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*本編*
*白猫と黒猫の話。“??”
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此処は何ともいえない空間。見る者によっては黒ともいえるし白ともいえる。どちらでもないと思えば灰色ともいえるしそう見える色が広がった空間だ。いや、そもそも色なんて存在しないのかもしれない。色なんて存在しなくて透明しかない空間なのか、透明なんて色は存在するのか、この場合は無色ともいえるが、無色とは白色又は無彩色の意味も含まれる。
そんな何ともいえない色が広がった空間は、高さや広さもわからない。透明という色といっていいのかわからない色が何処までも続く、壁や床といった物が存在しないのか、何処を見渡してもそんな物が見えてこない。あれこれと考えた結果、“何ともいえない”としか説明できないこの空間は、空間というよりは“世界”だ。これからは此処のことを“透明世界”と呼ぼう。
透明世界に何人の住人が居るのかはわからないが、此処に現れる者は音もなく現れるだろう。透明世界に透明以外の色が存在していたのは、今其処でこの世界を見ている“アナタ”は驚くだろうが、ここでやっと、現れるということは透明以外の色が存在しているというまともな説明ができる。
透明世界に何秒前に現れたのかはわからないが、音もなく現れたのは美しい汚れ無き白猫。白猫はいつから其処に居たのかはわからない毛並みがボサッとした汚れた黒猫に、音もなく床も存在しない空中をふよりと浮かんで移動しながら近寄る。
黒猫はふわんと空中を浮かびながら寝っ転がった姿勢で寛いでいる。何かをする事もなく、日々空中を浮かびながら寝っ転がって退屈な時間を過ごしている。透明世界に時間というものが存在しているのかさえ怪しいが、物も無ければ時間も存在していないのだとしたら、やる事は何もない。
白猫は黒猫の真後ろに座った姿勢になる。こうして二匹が並ぶと光と闇、片方は黒とは真逆の白……体も汚れてはいない。もう片方は白とは真逆の黒……体も汚れている。同じ猫でも正反対の様子を見ると、片方の体が汚れていても絵になりそうだと錯覚してしまうかもしれない。
「ねぇ**」
「なんだ§§」
白猫は黒猫に声をかける。透明世界に名前が存在しないのか、白猫の呼んだ黒猫の名前がハムノイズに聞こえ、黒猫の呼んだ白猫の名前がヒスノイズに聞こえてしまう。いや、名前を呼ぶということはこの世界に名前自体は存在しているのかもしれないが、何故か二匹の名前はノイズに聞こえてしまうのだ。
白猫は黒猫が返事するのを待った後に話し始める。
「君の作った世界、弄っていいかな。」
「またか……まぁ、世界だけ作っといて放置してるし、好きにすればいいさ。」
「未だに君の世界の星達、名前ないよね。私の世界では火星とか地球とかあるのに。」
「お前さんが考えればいいだろう……面倒くさい。」
どうやら、この二匹はそれぞれ世界を作り持っているらしい。だが黒猫の方は面倒くさがりなのか、白猫の作った世界より作り込まれていないらしく、星はいくつかあっても名前まではないらしい。黒猫は暇潰しに作ってみたはいいものの、空中に寝っ転がった姿勢のまま欠伸なんてして、この通り興味がない。
「ダメだよ、自分で作った世界なんだから自分で考えなきゃ」
「のわりには、そちらの世界の道具やら文化やらをこちらの世界の星に持ち込んでるみたいだけど?」
散々他人……この場合は他猫か、他猫の作った世界に自分の世界の物をあれこれと混入して弄りまくり、最早自分の世界も同然なのに白猫は自分の物にはせずにいる。
例えるならノート、ノートに物語を書いていたら横から弟か妹が入ってきて、好き勝手に自分で考えたのか物語や設定を書き始めたらそれはもう弟か妹のノートも同然だ。でも弟か妹はそのノートを要らないと言う。黒猫が自分の作った世界にも関わらず真面目に世界を作り上げていこうとしないのは当然だ。
まぁ、仮に白猫が黒猫の世界を弄らなかったとしても、黒猫に最初から何となく作った世界をまともに作り上げようとする気持ちがあったかどうかはわからないが、これも例えるなら、ノートに何となく思いついた物語を書いてはみたけれど、途中で飽きてしまったのか放置してたら弟か妹が勝手に書き始めてしまったのかもしれない。……どちらかというとこちらの可能性の方が高いかもしれない。
白猫はその場で自分もごろんと寝っ転がる姿勢になり、黒猫を後ろから抱き付きながら少し高い音でゴロゴロと喉を鳴らす。猫が少し高い音で喉を鳴らす時は、ご飯や何かを要求する時に出すらしい。許可は下りるだろうが、一応可愛らしく強請っているみたいだ。それに対し黒猫は気にもせずに目を閉じる。
「こっちの世界でさ、産まれてこれなかった魂が沢山できてるからそちらに送らせようかなってね。後、そっちの世界の種族をほんの少しだけこっちの世界に送っていい? なんだっけ、上半身が人型で下半身が魚のやつとか、血吸うやつとか魔法使うやつとか、頭にお皿みたいなのが乗ってるやつとか。あ、君の世界物とかも無さすぎだからこっちの世界にある文化の物も少し送るね。」
白猫はこんな風に、白猫の世界の者と黒猫の世界の者を少し行き来させて文化を混入する。白猫の世界と黒猫の世界という言い方では長いので、これからは“シロ”と“クロ”とでも呼ぼう。クロの星の一部は特に、シロの星にあるいろんな国の文化が入り混じっている国もあり、最早闇鍋状態ともいえる。
「そういえば、あれから何年経った?」
白猫は「あ、」と声を発した後に、シロからクロへ“産まれてこれなかった魂”を送るように設定してから、クロではどれくらい経ったのだろうかとふと思い黒猫にそう聞く。透明世界には朝も昼も夜もこない……時間が存在しているかも怪しいので、この二匹には時間の感覚がわからない。
二匹からしたらたったの一時間と思っていた感覚も、シロとクロでは百年──または千年経っている時もある。それだけ時が経てば世界も大分変る。少し様子を見てくるのもアリかもしれないと思った白猫は、黒猫に「散歩に行ってくるね。」とだけ告げると人型に姿を変えて、さっさとその場から音もなく消えてしまった。
そんな何ともいえない色が広がった空間は、高さや広さもわからない。透明という色といっていいのかわからない色が何処までも続く、壁や床といった物が存在しないのか、何処を見渡してもそんな物が見えてこない。あれこれと考えた結果、“何ともいえない”としか説明できないこの空間は、空間というよりは“世界”だ。これからは此処のことを“透明世界”と呼ぼう。
透明世界に何人の住人が居るのかはわからないが、此処に現れる者は音もなく現れるだろう。透明世界に透明以外の色が存在していたのは、今其処でこの世界を見ている“アナタ”は驚くだろうが、ここでやっと、現れるということは透明以外の色が存在しているというまともな説明ができる。
透明世界に何秒前に現れたのかはわからないが、音もなく現れたのは美しい汚れ無き白猫。白猫はいつから其処に居たのかはわからない毛並みがボサッとした汚れた黒猫に、音もなく床も存在しない空中をふよりと浮かんで移動しながら近寄る。
黒猫はふわんと空中を浮かびながら寝っ転がった姿勢で寛いでいる。何かをする事もなく、日々空中を浮かびながら寝っ転がって退屈な時間を過ごしている。透明世界に時間というものが存在しているのかさえ怪しいが、物も無ければ時間も存在していないのだとしたら、やる事は何もない。
白猫は黒猫の真後ろに座った姿勢になる。こうして二匹が並ぶと光と闇、片方は黒とは真逆の白……体も汚れてはいない。もう片方は白とは真逆の黒……体も汚れている。同じ猫でも正反対の様子を見ると、片方の体が汚れていても絵になりそうだと錯覚してしまうかもしれない。
「ねぇ**」
「なんだ§§」
白猫は黒猫に声をかける。透明世界に名前が存在しないのか、白猫の呼んだ黒猫の名前がハムノイズに聞こえ、黒猫の呼んだ白猫の名前がヒスノイズに聞こえてしまう。いや、名前を呼ぶということはこの世界に名前自体は存在しているのかもしれないが、何故か二匹の名前はノイズに聞こえてしまうのだ。
白猫は黒猫が返事するのを待った後に話し始める。
「君の作った世界、弄っていいかな。」
「またか……まぁ、世界だけ作っといて放置してるし、好きにすればいいさ。」
「未だに君の世界の星達、名前ないよね。私の世界では火星とか地球とかあるのに。」
「お前さんが考えればいいだろう……面倒くさい。」
どうやら、この二匹はそれぞれ世界を作り持っているらしい。だが黒猫の方は面倒くさがりなのか、白猫の作った世界より作り込まれていないらしく、星はいくつかあっても名前まではないらしい。黒猫は暇潰しに作ってみたはいいものの、空中に寝っ転がった姿勢のまま欠伸なんてして、この通り興味がない。
「ダメだよ、自分で作った世界なんだから自分で考えなきゃ」
「のわりには、そちらの世界の道具やら文化やらをこちらの世界の星に持ち込んでるみたいだけど?」
散々他人……この場合は他猫か、他猫の作った世界に自分の世界の物をあれこれと混入して弄りまくり、最早自分の世界も同然なのに白猫は自分の物にはせずにいる。
例えるならノート、ノートに物語を書いていたら横から弟か妹が入ってきて、好き勝手に自分で考えたのか物語や設定を書き始めたらそれはもう弟か妹のノートも同然だ。でも弟か妹はそのノートを要らないと言う。黒猫が自分の作った世界にも関わらず真面目に世界を作り上げていこうとしないのは当然だ。
まぁ、仮に白猫が黒猫の世界を弄らなかったとしても、黒猫に最初から何となく作った世界をまともに作り上げようとする気持ちがあったかどうかはわからないが、これも例えるなら、ノートに何となく思いついた物語を書いてはみたけれど、途中で飽きてしまったのか放置してたら弟か妹が勝手に書き始めてしまったのかもしれない。……どちらかというとこちらの可能性の方が高いかもしれない。
白猫はその場で自分もごろんと寝っ転がる姿勢になり、黒猫を後ろから抱き付きながら少し高い音でゴロゴロと喉を鳴らす。猫が少し高い音で喉を鳴らす時は、ご飯や何かを要求する時に出すらしい。許可は下りるだろうが、一応可愛らしく強請っているみたいだ。それに対し黒猫は気にもせずに目を閉じる。
「こっちの世界でさ、産まれてこれなかった魂が沢山できてるからそちらに送らせようかなってね。後、そっちの世界の種族をほんの少しだけこっちの世界に送っていい? なんだっけ、上半身が人型で下半身が魚のやつとか、血吸うやつとか魔法使うやつとか、頭にお皿みたいなのが乗ってるやつとか。あ、君の世界物とかも無さすぎだからこっちの世界にある文化の物も少し送るね。」
白猫はこんな風に、白猫の世界の者と黒猫の世界の者を少し行き来させて文化を混入する。白猫の世界と黒猫の世界という言い方では長いので、これからは“シロ”と“クロ”とでも呼ぼう。クロの星の一部は特に、シロの星にあるいろんな国の文化が入り混じっている国もあり、最早闇鍋状態ともいえる。
「そういえば、あれから何年経った?」
白猫は「あ、」と声を発した後に、シロからクロへ“産まれてこれなかった魂”を送るように設定してから、クロではどれくらい経ったのだろうかとふと思い黒猫にそう聞く。透明世界には朝も昼も夜もこない……時間が存在しているかも怪しいので、この二匹には時間の感覚がわからない。
二匹からしたらたったの一時間と思っていた感覚も、シロとクロでは百年──または千年経っている時もある。それだけ時が経てば世界も大分変る。少し様子を見てくるのもアリかもしれないと思った白猫は、黒猫に「散歩に行ってくるね。」とだけ告げると人型に姿を変えて、さっさとその場から音もなく消えてしまった。
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