るのが増えても別に中学みたいに冷やかさせることもなかったんだ。
――貴方の思い出の中にもちゃんと幹太は居るんだね。
新聞を破った巴ちゃんと立ち回りして、右手に包帯をぐるぐる巻いてきたね。
心配して、お礼とごめんねをしたら、怪我が治るまでずっと無視されてた。
今なら分かるよ、私が責任を感じないようにわざと距離を置いたのを。
店番ばっかで、一緒に勉強会に参加してくれなくなったのも。
製菓の学校になったのも、私が言った宝物を守ろうとしてくれたんだって。
見えなかったのと見なかったのでは、もう罪の重さも違うと思うんだ。
私は、貴方の事が――好き。
桔梗の花に溜まっていく朝露のように、貴方の気持ちも私の気持ちも、もう隠せない。
キラキラと輝いている。
じゃあ、晴哉の帰りを待つのを止めて、幹太の隣に歩いていけるのかな。
「おかえりなさい、桔梗ちゃん」
とぼとぼと重い足取りで家に帰ろうとして、家の門の前に巴ちゃんがいた。
「壁に擬態しないでよ……」
今は、もう誰にも会いたくなかったのに。
「私ね、レーサーになるとき、親に散々反対されて、親父やおじいちゃんにぼこぼこにされるぐらい反対されて。まあ、そうよねぇ、喧嘩ばっかしてきて、ロクに勉強もしなくてさ。それなのに、レーサーとかふざけた夢を語るなんてね」
急に、家の前で始めた話に、面食らいつつも、巴ちゃんの狙いは何なのか聞き入ってしまう。
「一緒に頭を下げてくれたのは、晴哉よ。私に馬鹿にされたりいじめられそうになると、幹太が二倍になってやりかえりて来て、ぬくぬくと守られていた晴哉が、私の為に頭を下げてくれたの。一緒に土下座までしてくれて、ね」
「晴哉が……」
信じられない。こんな奴にまで晴哉が優しくしてたなんて。
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