上 下
6 / 47

 お題 玩具イキ

しおりを挟む

『リクエスト』

 拘束椅子から円香を抱き上げ、そっと立たせていた毅の耳に見知らぬ声が聞こえた。

《おっと、今回のレース初のリクエストだーっ!! お題に沿ったモノならOKですっ!! さて、何が出るかっ?!》

 興奮気味なブギーマンの絶叫。

『少年の玩具イキに三本』

 音声を変えているのだろう。割れたような低い声がルームに響きわたる。

《これまた豪気だぁーっ! 玩具プレイに三百万来ましたぁーっ!》

 三百万っ?!

 ぎょっと毅が眼を見張った。八割持っていかれるとしても六十万。とんでもない大金だった。

《さて、どうする? 毅氏、受けますか?》

 リクエスト。毅の知らない未知のプレイだ。どうなるのか分からない。しかし.....

 毅は腕の中の円香を見つめる。

 コイツの分だけでも稼がないと。最悪、俺は売られても円香だけは助けたい。

 そのためには少しでも稼いでおかないと。

「受けるっ!」

『良い判断だ』

 変声された声が、うっそりと嗤ったような気がした。



『そう、それを使って扱くんだ。ゆっくりね』

 毅はX型の張りつけ板に拘束され、円香にオナホで責められていた。
 たっぷりのローションを含んだソレを動かし、円香は心配そうに毅を見上げる。

「大丈夫? 気持ち悦い?」

 じれったい動きを指示された円香は、言われた通りにことさらゆっくりと玩具を動かしていた。

 まどろこしい刺激に毅の顔が歪む。

 かれこれ十分以上悶絶する毅。滑る汗が火照った身体を冷やし、落ち着いた頃を狙って、また責められる。

「く.....っ、大丈夫.....、気持ち悦いよ、円香」

 両手両足を枷に繋がれ、毅はゾワゾワと毒のように沁み込む愉悦に溺れた。
 決して極まらせない、円香の動きを絶妙にコントロールする誰かの声。
 オナホに呑み込まれた毅の一物は、ガチガチなまま先走りを滴らせている。

『ああ..... 悦い顔だね。苦しいだろう? イキたいかね?』

 興奮気味に上ずった声。変声してあっても誤魔化せないほど、それはねぶり尽くすように卑猥ないやらしさを醸していた。

「.....ふっ、くぅ.....っ、んっ」

 ぬちぬち微かに動く玩具。堪えきれぬ呻きと汗が毅の顔に浮かんでいる。
 小刻みに痙攣する彼の両脚は、もはや立っているのがやっとな有り様だ。
 はらはら見守る円香は、毅がどうなっているのか分からないのだろう。
 ずくんっと腹の奥に溜まるだけの欲情。熱く蕩けた熱が、果てる事なく延々と毅を苦しめていく。

 相手の思惑は丸分かりだ。毅に懇願させたいのだろう。イカせてくれと。御願いしますと泣き叫ばせたいのだ。

 しかし、それはお題にもリクエストにも入ってはいない。

『強情だね。君、そこの棚からローターを出して。そう、その小さな丸い奴』

 声が用意させたのは遠隔式のピンクローターとガムテープ。
 円香に毅の前をはだけさせ、声の主はローターを胸の頂にガムテープで張りつけさせた。

「.....ぅ? ひっ?!」

 長い悶絶に虚ろだった毅が気づいた時は、もう遅く、ローターは十字に貼られたガムテープによって、ガッチリと張りつけられている。

『さて。もう一度聞こうか。イキたいかい? 素直になれば、オナホで気持ち悦くイカせてあげるよ?』

 何をされるのか覚った毅だが、ここまで来て後には引けない。
 周囲を回るドローンで毅の嬌態は丸見えなのだろう。
 毅はゼィゼィと熱い吐息を漏らしながら、挑発的に眉を跳ね上げた。
 含みきれぬ唾液が顎を伝うその姿は酷く扇情的で、涙に潤んだ眼差しも、観客の嗜虐心を派手に煽る。

『.....良い度胸だ。君、オナホを外しなさい。ゆっくりとだよ』

 言われて円香が毅のモノを呑み込んでいる玩具を外す。
 ぬちゅっと音をたてて解放された一物は、毅の腹につくほど熱く滾っていた。

「はっ、.....んっんん」

 苦しげに喘ぐ毅。

 その喘ぎが絶叫に変わる。

「………っ、ぅぁあああーーーっ!!」

 遠隔で操られるローターが、激しく毅を責めたてた。
 自分で触れたこともない頂を刺激され、今までの責め苦も手伝い、電流のような凄まじい快感が毅の全身を駆け巡る。

「ひぃぃっ! あっ、ああぁっ!!」

 ガチャガチャと枷を鳴らして暴れる毅。
 振り乱す頭から飛び散る汗の飛沫が円香にかかり、彼女はハッと顔をあげた。

「毅っ? ねぇっ、大丈夫?!」

「大.....丈夫ぅっっ、ひ.....っぁっ!」

 凄まじく感じはするが、達するには足りないもどかしさ。
 今にもイキそうな直前をキープして絶妙に振動を緩める声の主。

『悦い声だ。堪らないね、ほら、もっと啼いて?』

「ふあっ?! ぁっ、.....くぅぅぅっっ!!」

 ギンギンな猛りが、さらなる刺激を求めるが、それは与えられない。
 喉を仰け反らせて絶叫する毅の耳に、ブギーマンの声が聞こえた。

《タイムアーップッッ!! リクエストタイム三十分が終わりましたっ! 速やかに終了を願いますっ♪》

『良いところだったのに。また遊ぼうね』

 ふっと振動が消え、毅はがっくりと頽れた。

「毅ぃぃぃーっ!!」

 だらりと下がる毅を枷から外し、円香は必死に抱き締める。

「ごめんねっ、アタシの代わりに.....っ、ゴメン、毅っ!」

 ひゅーひゅーと息も絶え絶えなまま、毅は力無く笑う。

「いや.....、俺の.....自業自.....得。頼む..... 円香」

「なにっ? 何したら良いのっ?」

「抜いてくれ..... 動け…ない……」

 毅は小刻みに四肢を痙攣させている。ダラダラと滴る汗に加え、顎が笑って唾液を呑み込むことも出来ないようだった。
 その股間でガチガチに硬く滾る一物を見て、円香は躊躇いもせず即咥えた。
 半瞬もおかずに爆発する毅の一物に吸い付き、その一物が萎えるまで、円香は泣きながら毅を慰めた。

 丁寧な愛撫で精を吐き出し、三回ほど果てたあと、ようやく毅の身体から緊張が抜けていく。

 全身を弛緩させて、ぐったりと横たわる毅を膝枕し、流れるような汗で張り付いた髪を円香の指が優しく整えてくれた。

「助かった..... 死ぬかと思ったよ」

「毅ぃぃ.....っ、死んじゃ、やだぁぁぁ」

「いや言葉のあや。死なない、死なない」

 ルームが暗転し、ショーが終わる。

 ようよう解放された安堵で、毅は酷い睡魔に襲われた。

 あの野郎..... 半端ねーわ。

 声だけの指示で毅を地獄に突き落とした観客。そういった嗜好の玄人なのだろう。

『.....また遊ぼうね』

 ふざけんなっ、二度と御免だっ!!

 脳内で毒づく毅だが、この後もリクエストにつく多額の御布施に目が眩み、幾度となく観客にもて遊ばれる毅である。





「君、無茶しますねぇ。まさかリクエストを受けるとは」

「あんた、何でここにいんの?」

 じっとりと眼を据わらせる毅の前にはブギーマン。

 いつもの燕尾服を着た彼は、紅茶を片手にソファーで座っていた。

「わたくし主催者なので、どこの部屋もフリーパスです♪」

 ああ、そうかい。

 仏頂面で見下ろす毅に苦笑し、ブギーマンはソーサーをテーブルに置くと真面目な顔で毅を見た。仮面ごしだが。

「正直に申しましょう。貴方、彼女を守りすぎ」

「は?」

「他の奴隷の男性達は、とうに女性を犬扱いしてますよ。昨日のお題も凄いモノでした。虐げる事に目覚めてくれたようです」

 そういや自分達に夢中で他は見ていなかったな。

「かなりの観客の意識が君に向き過ぎててね。ぶっちゃけ、投げ銭が片寄りすぎてんですよね、今」

 ん? 今、変な事言われなかったか?

 首をかしげる毅に溜め息をつき、ブギーマンは改めて説明をする。

 円香がプレイに疎く、逆に毅はプレイを知っている感じに気づいた観客らは、円香を利用して毅を。毅を利用して円香を嬲るようになるだろうと。
 こういったプレイには際限がない。玩具イキひとつでも、昨日、毅は死ぬ目に合った。

「まだ初花だから、こんな緩さで済んでますけどね。花を散らして開通させたら、そこも使われますよ?」

 最初のお題で蹴られたフィストファックだって有り得ない事ではないのだ。

 毅は背筋を震わせる。

「君らが勝ち進むには彼女を雌犬にしないと。君が壊されたら、誰が彼女を守るんです?」

 円香は今風呂にいる。

 その隙をついて、毅にだけ話すためブギーマンはやってきたのだろう。

「観客の意識を彼女に集めなさい。君が肩代わりしてたら、立派な雌犬になれないでしょーが」

「円香は犬じゃないっ!」

「ここでは雌犬ですよ」

 怒りも顕な毅に、再び溜め息をつくブギーマン。

「とにかく。君が壊されたら困るんで、次からはなるべく彼女にやらせなさいね。リクエストも君系のは蹴るように」

 それでは。と、帽子をかぶり、彼は出ていった。

 円香を犬にだと? 冗談じゃないっ!!

 憤慨する毅だが、後日この認識を改めさせられる事になる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ただ、愛しただけ…

きりか
恋愛
愛していただけ…。あの方のお傍に居たい…あの方の視界に入れたら…。三度の生を生きても、あの方のお傍に居られなかった。 そして、四度目の生では、やっと…。 なろう様でも公開しております。

下剋上の戦い

星月
ファンタジー
初めての彼女、が出来喜んでいた主人公。は彼女の家に行き、彼女の借金25億円の保証人にさせられる。そして父に頼み返済し家から追い出されてしまう。

【完結】幼馴染が妹と番えますように

SKYTRICK
BL
校内で人気の美形幼馴染年上アルファ×自分に自信のない無表情オメガ ※一言でも感想嬉しいです!! オメガ性の夕生は子供の頃から幼馴染の丈に恋をしている。丈はのんびりした性格だが心には芯があり、いつだって優しかった。 だが丈は誰もが認める美貌の持ち主で、アルファだ。いつだって皆の中心にいる。俯いてばかりの夕生とはまるで違う。丈に似ているのは妹の愛海だ。彼女は夕生と同じオメガ性だが明るい性格で、容姿も一際綺麗な女の子だ。 それでも夕生は長年丈に片想いをしていた。 しかしある日、夕生は知ってしまう。丈には『好きな子』がいて、それが妹の愛海であることを。 ☆竹田のSSをXのベッターに上げてます ☆こちらは同人誌にします。詳細はXにて。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

完結 お飾り正妃も都合よい側妃もお断りします!

音爽(ネソウ)
恋愛
正妃サハンナと側妃アルメス、互いに支え合い国の為に働く……なんて言うのは幻想だ。 頭の緩い正妃は遊び惚け、側妃にばかりしわ寄せがくる。 都合良く働くだけの側妃は疑問をもちはじめた、だがやがて心労が重なり不慮の事故で儚くなった。 「ああどうして私は幸せになれなかったのだろう」 断末魔に涙した彼女は……

お尻が好き!

A一筋
恋愛
幼い頃の性体験が後の人生に影響する。

拝啓、可愛い妹へ。お兄ちゃんはそれなりに元気です。

鳴き砂
BL
大国、モルダバイト帝国に属する北の地で新たな生命が誕生した。それはコハクの妹である。しかし、妹は「呪われた子」の証を宿して誕生した。妹を殺そうとする両親から逃れるために、コハクは妹を連れて家出を決心するも、コハクは父親によって妹とともに海へと投げ捨てられた。 「それにしても僕の妹は可愛いなあ〜!一生をかけて、お兄ちゃんが守ってあげるからね!」 コハクは、行く先々で妹を守るためにあれやこれやと処世術を学んでいくうちに、いつの間にか無自覚無敵なお兄ちゃんへとなっていた!しかし、その有能さは妹だけではなく六賢帝の一人と謳われるセレスタイン・モルダバイトをも巻き込む波乱への始まりとなり・・・・?! 冷酷無慈悲な賢帝(攻め)×妹至上主義な天然お兄ちゃん(受け)のすれ違いだらけの恋物語 前半、攻めはあまり登場しません。

【完結】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる

大森 樹
恋愛
大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。 「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」 死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。 国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!? 「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」 エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって…… 常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。 ※どんな形であれハッピーエンドになります。

処理中です...