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第3話

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 と、冒険者の男性はぼくの手に拾った銅貨を返すと、ぼくの頭に厚くゴツゴツした手のひらを置いて、乱暴になでました。


「この銅貨には、1枚1枚、苦労してためた跡がうかがえる。これで盗んだだと? 金貨でもねぇ、銀貨ですらねぇ、わざわざ銅貨で300枚も盗んだだと?」

「え……えーと、その通りです! 冒険者さんの言う通り金貨じゃなくて、銅貨を盗んだんですよぉ! 1枚1枚苦労して盗んだに違いありません!」

「は?」

「いや~、もう、危うく騙されるところでしたねー、良かった、良かった~」


「こいつは……」


 今にも爆発しそう、といった雰囲気で男性冒険者が立ち上がります。

 ところが、そんな冒険者の肩に、背後からポンッと手が置かれました。



「ちょっといいかの?」



「誰だ! ……って、あねさんか……」



 ぼくが見たこともない、緑に金の刺繍が入った鮮やかな身なりをしたエルフの冒険者です。

 まるで物語の登場人物のようで、宝石のような亜麻色の髪が、窓から差しこむ陽光を反射して、黄金に輝いて見えます。

 エルフにしては線が太く、落ち着いた雰囲気を持つ、森の大樹のような印象を受ける大人の女性でした。

 ひょっとしたら、見た目よりかなり年齢が上なのかもしれません。


「あとは、わしに任せておけ」


 男性冒険者に向けて、魅力的な笑みと共に片目をつぶりました。

 彼はしぶしぶ頷くと、もう一度ぼくの頭をなでてから後ろに下がりました。


「おーい、ちょっとこっちに来てもらえるかの」


 振り返ると、エルフ女性は仲間と思しき女性神官を手招きしました。

 歩いてきた神官はエルフ女性の話に頷くと、小声で呪文を唱え始めます。


「ディテクト・ファクト……」


 穏やかな水面のような口調と同時に、ぼくの体がぼうっと青く光り、続けて受付嬢の体が赤く光りました。


「ふむ……。受付のお嬢さん、この子供は嘘をついとらんようじゃが?」

「はい? どーしてそんなことわかるんですかー?」

「お主、ギルドの受付嬢のくせに真偽を看破する魔法も知らんのか?」

「はい? 真偽を看破? なんですかそれー?」

「神官のみが使える、嘘をついているかいないかを鑑定する魔法じゃよ」


 そんなものがあるんだ。


「簡単に説明すると、青く光った者が真実を語り、赤く光った者が嘘を述べている。つまり、今散らばっている銅貨は盗んだものではなく、全てこの子が真面目にコツコツためたものということじゃな」


 受付嬢はポカンとした表情をしています。


「金貨3枚。銅貨に換算すれば300枚。スラムの子供が誰にも奪われずに集めきったのは、奇跡のようなものじゃのう。よく頑張った!」


 エルフ女性が、先程の冒険者のようにぼくの頭をなで回しました。
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