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 理不尽な接待 12

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「おおお……… ホントに異国だぁ」

「面白いな、お前は。見てて飽きん」 
 
 くすくす笑うリヒャルトの視界の中では、源之助が眼を見開いて馬車の窓に張り付いていた。
 
 ……アラビアン・ナイトの世界だな、これは。うひゃあぁぁ、すげぇっ!

 レスレクシオン王国と違い、低い建物の並ぶ街並み。時折、大きな建物もあるが、それは王侯貴族や富裕層の物だという。
 レスレクシオンと同じく、お城の外周に貴族街があり、さらに周辺に商業区。そして城から離れるほど貧しくっなっていく。
 こういった街並みは、どこの王都でも似たようなものなのだそうだ。

「へえぇぇ…… リドルの宿屋があった街とは全く違うんだよね」

「ああ、夜会で王都に来たんだったな、お前は。あの街は王都に近いから比較的裕福な街だ。たまにお忍びで私も遊びにいく」

「そうなんだ? 知らなかった」

 ……そこでお前を見つけたんだがな。

 ふわりと眼を細め、つとリヒャルトは思い出した。

「そういえば…… リドルだったか? お前の元許婚」

「いや、リドルは僕の許婚の弟。まあ、一応、伴侶の一人になる予定ではあったけど」

 ああ、とリヒャルトは得心げな顔で頷く。

「次男だったか。そうだな、夜会に来ていたわけだし。そのリドルが侯爵家に嫁ぐらしいぞ? 婚儀の申請がきていた」

「いぃぃっ?!」

 ……あのリドルがっ? あれだけ嫁にはなりたくないって言っていたのにっ?!

『……粗相してもうたみたいでっせ? ほんの一垂らしでしたが、まあ、貴族らに搦め捕られましたな』

 ……久しぶりだな。まだ居たのか、お前。

『失礼でんなあっ! アテはアンタと生涯を共にしやんのやっ! 捨てたって戻りますよって!』

 ……うわぁ。

 思わず苦虫を噛み潰す源之助だが、あのリドルが大人しく嫁になる想像もつかない。
 何気に空を見上げ、少年は久しぶりに宿屋の家族を脳裏に描いた。ここで家族と呼べるのは、あの一家だけである。

 ……いきなり後宮に押し込まれて、抱き潰されて、考える暇もなかったけど。心配してくれただろうなぁ。最後の挨拶ぐらいしてくるべきだったなぁ。

 優しいレンやダンの顔が窓に浮かぶ。

 そんなセンチな気分に源之助が浸っていた頃。

 リドルは閣下にお仕置きされていた。



「んぅ……っ、んんーっ!」

「お前は……っ! いい加減にしろっ! もう許さんっ!!」

 貞操帯をつけられ、一纏めで括られた両手をベッドの柵に繋がれ、口枷、目隠しでシーツに転がされたリドル。
 
 今日の晩餐にやってきたお客を煽り、閣下の怒りを買ったのである。

 晩餐テーブルの下で足を伸ばして、向かいに座った若者のナニを指先で撫でたり、押したり。
 まだ若そうな男性は、一瞬眼を見張って、その悪戯をする足を膝に挟んだ。
 お互いに眼をすがめ、色めいた攻防を楽しむ二人。その艶めかしい空気に閣下が気づかぬはずもなく、激昂したアドルフによって、リドルは寝室に連れ込まれ、今の状況に至った。

 ……ふはっ、やりすぎたか。

 喉の奥で笑い、リドルは閣下の悋気に舌舐めずりする。
 求められるのは嬉しい。嫉妬も可愛い。こうして緊縛はしても、無体なことはしない閣下の甘さ。

 ……これを可愛いと思うあたり、俺も末期かなあ?

 カチカチと口枷を鳴らし、リドルは閣下を呼ぶ。それに気づいて、アドルフは口枷をずらしてやる。

「……なんだ?」

「キスしよ?」

「………………」

 恋とは突然落ちるもの。嫉妬心丸出しな閣下に、リドルは絆された。リドルの全てを手に入れたいと必死な彼が可愛くて仕方ない。
 にやりと弧を描く最愛の唇に辛抱堪らず、アドルフはリドルを抱きしめて口づけた。
 貪り合うように絡まる舌先。どちらともなく蕩けた息が零れ落ち、リドルはされるがまま閣下に抱かれる。

 ……くぁ、こいつ、上手いんだよなぁ…… 痛みを感じない、ギリギリなキツい愛撫とかぁ…… あっ!

 軍人なせいか、アドルフの抱き方は荒々しい。野性味に溢れた無骨な指による愛撫は、そういった性格のリドルを簡単に昂らせていく。

 身体の相性は、アドルフの腕の中にリドルを囚えて離さなかった。

 瓢箪から駒。

「……ふぁ、お、俺……さ」

「うん……?」

「アンタの……抱き方は好き……かも」

「~~~~~~っ!!」

 こうして小悪魔のごときリドルに翻弄されて溺れる閣下。伴侶の悪戯に手こずらされながら、その束縛を強めていく。

 そしてガチガチに囚われることを、心から愉しむリドルである。
 
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