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 理不尽でない暮らし 5

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「……ホントに消えた」

「……そうだね」

 マーリンに連れられてやってきた王宮地下。

 淡く光る泉に件の人形を沈めたところ、みるみる七色の輝きが増し、視界を奪われたと思った瞬間、沈めたはずの人形は消えていたのだ。

「届いたなら嬉しいな。いつも見ててくれてるみたいだし…… ありがとうね」

 色々思うところもあるし、理不尽極まりないとは思うが、それでもこの世界に転生させてくれたことを少しだけ感謝する源之助。

 ……えらい世界におっぽり出されたとも思ったけどさ。まあ、食うに困らず寝床も着る物も不自由してないし。
 ……ルドラに聞かれるまで、お金のことも知らないくらい恵まれた暮らしだったんだよね、俺。

 一心に祈る少年を眺め、マーリンはえらく信心深そうな源之助に好感を抱いた。
 
 ……素直だし賢いし無欲だし。あっちはすこぶる感度も良い。ホントに良い嫁だよ、君は。その上、神に捧げ物を受け取ってもらえるとか。どれだけ寵愛されてるのさ、君。

 神への捧げ物は王家の義務だ。催しの度にどこの国も神に祈り、捧げ物をする。
 だが受け取ってもらえるのは極稀だ。大抵は泉の中から消えることはなく、御下がりとして王族で分けて持ち帰っていた。

 なのに、突然転移陣に届いた手紙。

 少年が神に捧げ物をしたいから王宮に行きたいという簡潔な文を見て、マーリンは驚く。

 なぜなら、王族が結婚した時も捧げ物をするしきたりがあるからだ。これは内々のことで公にはされていない。
 平民なはずのグエンが王家のしきたりを知るはずはないし、正式な伴侶でない彼が、やる義務でもない。
 不思議なこともあるものだと、いつもの好奇心が疼いたマーリンは、快く源之助の来訪を許した。
 そしてやってきた少年は、簡素だが可愛らしい人形を抱え、いそいそと泉に向かう。

「アレは?」

 マーリンの問いに、ルドラは少し苦虫を噛んだような顔をし、低い声で答えた。

「……グエン様が手ずから縫われた人形でございます」

 ……手ずから?

 ほほう? と、源之助を見つめるマーリン。

 そして眼の前で人形が消えたのを見て、彼は驚嘆に眼を見張る。その顔は素直な驚きに満ちていた。

 ……よっぽどだぞ? これは…… 本当に神に愛された者としか思えないな。

 当たらずしも遠からず。

 己の予感が図星とも知らずに、マーリンはせっかく来たのだからと、源之助を地下の牢獄に引きずり込んだ。

「ここは?」

「地下牢だね。まあ捉えた罪人とかを収監する場所」

 祝福の泉の所と打って違い、薄暗く不気味な檻が並ぶ場所。恐る恐るついていく少年をマーリンは奥まった一室まで案内する。

 そこは、俗に言う拷問部屋。

 据えた匂いや不気味なシミの残る石畳を見て怯える少年。ずらっと並んだ拷問器具もその恐怖に拍車をかけた。

「なんで、こんなとこに……?」

 ぷるぷるしがみつく嫁が愛しくて、マーリンは脂下がった顔で大切そうに抱き上げる。
 
「少し悪戯したくてね。これも、ある意味玩具だろ?」

 ……物騒過ぎるわぁぁっ!! いやっ、俺、いやだよっ? 痛いのは嫌いだよっ?

 無意識に頑張る源之助の身体。

 それを軽々と持ち上げて、マーリンは天井から降りる鎖の枷に少年の両手を繋いだ。
 完全に宙吊りにされた源之助の両脚にも枷をつけ、膝が高い位置に吊るされる。
 ぎ…っ、ぎ…っと微かに揺れる恐怖。それに慄き、おもわず源之助は顔を歪める。

「こ…っ、怖い…… 落ちそうだよ? ねぇ?」

 今にも泣き出しそうな少年の愛らしさに股間を直撃され、マーリンは妙な椅子を源之助の真下に置いた。
 それは背もたれ無しな丸い椅子。中央に不可思議な凹みがあり、用途が何なのか分からない。
 あからさまに怯える嫁を撫で回し、マーリンはその乳首のリングを引っ張る。ぬちぬち微妙な力加減で引かれ、源之助の顔が恐怖から羞恥に変わっていった。

「なあに? 気持ち悦くなっちゃった? ふはっ、こんなところで吊るされて感じちゃうなんて。君も好き者だよねぇ?」

 ……違っ! 触んなぁぁ、そこ、ヤバいんだってぇぇっ!

 与えられる刺激で、じわりと火の灯る敏感な肉粒。ダイレクトに股間を直撃する気持ち悦さに、少年は抗う術を持たない。
 息が上がるまでイジりまくられ、愉悦の涙が否応なしに源之助の眼を潤ませた頃。ようやくマーリンはリングから手を離し、色々な道具の並ぶ棚を漁った。
 そして彼が手にした物を見た瞬間、源之助の眼が大きく見開く。

「や……っ、やだやだ、やめて?」

 無様にも震える声。それに口角をあげて、マーリンは下に置いていた椅子に、持っていた道具を取り付けた。
 そそり勃つ剛直を模した、立派な梁型を。
 ゆらゆら揺れる少年の真下に用意された道具。それの示すことを悟り、源之助は必死に頭を振った。

「ふふ…… 可愛いなぁ。怯えてるね? 大丈夫、慣れない者には身体を割るような激痛の拷問だけど、君は慣れてるだろう? いつもと違うシチュで愉しむだけさ」

 ……いやいやいやっ! 違うシチュってっ? 拷問部屋だろ、ここっ!! どういうっ?!

 パニック状態な源之助に反論する余地も与えず、マーリンはぬらぬらにローションを塗りたくった梁型の真上で源之助の位置を調整する。
 吊られた鎖を徐々に下ろし、くちゅ…っと少年の孔に食込む梁型の先端。その冷たさが源之助の背筋を凄まじい恐怖に凍りつかせた。

「落とすよ?」

「え……っ?」

 言うが早いか、一気に緩められる鎖。それと同時に軽い浮遊感が少年を襲い、太いモノが勢い良く体内を貫いていく。

「ーーーーーーっっ!!」

 どちゅんっと椅子の上に落とされて、源之助は声もなく絶叫した。

「……どう? びっくりするでしょ? ああ、泣かないで? うわ…… すっごいエロい顔してるね?」

「あが……っ、あ……っ」

 最奥まで一直線に突き抜けた梁型。弾力はあるが柔らかい素材のようで、実際には大した負担はかかっていない。
 けれど異様なシチュエーションでされる無体が、実際の衝撃より何倍もの衝撃を源之助に与えていた。
 魔術具らしい鎖がキリキリ上がり、再び源之助を宙に持ち上げる。ずるる……っと引出される梁型が、身体の内側から少年を責め苛んだ。
 そしてまた先端だけを含んだ状態で止められ、二度落とされる源之助。

「きゃーっ!」

 ばちゅっと音がたつほど激しく落ちる少年の艶めかしさに、マーリンは興奮を止められない。

「怖い? 怖いね? すごく興奮するでしょ? 君のもガチガチになってるし…… ふわあぁぁ、なんてやらしい眺めだろうぅ……」

 無情に何度も少年を吊り上げる鎖。

「やだ、やめてぇぇーっ! もう、やあぁぁっ!」

 狂ったように頭を打ち振るって懇願する源之助の倒錯めいた姿。それに興奮が極まり、上ずってしまうマーリンの声。
 彼は何度も持ち上げては落すを繰り返し、恐怖で本泣きする愛らしい少年に眼を血走らせる。

 ふうふう荒らぐマーリンの呼吸。

「恐怖もね…… 極まると快感なんだよ? 知ってた? ……いやぁ……もう…… 堪らない顔するなぁ、君……」

 あまりの怖さに怯え竦む源之助。だが、マーリンの言う通り、背筋まで凍るほどの恐怖に見舞われながら、少年の一物はガチガチに猛り、おっ勃っていた。

「や…… も…… ひぐ……っ、ふぇぇ……ん」

「あああ、ごめん、ごめん、虐めすぎたね? うわ……っ、めちゃくちゃ悦い泣き顔ぉぉ……っ、すこぶる可愛いわっ!!」

 蕩けた笑みで源之助の顔を撫で回すマーリン。その御満悦な笑みに、ムカムカと怒りが湧く。

 ……この、変態がぁぁっ!!

 己の好奇心を満たすためなら何でもやる王子様。その無茶に付き合わされる方は、たまったものではない。

「……めちゃくちゃ怖かったぞっ? 尻も痛いし…… クッションもない椅子に落とすとか…… やり過ぎだわぁぁーっ!!」

「クッション…… そうか。そうだね。なら私がクッションになろうか」

「へあ……?」

 恐怖を通り越した怒りに任せ、怒鳴った源之助だがマーリンは気にもせず、梁型付きな椅子を別の物と変えて座る。
 背もたれつきの普通な椅子。そこに座った彼は、すでにギンギンな自分の一物を引き出して、にっこり笑った。

「私も興奮し過ぎて…… 限界だったんだよ。続きはコレでやろうね?」

 ……はああぁぁーっ?!

 思わぬ展開に惚けた少年を愛おしげに見つめ、マーリンは己のモノの上に源之助の位置を調整する。
 そして先ほどと同じ様に、何度も少年を突き落とした。

「ひぐっ! ちょ……っ! うあっ?!」

 リズミカルに、どちゅばちゅ落とされ、身悶える源之助。重力に引かれ、自重で落ちる勢いが堪らない。
 それはマーリンも同じらしく、ずるるっと引き上げられては根本から絞られ、続いて一気に呑み込まれる快感に佳がり狂っている。

「おおうっ! あっ! 悦いぃぃっ! もっとだ、もっとぉぉっ!」

 ……このガチ変態王子ーーーっ!!

 マーリンの太腿がクッション代わりになっているのが唯一の救いな源之助は、彼と自分のモノが弾けるまで、何度も何度もマーリンの上に落とされ続けた。



「いやぁぁ…… 悦い…… ねぇ? グエン? 君もすごく感じてたみたいだし? また、やろうねぇ?」

 疲労困憊で言葉も紡げない少年を抱き締め、上機嫌なマーリンが憎らしい。

 ……全力で拒否する。
 
 常に刺激を追い求めるマーリンと、それに巻き込まれて弄ばれる未来が垣間見えた気がする源之助。
 
《……恐怖も極めれば快感か。なるほど?》

 源之助を通して、捧げられた人形を撫で回しつつ、人間の底なしな欲望を学ぶ神様が居たのは御愛嬌だった。
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