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#20 ニューズ男爵
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週末、私はベラがニューズ男爵と出会えることだけを祈り馬車に乗り込んだのだが、ベラと色んな話をしているのが楽しくて、純粋に旅を楽しんでいた。
レストランに着き、中へ入る。
ライム様と入ったレストランとは趣が違っていて、親しみのあるような、地元の方に愛されているような、そういった雰囲気のあるレストランだった。
店内は静かで落ち着きのある感じではなく、賑やかだった。
すでにお客さんが大勢入っていた。
「わぁ……とっても賑やかだわ……!」
「そうでしょ~。みんなすごく楽しそうよね」
私たちは席に着いた。
一人、ガタイのいい逞しい男性が目に留まった。
(わぁ……とっても逞しい筋肉をされていらっしゃるわ……!)
私が目を大きく見開いていたからか、ベラが面白そうに笑った。
「ポピーどうしたの? 何か面白いものでも見つけた?」
「そういうわけではないんだけど……あちらの男性を見て。筋肉がすごいの……!」
私が小声でそう言うと、ベラはその男性を見た後、同じく小声で話した。
「うふふ。ポピー、あのお方がニューズ男爵よ」
「えぇっ!?」
(あのがっちりしたお方が……!?)
「意外? もっと小柄な男性でも想像してたの?」
「あ ううん……!」
(そういえば、小説でも体が大きいと描写されていた気がするわ……。それにしても、こんなにもマッチョなお方だったとは……!)
驚くと同時に、私は勝利を確信していた。
(これで確実にベラはニューズ男爵と恋に落ちるわ! 酔っぱらったお客様に絡まれたところを、ニューズ男爵が助けて下さるんだったわよね。……酔っぱらったお客様……それはちょっと……嫌ね……)
私たちは運ばれてきた料理の数々に舌鼓を打ちながら、昼食を満喫した。
酔った客はいつ現れるのかとドキドキしていたが、一向に現れる気配がなかった。
(あら……? もうすぐ食べ終わってしまうのだけど……)
そうこうしている間に二人とも完食してしまった。
(どうしましょう……まだ帰るわけにはいかないわ……!)
ベラがお手洗いに行こうとした際、何かにつまずいてこけそうになった。
(危ないっ!!)
私がそう思ったのと同時に、前に倒れそうになったベラの体を一人の男性の手がキャッチした。
その男性はニューズ男爵だった。
「!!!」
私が驚いたのは、キャッチしたお方がニューズ男爵だったからだけではない。
ニューズ男爵の手が、ベラの胸に見事にフィットしたのだ。
逞しい手はベラの胸を包み込むかのようにしっかりと支えている。
ニューズ男爵はベラの体勢を整えると、あわててベラの体から手を放した。
「申し訳ない!」
渋い声が響き渡る。
「……ぃっ……ぃぇっ…………」
ベラも突然のハプニングに動揺しているようで、真っ赤な顔で困惑の表情をしている。
私も私でなんて声をかけたらいいかわからず、ただ見守ることしかできない。
「責任を取らせてほしい」
ニューズ男爵がベラを真剣な顔で見つめ、そう言った。
「……?」
ベラは不思議そうな顔でニューズ男爵を見ている。
「お嬢さんに触れた時、全身がビビッと来たんだ。お嬢さん、私と結婚してくれないか?」
(結婚!? いきなり!?)
私よりもベラの方が驚いているに違いない。
口が少し開いている。
「名乗り遅れて申し訳ない。私はニューズ・カレーヌソンだ。よろしく」
「……ごきげんよう、ニューズ男爵。私はベラと申します……」
「ベラ嬢だね。素敵な名だ。あなたもご存じかもしれないが、私の土地の広さは尋常じゃない。私と結婚したら、おそらくベラ嬢がまだ味わったことのない美味しい料理を山ほど堪能できる。どうだい? ここの味がお気に召したなら、悪い話でもないだろう」
「えっ…………」
戸惑いの色を見せるベラのことはお構いなしに、ニューズ男爵はどんどん攻めていく。
「ベラ嬢もビビッときたんじゃないか? ほら、私の手を握ってみたまえ」
ベラが恐る恐る手を伸ばし、ニューズ男爵の逞しい手に触れる。
「…………わ……わからないですわ……」
目を泳がせているベラ。
「はっはっはっはっ!! その正直なところもますます気に入ったよ。最高じゃないか」
ニューズ男爵はベラの手の甲にキスすると、
「ベラ嬢、近いうちに挨拶に伺うから覚悟してくれたまえ」
そう言って店を後にした。
レストランに着き、中へ入る。
ライム様と入ったレストランとは趣が違っていて、親しみのあるような、地元の方に愛されているような、そういった雰囲気のあるレストランだった。
店内は静かで落ち着きのある感じではなく、賑やかだった。
すでにお客さんが大勢入っていた。
「わぁ……とっても賑やかだわ……!」
「そうでしょ~。みんなすごく楽しそうよね」
私たちは席に着いた。
一人、ガタイのいい逞しい男性が目に留まった。
(わぁ……とっても逞しい筋肉をされていらっしゃるわ……!)
私が目を大きく見開いていたからか、ベラが面白そうに笑った。
「ポピーどうしたの? 何か面白いものでも見つけた?」
「そういうわけではないんだけど……あちらの男性を見て。筋肉がすごいの……!」
私が小声でそう言うと、ベラはその男性を見た後、同じく小声で話した。
「うふふ。ポピー、あのお方がニューズ男爵よ」
「えぇっ!?」
(あのがっちりしたお方が……!?)
「意外? もっと小柄な男性でも想像してたの?」
「あ ううん……!」
(そういえば、小説でも体が大きいと描写されていた気がするわ……。それにしても、こんなにもマッチョなお方だったとは……!)
驚くと同時に、私は勝利を確信していた。
(これで確実にベラはニューズ男爵と恋に落ちるわ! 酔っぱらったお客様に絡まれたところを、ニューズ男爵が助けて下さるんだったわよね。……酔っぱらったお客様……それはちょっと……嫌ね……)
私たちは運ばれてきた料理の数々に舌鼓を打ちながら、昼食を満喫した。
酔った客はいつ現れるのかとドキドキしていたが、一向に現れる気配がなかった。
(あら……? もうすぐ食べ終わってしまうのだけど……)
そうこうしている間に二人とも完食してしまった。
(どうしましょう……まだ帰るわけにはいかないわ……!)
ベラがお手洗いに行こうとした際、何かにつまずいてこけそうになった。
(危ないっ!!)
私がそう思ったのと同時に、前に倒れそうになったベラの体を一人の男性の手がキャッチした。
その男性はニューズ男爵だった。
「!!!」
私が驚いたのは、キャッチしたお方がニューズ男爵だったからだけではない。
ニューズ男爵の手が、ベラの胸に見事にフィットしたのだ。
逞しい手はベラの胸を包み込むかのようにしっかりと支えている。
ニューズ男爵はベラの体勢を整えると、あわててベラの体から手を放した。
「申し訳ない!」
渋い声が響き渡る。
「……ぃっ……ぃぇっ…………」
ベラも突然のハプニングに動揺しているようで、真っ赤な顔で困惑の表情をしている。
私も私でなんて声をかけたらいいかわからず、ただ見守ることしかできない。
「責任を取らせてほしい」
ニューズ男爵がベラを真剣な顔で見つめ、そう言った。
「……?」
ベラは不思議そうな顔でニューズ男爵を見ている。
「お嬢さんに触れた時、全身がビビッと来たんだ。お嬢さん、私と結婚してくれないか?」
(結婚!? いきなり!?)
私よりもベラの方が驚いているに違いない。
口が少し開いている。
「名乗り遅れて申し訳ない。私はニューズ・カレーヌソンだ。よろしく」
「……ごきげんよう、ニューズ男爵。私はベラと申します……」
「ベラ嬢だね。素敵な名だ。あなたもご存じかもしれないが、私の土地の広さは尋常じゃない。私と結婚したら、おそらくベラ嬢がまだ味わったことのない美味しい料理を山ほど堪能できる。どうだい? ここの味がお気に召したなら、悪い話でもないだろう」
「えっ…………」
戸惑いの色を見せるベラのことはお構いなしに、ニューズ男爵はどんどん攻めていく。
「ベラ嬢もビビッときたんじゃないか? ほら、私の手を握ってみたまえ」
ベラが恐る恐る手を伸ばし、ニューズ男爵の逞しい手に触れる。
「…………わ……わからないですわ……」
目を泳がせているベラ。
「はっはっはっはっ!! その正直なところもますます気に入ったよ。最高じゃないか」
ニューズ男爵はベラの手の甲にキスすると、
「ベラ嬢、近いうちに挨拶に伺うから覚悟してくれたまえ」
そう言って店を後にした。
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