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告白
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ソファーに座ってテレビを見ていると、紗絢がコップを二つ持って隣に座った。
「お茶いれたから、よかったら飲んでね」
「うん、ありがとう」
たくさん歩いて喉が乾いていたので、入っているお茶を一気に飲み干す。そして、コップをテーブルに置き、ソファーに深く座り、背もたれに寄りかかった。
紗絢とは、すぐに触れ合えるくらいの距離感。
彼女もコップをテーブルに置くと、俺と同じような態勢をとった。
二人の腕と腕が触れ合う。
紗絢の方へ顔を向けると、彼女は俺の目を見て、クスッと笑った。
「なに? 緊張してるの?」
「そりゃ、するだろ。女の人の家に来るのなんて初めてだし」
今は何も起きないと分かっていても、紗絢の顔を見ているだけで胸が高鳴る。
一人で住むには少し広すぎる家。俺との関係がなくなってからは、別の男と一緒にいたりもしたのだろう。想像するだけでモヤモヤした気持ちになるが、自分から関係を切ったんだから仕方ない。
俺は顔の向きを戻し、俯いた。
あの頃から何一つ成長していない自分にもどかしさを感じる。
手を膝の上で組み、力を入れる。
すると紗絢が、そこに手を重ねてきた。
「私も男の人を家にあげるの初めてだよ」
俺の心情を察したかのような一言に動揺が隠せない。
俺は再び紗絢に顔を向け、目を見張りながら話しかけた。
「え、それって……」
「私はまだかずくんが好きだから」
突然の告白を聞き、頭の中が真っ白になる。言葉を上手く紡ぎ出せず、声が出ない。
きっと酔った勢いで言っただけだ。俺なんかを好きでい続ける理由なんてあるわけがない。
そう自分に言い聞かせ、笑って誤魔化そうとする。
すると紗絢は体を寄せ、俺の胸に飛び込んできた。
「色々な人と出会ってきたけれど、かずくん以上に魅力的な人はいなかった。ずっと、ずっと、かずくんのことだけが頭に浮かんで離れないの。だからこうして巡り合えて本当によかった」
紗絢は潤んだ声で心境を語った。
俺の胸に顔を埋めているので表情は確認出来ないが、服が涙で滲んでいるのを感じる。
「なんで俺なんかのことを?」
「好きなんだもん。声も顔も体も心も全部。大好きになっちゃったんだもん」
「でも今の俺には何もないよ。何も持ってない」
「それでもいいよ。かずくんが夢を追いかけ続けたいって言うのなら応援するし、叶わなくても支えたい。だからさ、住む所が見つかるまでじゃなくて、ずっと一緒にいてよ」
その言葉を聞き、嘘で取り繕っていた自分が情けなくなる。
紗絢はここまで真剣に想ってくれているのに、俺は偽りだらけだ。
嫌われてもいい、ここで本当のことを話しておこう。
「ごめん。プロゲーマーになりたいって夢は嘘なんだ。誰かのヒモになるためにイメチェンをして、夢追い人を演じていただけなんだ」
こんなダメ人間と紗絢は釣り合わない。そう思った俺は、彼女の肩を掴み押放そうとする。
しかし紗絢は、俺の腰に手を回し離れようとしない。
「それでもいい。側にいてくれるだけで十分だよ」
「本当にいいの? 俺なんかで」
「うん。かずくんじゃなきゃだめなんだよ」
紗絢の震え混じりの声を聞き、俺は抵抗するのを止めた。
これ以上、紗絢の想いを傷つけたくなかったし、彼女の好意に応えたいと強く思ったからだ。
俺は紗絢を強く抱きしめ返し「俺も紗絢が好き」だと告げた。
すると彼女は、赤く腫らした目でこちらを見つめ、にこやかに微笑んだ後、俺の唇にキスをした。
「お茶いれたから、よかったら飲んでね」
「うん、ありがとう」
たくさん歩いて喉が乾いていたので、入っているお茶を一気に飲み干す。そして、コップをテーブルに置き、ソファーに深く座り、背もたれに寄りかかった。
紗絢とは、すぐに触れ合えるくらいの距離感。
彼女もコップをテーブルに置くと、俺と同じような態勢をとった。
二人の腕と腕が触れ合う。
紗絢の方へ顔を向けると、彼女は俺の目を見て、クスッと笑った。
「なに? 緊張してるの?」
「そりゃ、するだろ。女の人の家に来るのなんて初めてだし」
今は何も起きないと分かっていても、紗絢の顔を見ているだけで胸が高鳴る。
一人で住むには少し広すぎる家。俺との関係がなくなってからは、別の男と一緒にいたりもしたのだろう。想像するだけでモヤモヤした気持ちになるが、自分から関係を切ったんだから仕方ない。
俺は顔の向きを戻し、俯いた。
あの頃から何一つ成長していない自分にもどかしさを感じる。
手を膝の上で組み、力を入れる。
すると紗絢が、そこに手を重ねてきた。
「私も男の人を家にあげるの初めてだよ」
俺の心情を察したかのような一言に動揺が隠せない。
俺は再び紗絢に顔を向け、目を見張りながら話しかけた。
「え、それって……」
「私はまだかずくんが好きだから」
突然の告白を聞き、頭の中が真っ白になる。言葉を上手く紡ぎ出せず、声が出ない。
きっと酔った勢いで言っただけだ。俺なんかを好きでい続ける理由なんてあるわけがない。
そう自分に言い聞かせ、笑って誤魔化そうとする。
すると紗絢は体を寄せ、俺の胸に飛び込んできた。
「色々な人と出会ってきたけれど、かずくん以上に魅力的な人はいなかった。ずっと、ずっと、かずくんのことだけが頭に浮かんで離れないの。だからこうして巡り合えて本当によかった」
紗絢は潤んだ声で心境を語った。
俺の胸に顔を埋めているので表情は確認出来ないが、服が涙で滲んでいるのを感じる。
「なんで俺なんかのことを?」
「好きなんだもん。声も顔も体も心も全部。大好きになっちゃったんだもん」
「でも今の俺には何もないよ。何も持ってない」
「それでもいいよ。かずくんが夢を追いかけ続けたいって言うのなら応援するし、叶わなくても支えたい。だからさ、住む所が見つかるまでじゃなくて、ずっと一緒にいてよ」
その言葉を聞き、嘘で取り繕っていた自分が情けなくなる。
紗絢はここまで真剣に想ってくれているのに、俺は偽りだらけだ。
嫌われてもいい、ここで本当のことを話しておこう。
「ごめん。プロゲーマーになりたいって夢は嘘なんだ。誰かのヒモになるためにイメチェンをして、夢追い人を演じていただけなんだ」
こんなダメ人間と紗絢は釣り合わない。そう思った俺は、彼女の肩を掴み押放そうとする。
しかし紗絢は、俺の腰に手を回し離れようとしない。
「それでもいい。側にいてくれるだけで十分だよ」
「本当にいいの? 俺なんかで」
「うん。かずくんじゃなきゃだめなんだよ」
紗絢の震え混じりの声を聞き、俺は抵抗するのを止めた。
これ以上、紗絢の想いを傷つけたくなかったし、彼女の好意に応えたいと強く思ったからだ。
俺は紗絢を強く抱きしめ返し「俺も紗絢が好き」だと告げた。
すると彼女は、赤く腫らした目でこちらを見つめ、にこやかに微笑んだ後、俺の唇にキスをした。
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