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理不尽な転生 7
しおりを挟む「あふ…… すっげぇ寝たな」
『お昼近いですえ。宿屋の人がきて、寝てるの見てほっぺに、ちゅうして出てかれましたわ』
……なんか、いらん情報を聞いた気がするが。ってか、鍵かけてあったのにっ?!
『宿屋にしたらベッドメイクとか、簡単な掃除とかするんが当たり前ですやん。起きてこないから、見に来たんでしょ』
「そのついでに、ちゅうってかっ?! 何、盛ってんだよ、全くっ!」
『まあ、そういう世界ですよって。特に子供は皆で可愛がるもんとされてます。道端でキスしてれば、受け入れてオッケーなサインで、昨日みたく、寄って集って可愛がられますのや』
……理解不能だ。
『おかげで宿屋にも泊まれたし、御の字ですやろ?』
……それは、そう。
子供になってしまって狼狽えた源之助だが、結果オーライ。こういうモノなのだと受け入れる他はない。
そう考えて、お腹の空いた少年は階段を降りて食堂に向かう。
すると、昨日の青年が食堂におり、源之助を見て手を振った。無駄に爽やかな笑顔が忌々しい。
「や! よく眠れたかい?」
『あん人や。ちゅうしてはったんは』
……言わんでも分かるわい。
昨日、あれだけアプローチしてきたのだ。寝顔を見て悪戯心でも湧いたのだろう。
地味にムカつく心を落ち着け、源之助は青年に近寄ると食事が出来るか聞いた。
「お昼近いしね。銅貨三枚で食べられるよ? ……朝食は、だいぶ前に終わっちゃったけど、サービスしようか」
「キスの対価には妥当かな?」
何気ない源之助の呟きで、青年の動きが止まる。そして軽く眼を見開いて、彼は気まずそうに答えた。
「起きてたの……?」
「さあ?」
出された朝食に手をつけ、面白そうに見上げる少年。それに、参ったとばかりに両手をあげ、宿屋の青年は困ったように笑う。
「オーケイ、何かあるかい? お詫びに言うことを聞こう。それともお小遣いが良い?」
昨日も思ったが会話に支障はない。むしろ地球で慣れ親しんだ言い回しすら耳にする。
……これも神の配剤かね? 何人も送り込んでいるみたいだし。アフターケアか。
「ん~、それは、これでチャラにしてあげる」
もっもっと頬張り、源之助はリスのように膨らんだ頬を指さした。
「良いのか?」
うんうんと頷き、美味しそうに食べる少年。
意趣返しに、ちょっと困らせてやりたかっただけな源之助は、これで満足である。
しばし沈黙し、源之助を見つめていた青年は名前をリドルと名乗った。この宿屋の次男坊だそうだ。
ふうん、と聞き流していた源之助は気づいていない。
リドルの眼に浮かんだ好奇心満載な、昏い光に。
こうして、何の気なしに男を引き寄せ誑し込む源之助である。
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