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閑話 お仕置き 〜雌犬ども〜
しおりを挟む「ん? 朝か」
円香を抱き締めたまま、ぬちぬちと中で動いていた毅は、時計に設定してあるアラームの音で朝に気づいた。
意識の殆どない円香を激しく揺すり、ようやく精を吐き出して毅はぶるりと震える。
ほぼ一晩中抱き潰された円香は虫の息。
円香成分をたっぷりと搾取して、毅は満足げである。
「今日は一日寝てなさい。可愛い円香♪」
……実のところまだまだ足りないのだが、円香にも限界があるし仕方ない。
この男。限界など天元突破で抱き潰したくせに、この言い種。
御満悦な鬼畜様は、薫をどうしてやろうかと考えていた。
……あの野郎。円香の初めては、全て俺がもらうはずだったのに横取りしやがって。これからは出掛ける時に円香を繋いでおかないとな。
帰るまで..... 俺が帰るのを待ち遠しくなるように、調教しないと。はあ..... 興奮して胸が痛ぇぇぇ!
円香が泣きながら毅を待つように、あれやこれやと妄想し、その妄想だけで心臓が痛くなるほど興奮出来る毅である。
「...............」
「...............」
千鶴達の部屋にやってきた毅は、千鶴だけを寝かせて他は全員正座させた。
「薫ぅ、お前、良い大人だよなぁ? やって良いことと悪いこと、分かんねぇのか?」
「.....ごめんなさい」
「他も。なんで止めねぇんだ? 円香はまだ十四歳だぞ? 急性アルコール中毒とかになったら、どうしてくれんだっ!!」
「「「「「ごめんなさいぃぃ」」」」」
ギリギリと奥歯を噛みしめ、毅は獰猛に眼を剥き薫を凝視した。
「薫はついてこい。他はそのまま正座してろっ!!」
そう言うと毅は立ち上がり、薫の髪を掴んで引きずり七海の部屋へ向かった。
「あら、御主人様。え? 薫ちゃん?」
涙目で引きずられてきた薫を見て、七海が眼を丸くする。
薫も、全裸で太い首輪ひとつの七海に驚き、さらには部屋を埋め尽くすように置かれた、遊具の数々に驚いた。
「ここって.....?」
「七海専用の調教部屋だ。通称、家畜小屋。お前はそのまま寝てろ七海」
昨日のプレイのダメージが酷く残っていたため、七海はベッドに寝かせられていた。
つまり、今、家畜用の寝床が空いている。
「今日からここがお前の住み家だ。雌豚」
「え? 豚?」
怯える薫から服を剥ぎ取り、毅は家畜用の太い首輪を嵌めた。
そして七海同様、たっぷりと薬をお尻に呑ませて栓をすると、小さな檻に詰め込む。
檻の上から頭と手首を出した状態で、薫は酷い腹痛に呻いた。
「良い格好だな。己のモノほどを知れよ? フィストまで、きっちり仕込んでやるからな」
ぎらりと薫を睨み付け、毅は七海に食事を与えると、トイレの鍵を開ける。
今回の働きで、七海は普通の食事に戻され、トイレと浴室の使用を許された。
「新しい豚が来たからな。お前は犬に戻してやるよ」
「ありがとうございます、御主人様っ!」
満面の笑みで答える七海に頷き、毅は薫の檻をガシャンっと蹴り飛ばした。
「ムカつく..........っ! 大人しく《待て》してろよっ!」
ばんっと扉を閉めて消えた毅を、訳が分からないまま、見送る薫だった。
毅は千鶴の部屋に戻り、残った雌犬達を睨み付ける。事のしだいを聞いた千鶴が小さく毅に声をかけた。
「申し訳ありませんでした。うっかり私が眠ってしまったために..........」
「お前のせいじゃない。あのバカがやらかした事だ。あ..... そうだ、ちょっと待ってろ」
何かを思い出したかのように、毅は自分の部屋に取って返し、あるモノを片手に戻ると千鶴のベッドに座る。
それは黒い革の首輪。丁寧に鞣され、内側にボアの張られた上等な物だった。
「御褒美だ。円香と御揃いの首輪。よく仕えてくれてるからな」
柔らかな笑みで千鶴に首輪をはめ、毅は小さなカウベルを弾く。
千鶴は胸が一杯で言葉も出なかった。円香は毅の唯一だ。別格の雌犬で、毅に愛される嫁だ。
その彼女と御揃いの首輪。
円香の首輪は赤色だった。情熱の色だ。
千鶴の首輪は黒色。服従の尽くす色だ。
しかし、円香の物と同質というだけで、その特別感が半端ない。
「ありがとうございます」
茫然と首輪を触る千鶴を満足げに眺め、毅はあらためて、バカをやらかした犬どもを見据える。
五匹を左側に連結した新犬らの部屋に連れてきた毅は、あらためて正座させた。
そして一人ずつ諸手上縛りで上半身を拘束し、更には五匹を背中合わせで円陣に座らせ、肘に縄を通して身体を動けなくさせる。
硬い木の床に丸く並んだ五匹の雌犬達。
「反省しろや。円香に手を出したことを」
雌犬達は上半身をガチガチに拘束され、しかも頭の上かで五人繋げられているため、正座を崩すことも横に倒れることも出来ない。
がっちり固められた状態である。
「反省してますっ! ごめんなさいぃぃっ」
「勘弁してくださいっ!! もうしませんーーーっ!」
各々泣き言を抜かす雌犬達。
どんっと床を踏み鳴らし、毅は冴えた極寒の眼差しで犬どもを見下ろした。
「反省してるから勘弁しろだぁ? 全く反省の色がねぇだろっ、それっ!! 許して欲しいから反省した振りしてんのが丸分かりだわっ、ボケっ!! 本当に反省してるんなら、黙って座ってろっっ!!」
稲妻のような恫喝を叩きつけ、毅は部屋を出ていった。
「くっくっくっ、そりゃあまた..........っ♪」
「笑いごっちゃねぇっ!」
毅は最上階でブギーマンを呼び出した。
ぷんすかとむくれる毅を微笑ましそうに見つめ、ブギーマンは紅茶を口にする。
「ゲームの勝敗が決定するまで、あと二回。搾れるだけ搾ってくれよ? 毅君♪」
「応よ、任せろ」
にっと薄く笑む少年。
ブギーマンに取引を持ち掛けてから、毅はわざと色香を撒き散らすようになった。
自分の本能がおもむくままに、ただ自然体であれとブギーマンに言われ、今まで理性でセーブしていたモノを解き放ったのだ。
通常の毅であれば、鞭を舐めたり、リクエストの受付をしたりなどしない。
プレイの本番中であれど、渾身で打ったりもしない。
無意識に手心を加えていたそれらを解き放ち、観客を魅了しろとブギーマンに言われ、良く分からないまま、やりたいようにした。
淫蕩に耽け、思うがまま犯し、暴き、根こそぎ覆す。
思い出してもゾクゾクする愉悦の波に圧され、毅は心からプレイを愉しんだ。
「あんなんで御布施が増えるんだから、世の中分からないもんだよなー」
物憂げに肘をつき掌に顎を乗せる少年。
その完成されてない幼気なさが、体格の割りに細い印象を彼に与えていた。
……唇に触れる細い指。あれを掴んで咥えてやったら、毅はどんな顔をするだろう? 指の間までねぶり尽くし、掌を舐めてやったら?
驚愕か、哀願か、苦虫か。
彼がどのように眉をひそめるのか試してみたくなる。おそらく観客らと同じ興奮をブギーマンも抱いていた。
如何に毅をリクエストでプレイの生け贄に巻き込むか。
そのためだけに跳ね上がる御布施の金額を、少年は理解していない。
……薫ちゃんの時は凄かったものね。《攻め受け》とか、お題にした奴を撫で回してやりたいよ♪
毅を組み敷き、呑み込み暴きたい好事家は星の数だ。男性だけではない。女性とて同じ。こういった性癖の者は禁忌や忌避など無いのである。
目の色を変えて少年の奥を暴き犯そうとする女性らが、彼を襲うだろう。
可愛い、あるいは綺麗な少年を穢したいと思う女性も少なくはない。無垢であればなおよろしい。羞恥と恐怖に泣き叫ばせたいと夢見る女性は、存外多いのだ。
薫のように玩具を使って、散々辱しめようとするに違いない。
そういう生き物なのだ。ここに集うケダモノ達は。
……ホント、因果だねぇ? 毅君?
毅に、そんな好事家らを煽るよう仕向け、自分自身も愉しんでいるブギーマン。
ゲームもあと二回。
毅に決断の時が迫っていた。
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