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ここは聖獣の棲家 6 ☆
しおりを挟む「答えて、トム。 気持ち良かったのか? 俺のは怖くなかった? なあ?」
力強い指で揉むようにうなじを掴まれ、トムは狼狽える。どう答えたら良いのか分からない。
「ひゃ……っ、カ、カイル? もう……」
「それとも、やっぱり怖かったか? よかったってのはウソ?」
「違……っ、……よかったよ。……僕も、その……」
真っ赤な顔を俯けて、トムが唇を噛みしめる。だが、黙りこむことをカイルが許さない。
「その? なに? ……言って?」
彼の吐息がトムの耳元に触れた。至近距離にある熱く蕩けたソレに羞恥心を煽られ、トムは夢中で説明する。
「その……っ! 嫌じゃなかった……よ? 怖くも……ない……し?」
「……し?」
くすくす笑うようなカイルの声。それに耳朶から鼓膜まで舐められるかのような錯覚に陥り、トムはパニック状態だった。
「とにかくっ! アレは暴力じゃないっ! カイルのこと好きだものっ! されても怖くないし、嫌じゃない……いいぃぃっ?!」
突然、カイルがぎゅっと抱き締める。息が止まるほど締め付けられ、トムはさらに顔を赤くした。
「すっげぇ嬉しい…… どうしよう、俺。トムに触りたくて堪らないんだけど。触っても良いか?」
……そんなん、聞かないでよぅぅっ!!
眼を白黒させて藻掻くトム。
そんなトムを抱きしめたまま、カイルは顔中にキスの雨を降らせていた。そして、つ……っとトムの唇に舌を這わせ、その歯列を割る。
ぬるりと入ってきた熱い舌先に、トムの身体が大きく震えた。
「俺を見て? トム」
怯える恋人に気づき、カイルは口づけながらその身体を撫でさする。
「俺を見て…… 変なことは思い出さないで。今、トムを抱きしめて可愛がっているのは俺だよ? 怖い?」
これは卑怯なやり口だ。カイルはそう思う。
怖くても怖いと口に出来ないトム。そこに付け込んで、同意を求める卑劣な手口。
だがそこでトムは、カイルが思いもしない反応を返した。
自ら舌を絡めて口づけに応えたのだ。
震える小さな舌がいじらしい。
「……怖くないってば。……むしろ」
そう呟いて、再びトムは顔を俯ける。
「むしろ?」
ここで初めてカイルは気がついた。トムの震えが恐怖や怯えでないことに。
聞き返しておきながら、カイルこそ震えが止まらない。あまりの興奮で。
そしてそれは、トムも同じだったのだ。
「……嬉しい? うん…… カイルにされると、心臓が破裂しそうで…… すごく興奮しちゃう……」
しきりに眼を泳がせて、テレテレ宣う恋人の甘えた囁やき。こんな真っ赤な顔で赤裸々な告白をされたら、男はたまったものではない。
…… ーーーーっ! なんだ、この可愛い生き物はぁぁーーーっ!! 待てっ、俺えぇぇっ!! 落ち着けぇぇっ!!
脳内でだけ盛大にのたうち回り、カイルは努めて冷静な顔を維持する。それでも情欲の溶けた声は酷く甘い。腕の中のトムも、その艶めかしいカイルの声に脳内だけで身悶えた。
「そっか…… じゃ……続けて良い?」
……だから、聞かないでってばぁぁーっ!!
まるで、お仕置きされている気分なトム。わざと恥ずかしいことばかりを言われ、言わされている気がする。
そして無意識なカイルも、もっと恥ずかしがるトムを見たくて、さらに意地悪なことをした。
「眼を開けて? そう…… 閉じないで? トムにキスして興奮してる俺を見てよ? ね?」
わざとトムの顔を覗き込みながら羞恥心を煽り、自分がされていることをカイルは直視しさせる。
はぁはぁ……とお互いに息を荒らげて口づけ、今にも零れそうなほど涙に烟る恋人の顔が艶めかしい。
……えっろ。俺の恋人、可愛いが過ぎるだろうが。嬉しいの? 俺に、やらしいことされて嬉しい? そうだよな? 俺だから…… 俺にされてるから…… すごく興奮しちゃうんだよな? くうぅぅ~~~~っ! 辛抱堪らんぞ、これぇぇっ!!
心の中でだけ舌舐めずりし、カイルは浮かされたような恍惚とした顔でトムに囁やく。
「……上書き。……する? してあげようか?」
そっと視線を逸らしつつ、トムは小さく頷いた。眼の前のカイルがやけに色っぽくて、あの忘れられない酷い記憶もどこかに飛んでいく。
……する? しちゃうの? カイルと?
あれだけ凄絶な凌辱に見舞われたトムだ。もはや、そういったことに恐怖や忌避感はない。彼の中に残されたモノは、慎み深い羞恥心とカイルに抱く恋心。
「俺ら初心者だし? ゆっくり行こうや。まずはキスから」
……なし崩し的だったけど、ようやくトムとキス出来たな。どれだけ待ったことか。……やべぇ、おっ勃ってきた。
……そうだよね。少しずつ。やだ、何か身体が熱い。
テレテレと赤らんだ顔を隠そうとするトムを優しく押し倒し、カイルは貪るとこなく穏やかに口づける。何度も角度を変えては深くなる口づけに、トムは息も継げない。
「ずっと、こうしたかった。トム…… 俺のトム……」
「ん……ぅ、ふあ……っ、待って……、んんっ」
お互いに舌を絡め、唇を食み、奪うでなく求める口づけに二人は溺れた。
「……気持ち悦い。トム。トム。トム……」
「……熱い。とけそう。カイルも、気持ち悦い? ふあっ!」
聞くまでもないことをと、カイルはズボンの下でガチガチな剛直をトムの股間に押し付ける。ぐりぐりと押し付けたそこでは、トムのモノも勃ちあがっており、己の興奮をトムに知らしめたつもりのカイルは、逆にトムの興奮を知らされ驚いた。
「……勃ってる? トム?」
「…………言わない……で…ぇぇ」
手の甲で顔をおおい、か細く啼く最愛。開いた脚の間にカイルの身体が伸し掛かっているため、隠そうにも隠せず、もじもじと力なくカイルの腰を膝で挟む脚。
重なるお互いの股間で、布壊しに熱く脈打つ二人の一物に、カイルは激しい目眩を感じた。
これに猛らぬ男がおりょうか。
「~~~~~~~っ!! ゆっくりは、やめだっ!! 出せっ、トムっ!!」
「きゃーっ! 待って、待って、カイルぅぅっ!!」
結局、暴走したお猿によって、キスからのはずだった二人は、お互い手淫するまでに至る。
「最っ高……っ」
「言わないでってばぁ…… あっ!」
吐き出した余韻をこれでもかと刺激し、カイルはトムを虐める。お互いの精でにゅるにゅるなソレを撫で回され、ひいひいと涙目で喘ぐトム。
……っはぁ。眼福だなぁ。いや、至福か? トムのモノに触れられるなんて。……舐めたい。
「これ舐めても良い?」
「ひぇ…っ? え? やだっ! だめっ! 汚いよっ!」
出したばかりな温かい白濁液。それが絡みつく恋人の幼い御立派様を凝視し、カイルは縋るようにトムを見た。
「汚くなんかないよ。トムは俺のを見て、汚いと思うか?」
……それは。
ごくっと固唾を呑み、トムもカイルの御立派様を見つめる。
自分のと違って、大きな一物。口を一杯に開ければ何とか入りそうかなと思案した瞬間、トムの頭がボンッと爆発した。
……僕、今、何を考えて? く、口に? え?
無意識下の意識。
気づいて良さげな気持ちに、人はなかなか気付けない。トムだって、カイルのモノを汚いなどと思わないし、むしろ、舐めて? と言われれば躊躇なく舐めるだろう。それが答えだ。
えええーーーっ?! と混乱する恋人に噴き出したカイルは、答えをもらったとばかりに破顔する。
そして、容赦なくむしゃぶりついたお猿に散々舐め回され、トムが泣かされるのも御愛嬌。
長々とイチャイチャし、悲惨な記憶を恋心で上書き出来たトムは、少しずつ元気になった。
未だに、大きな男性を見ると思わず震えが走るものの、カイルのことは平気のようである。
赤裸々な痴態をさらしたのだから、当たり前だが。
そして、前より過保護に拍車がかかったカイルや、前よりもカイルべったりになったトムを見て、周りは深読みした。
カイルとトムが一線を越えたのだろうと。まだ早い気はするが、そろそろ婚約も秒読みな二人だ。トムが合意ならかまうまいと。
実際にはまだいたしてなくも、糖度爆上がりなカイルとトムを見れば、そう誤解するも致し方なし。
そして、カイルが父親と喧嘩して家をおん出たと聞いたロイドも、トムの頼みでカイルを我が家に置いてくれるという。
「ありがとうございます。俺、一生懸命働いて、金入れますから」
「カイルの分だけで良いよ? 僕だって働けるし、スキルもあるし」
あからさまではないが親密度の上がった二人に眼を細め、婿入りよろしくやってきたカイルを、ロイドはトムの伴侶に認めた。
雨降って地固まる。
不穏な空気を孕みつつ、トムの異世界生活は続いてゆく。
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