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出会い

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あれは確か、2年前の3月頃だったと思う。

春先の澄んだ空気を心地よく思う頃、
俺はその日、高校最後の行事、卒業式が終わり、周りから、

「また会う日まで!」         
               
や 
   
「第2ボタン下さい!」

などの声が飛び交う中、「良い思い出」の思い当たる節が全く無く、涙ひとつも出ないまま、学校を後にした。それから少し歩いていると、自然に、直感的に帰路から少し外れ、散歩がてら歩いていると、この町では珍しい、春の象徴、桜が見えた。
近年花見はしていない。だから、久しぶりに思い出にでも浸ろうと、  

誰も寄り付かない河川敷沿いの桜並木の下を潜っていた。
ふと桜から視線を逸らし、前方を見ると、今自分が来た方向とは反対の方向から女性が歩いて来ていた。
ロングの髪に赤いチェック柄のストールを羽織り、丸い眼鏡をしていた。
外見はかなり真面目そうな人だった。
彼女はとても魅力的な優しそうなオーラを感じさせる人で、そのオーラに充てられ、俺は気付かぬ内にその人の事を目で追っていた。

あぁ、本当に……
 
「綺麗な人だな…………あっ…」
 

自分でも思いがけぬ言葉に動揺を隠せ無かった。
 
彼女は足を止め、周りを何度も見渡し、
 
「……え?わ、私?」
 
「そ、そうっ…です…」
 
そう言う俺の言葉を聞き、なぜかクスクスと笑う彼女はそれはもう小柄という事もあり、ハムスターの様に可愛らしくて、なぜだか、だんだんと顔が熱を持ち始めた。

俺は彼女に「一目惚れ」してしまっていた。
 
「れ、連絡先…教えて欲しい……です」
 
自分でも、自分が自分じゃないみたいな感覚だった。なんせ、無口であまり表情を変えない自分が、赤面しながら
「連絡先教えてください」
なんて今じゃ笑い話だ。
 
必死に頭を下げる俺を見たからか、彼女はまた、笑った。
 
「いやいや(笑)そんな頭下げないで?下げなくても言ってくれれば全然渡すよ笑」
 
「本当ですか?ありがとうございます!!」
 
あまりにも自分が大声で言ったもんだから、彼女はびっくりした様子で
 
「君、さては運動部だなぁ?」
 
「え、あ、ち、違います…」
 
「あ、違ったか(笑)まぁいいや、君、名前は?」
 
「ひ、秘密……いや!藍色の藍ですっ!」
 
「あーお姉さん今聞いちゃった!今「秘密」って言ったでしょー、
 て こ と は さては偽名だなぁ?まぁいいけどね、私は、あい、哀愁の「哀」だよ」
 
「女の勘は鋭い」とはまさにこの事なのだろう。
それにしても、哀愁の哀なんて…とても素敵な名前だと思う、けれども、彼女には似合わない気が…
 
「あ、今、「似合わない」とか思ったでしょー、お姉さんには分かるんだからねー?」
 
「えっ!いやいやそんな事思ってないです!、、ただ、「名は体を表す」って言葉は適用されない時があるのだなと」
 
「もうそれ「似合ってない」って言ってるようなもんじゃんw」
 
彼女は想像とは違い、とても明るい女性だった。
 
「あ、そうだったそうだった、藍君、歳は?」

「えぇっと、じゅ、18…来年19」
 
「18!?私より下!?えー!年上だと思ってたぁ!あ、良い意味でね?」
 
「え、俺そんな歳上に見えますかね笑」
 
「すっごく大人びてるよ!私はねぇ今年20歳!よろしく!
あ、あとタメ口で良いよ!」
 
「う、うん!」
 
「あ、また忘れてた、最近忘れっぽくて(笑)はい、これ私のQR!」
 
スマホを差し出す彼女に合わせ、慌ててスマホを取り出し、そのQRを読み込み、友達機能に追加した。

「あ!ありがとうございます!!!」
 
「いえいえ♪それじゃ!私これから用事があるから!」
 
「あ、時間取らせてしまってごめんなさい」
 
「いいのいいの!ばぁい」
 
そうして、俺が来た方向から足を進め、ちょっと離れた所から。
 
「あ!いつでも連絡してきてね!!」
 
と大きな声をあげ、手を振ってくれた。
自分も手を振り返し、彼女が見えなくなったと同時に彼女が来た方向に歩いた。
やはり桜は綺麗で、見とれてしまう、
その桜の花びら1枚1枚、光に照らされ

「あー、やっばい、惚れてるわ…コレ……」
 
緊張がほぐれたと同時に力が全て抜け、へたり込んでしまった。
 
「んー、今の時間は……?」

近くの時計を探すとたまたま河川敷挟んだ反対側の公園の時計が見えた。
我ながら視力には自信がある。
 
「んー?五時…二十…六分…?……あ、門限六時…ここから行っても30分……こんな事してる場合じゃあない!」
 
そのまま全力疾走で桜並木の下を駆け抜けていった。
 
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