悪役令嬢は腐女子である

神泉灯

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63・始まる

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 次の日、俺は学校に登校した。
 セルニアの誕生日パーティーは本当に楽しかった。
 最後は権造さんに追いかけ回されることになったが、しかし俺とセルニアの仲は明らかに進展している。
 このまま 超絶美少女と正式に恋人関係になるのも、そう 遠くはないだろう。
 朝倉海翔が、
「なんだか楽しそうだね。昨日は休んでたけど、どこかに遊びに行ってたの?」
「ちょっとな」
「まあ、予想は付くけどね。吉祥院さんの誕生日だったし」
「待て、おまえな。なんで セルニアの誕生日を知っているのかは突っ込まないが、そのことについては……」
「分かってるよ。秘密にしておいてあげるから」
「頼むぞ」
 まあ、海翔は意外と口が堅いから話さないと思うが。


「ふー」
 俺は昨日の疲れの残りを少し感じながら椅子に座る。
 ……あれ?
 今日は なにかあったような?
 突然、俺はなにかを忘れていることに気付いた。
 でも、なにを忘れたのか思い出せない。
 なんだった?
 今日は なにか大切な日だったはずなんだけど。
 でも 思い出せない。
 ああ、もどかしい。
 あと もう少しで思い出せるのに、出てこない。
 なんとか思い出そうと、俺の オー・ノウ な脳をフル回転させていると、セルニアが挨拶してきた。
「ごきげんよう」
「おはよう、セルニア」
「昨日は楽しかったですわ」
「俺もだ」
「今日から また勉学に励みましょう」
「そうだな」
 俺は なにかを忘れていると思いながらも、セルニアと受け答えをしていた。
 しかし、その忘れているなにかを、セルニアが思いさせてくれた。
「そうそう、今日は転入生が来られるそうですわ」
「転入生?」
「はい。職員室の前で上永先生が話しているのを 偶然 聞いてしまって」
「へー、どんな奴かな?」
 ……ん?
「転入生?」
「はい、そうですわ。どうされました? 同じ事を繰り返して」
 俺は嫌な汗がぶわっと吹き出した。
 そうだった。
 転入生だ。


 今日はヒロインが松陽高校に転入してくる日だ。


 なんで こんな大切なことを忘れてたんだ。
 この世界は乙女ゲームの世界だ。
 そしてセルニアは悪役令嬢。


 今日はセルニアの破滅が始まる最初の日なんだ。


「だ、大丈夫ですか? 顔が青いですわよ」
 聞いてくるセルニアに、俺は努力して平静を装う。
「なんでもない。大丈夫だ」
 そこに上永先生が教室に入ってきた。
「みんなぁ、席についてぇーん」
 みんなが席に着くと、上永先生は転入生が入ってくるときの お決まりの言葉を言った。
「今日は転入生が来ることになったからぁ。新しい仲間よぉん。仲良くしてあげてねぇん」
 そして廊下に向かって言う。
「じゃあ、入ってきてぇん」


 そして、教室に入ってきたのは……


「沖縄出身。空手三段。特技はピアノとチェス。好きな言葉は、元気一番、先手必勝。
 球竜 宮です。みんな よろしくね」


 褐色美少女の球竜 宮だった。
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