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55・パツキンねーちゃん
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俺は吉祥院家専用ヘリコプターに乗って二時間後。
気付けば常夏の島。
「お兄さまー」
湖瑠璃ちゃんが、買い物デートの時に購入した水着で出迎えてくれた。
「お姉さまはすでに到着して水着に着替えています。玲さんと上永先生も、別の機体で到着しました」
島の中央に豪華ホテルが見える。
「あのホテルで誕生パーティーをするの? お父さんのことだから、貸し切りとかしそうだな」
「まさか。貸し切りなんてしません」
「そうだよねー。いくらなんでも そこまでするわけないよねー」
「今日の誕生パーティーのために新しく建てたんです。あのホテルはお父さまが所有しているホテルです」
……
「……造ったの? 元からあるホテルじゃなくて、セルニアの誕生パーティーのために、わざわざホテルを建てたの?」
「はい、そうなんですよ。この島を丸ごと買い取って、ホテルまで建てたんです。お父さまの親バカにも呆れます」
親バカってレベルじゃねーよ。
「まあ、地元民には雇用の一環になって感謝されているようなのですが」
良かった。
親バカをこじらせて、地元民を追い出すとかまでしなくてホントーに良かった。
「お兄さま、更衣室へどうぞ。お兄さまの水着は用意してありますから」
俺はトランクスタイプのオーソドックスな水着に着替えて海へ。
「私はパーティーの準備へ向かいますので、お姉さんと上永先生と一緒に遊んでいてください。お姉さまも すぐに来ますから」
ホテルにはパーティーに呼ばれた人たちが続々と集まっていて、挨拶とかがあるらしい。
今も、ホテルのヘリポートに、また一機ヘリコプターが着陸した。
そして俺は海辺へ行くと、そこには玲と上永先生がいた。
「弟くんではありませんかー。お姉ちゃんとビーチバレーしましょー」
「あぁーん、だめよぉーん。姉とじゃなくてぇ、美貌の女教師とやりましょぉん。ボールが弾むたびに たわわな お胸が弾むのよぉん」
この二人の脳内は季節問わず、万年常夏だ。
「セルニアは?」
「吉祥院さんはー、着替えに行ったばかりですー。まだしばらく時間がかかると思いますよー」
「そぉねぇーん。女は男と違ってぇ、時間がかかるからぁーん」
俺は、
「そうか。じゃあ、俺はその辺りを散歩してくる」
この二人に関わるとおかしな事になりそうだし。
「えー、ビーチバレーしてくれないのー」
「あぁーん、その辺りの浜辺でたぎる若さを吐き出しちゃうのかしらぁーん」
とか言っているけど無視した。
そして、しばらく俺は浜辺をぶらついていた。
遠くには南国の海に良くある原住民の家とかが見え、現地の人たちの姿も見える。
でも 着ている服は、民族服とかではなく、普通の服。
まあ、今の時代、こういう所にもネットとかが繋がってたりするんだから、不自然ではないんだけど、ロマンがない。
ふと、雑木林のところで美人のパツキンねーちゃんが、なにやら捜し物をしているようだった。
よく日に焼けた肌の、でも髪はウェーブがかかったブロンド。
年齢は三十歳中頃のように見える。
体は上永先生以上のボンッキュンッボンッ。
そのパツキンねーちゃんは、少し困った表情で捜し物をしているようで、あっちへ行ったり こっちへ行ったり としていた。
困っているようなので、俺は英語で話しかけてみる。
「ワット・ドゥー・ユー・ドゥー?」
ダメだ。
やっぱり発音がカタカナだ。
これじゃ通じねぇよ。
パツキンねーちゃんは怪訝な表情で、
「Can you speak English?」
英語をしゃべれるのか? と聞いてきた。
どうやら俺が英語を話そうとしていることだけは伝わったらしい。
「アイ・キャンノット・スピーク・イングリッシュ」
俺の英語は問題があることを伝えた。
「Where are you from?」
どこからきたのか? だって。
「ジャパン」
パツキンねーちゃんは親しげな笑顔になった。
「あら、あんた日本人なの。下手な英語だと思ったら」
流暢な日本語だ。
「日本語 話せるんですか?」
「あたりまえじゃない」
語学堪能なパツキンねーちゃんなんだな。
「それで、カタカナの英語で話しかけてきて、どうしたんだい?」
「いえ、なんか困っているようなので。っていうか、なにかを探しているようだったので」
「それで、助けようと思ってカタカナ英語で話しかけたのかい? 君、良い子だね」
と頭をなでなでされた。
シクシク、子供扱いされてる。
「実はね、魚釣りに使う釣り竿が見つからなくてね。うっかりどこにおいたか分からなくなっちまってね。この辺だったってのは憶えてるんだけど」
「魚釣りって、この島特有の魚とかですか?」
「ハッピーフィッシュっていう魚なんだけどね。それを釣るには特別仕様の釣り竿が必要なのさ」
「ああ、それなら一緒に探しますよ」
そして十五分後。
マグロ釣りにでも使いそうなメチャクチャデカい釣り竿を俺は見つけた。
「あの、これですか?」
「ああ、それそれ。よく見つけてくれたね。ありがとうよ」
こんな釣り竿で釣る魚って、ハッピーフィッシュってどんな魚なんだ?
パツキンねーちゃんは俺に、
「なにかお礼をしないといけないね」
「いえ、良いっすよ」
「でも、なんにもしないってのもねぇ」
そのとき、ポケットの携帯電話がなった。
通知を見ると、玲からだ。
「セルニアさんのー、着替えが終わりましたよー」
「ああ、わかった」
俺が電話を切ると、パツキンねーちゃんは にやりと笑い、
「なーに? 女の子を待たせてたの? なーんだ。そんなことなら早く言いなさいよ。ほら、早く行ってあげて。女を待たせちゃダメよ」
ノリの良いねーちゃんだ。
「それじゃ、行ってきます」
こうして、地元民とちょっとした交流をしたのだった。
気付けば常夏の島。
「お兄さまー」
湖瑠璃ちゃんが、買い物デートの時に購入した水着で出迎えてくれた。
「お姉さまはすでに到着して水着に着替えています。玲さんと上永先生も、別の機体で到着しました」
島の中央に豪華ホテルが見える。
「あのホテルで誕生パーティーをするの? お父さんのことだから、貸し切りとかしそうだな」
「まさか。貸し切りなんてしません」
「そうだよねー。いくらなんでも そこまでするわけないよねー」
「今日の誕生パーティーのために新しく建てたんです。あのホテルはお父さまが所有しているホテルです」
……
「……造ったの? 元からあるホテルじゃなくて、セルニアの誕生パーティーのために、わざわざホテルを建てたの?」
「はい、そうなんですよ。この島を丸ごと買い取って、ホテルまで建てたんです。お父さまの親バカにも呆れます」
親バカってレベルじゃねーよ。
「まあ、地元民には雇用の一環になって感謝されているようなのですが」
良かった。
親バカをこじらせて、地元民を追い出すとかまでしなくてホントーに良かった。
「お兄さま、更衣室へどうぞ。お兄さまの水着は用意してありますから」
俺はトランクスタイプのオーソドックスな水着に着替えて海へ。
「私はパーティーの準備へ向かいますので、お姉さんと上永先生と一緒に遊んでいてください。お姉さまも すぐに来ますから」
ホテルにはパーティーに呼ばれた人たちが続々と集まっていて、挨拶とかがあるらしい。
今も、ホテルのヘリポートに、また一機ヘリコプターが着陸した。
そして俺は海辺へ行くと、そこには玲と上永先生がいた。
「弟くんではありませんかー。お姉ちゃんとビーチバレーしましょー」
「あぁーん、だめよぉーん。姉とじゃなくてぇ、美貌の女教師とやりましょぉん。ボールが弾むたびに たわわな お胸が弾むのよぉん」
この二人の脳内は季節問わず、万年常夏だ。
「セルニアは?」
「吉祥院さんはー、着替えに行ったばかりですー。まだしばらく時間がかかると思いますよー」
「そぉねぇーん。女は男と違ってぇ、時間がかかるからぁーん」
俺は、
「そうか。じゃあ、俺はその辺りを散歩してくる」
この二人に関わるとおかしな事になりそうだし。
「えー、ビーチバレーしてくれないのー」
「あぁーん、その辺りの浜辺でたぎる若さを吐き出しちゃうのかしらぁーん」
とか言っているけど無視した。
そして、しばらく俺は浜辺をぶらついていた。
遠くには南国の海に良くある原住民の家とかが見え、現地の人たちの姿も見える。
でも 着ている服は、民族服とかではなく、普通の服。
まあ、今の時代、こういう所にもネットとかが繋がってたりするんだから、不自然ではないんだけど、ロマンがない。
ふと、雑木林のところで美人のパツキンねーちゃんが、なにやら捜し物をしているようだった。
よく日に焼けた肌の、でも髪はウェーブがかかったブロンド。
年齢は三十歳中頃のように見える。
体は上永先生以上のボンッキュンッボンッ。
そのパツキンねーちゃんは、少し困った表情で捜し物をしているようで、あっちへ行ったり こっちへ行ったり としていた。
困っているようなので、俺は英語で話しかけてみる。
「ワット・ドゥー・ユー・ドゥー?」
ダメだ。
やっぱり発音がカタカナだ。
これじゃ通じねぇよ。
パツキンねーちゃんは怪訝な表情で、
「Can you speak English?」
英語をしゃべれるのか? と聞いてきた。
どうやら俺が英語を話そうとしていることだけは伝わったらしい。
「アイ・キャンノット・スピーク・イングリッシュ」
俺の英語は問題があることを伝えた。
「Where are you from?」
どこからきたのか? だって。
「ジャパン」
パツキンねーちゃんは親しげな笑顔になった。
「あら、あんた日本人なの。下手な英語だと思ったら」
流暢な日本語だ。
「日本語 話せるんですか?」
「あたりまえじゃない」
語学堪能なパツキンねーちゃんなんだな。
「それで、カタカナの英語で話しかけてきて、どうしたんだい?」
「いえ、なんか困っているようなので。っていうか、なにかを探しているようだったので」
「それで、助けようと思ってカタカナ英語で話しかけたのかい? 君、良い子だね」
と頭をなでなでされた。
シクシク、子供扱いされてる。
「実はね、魚釣りに使う釣り竿が見つからなくてね。うっかりどこにおいたか分からなくなっちまってね。この辺だったってのは憶えてるんだけど」
「魚釣りって、この島特有の魚とかですか?」
「ハッピーフィッシュっていう魚なんだけどね。それを釣るには特別仕様の釣り竿が必要なのさ」
「ああ、それなら一緒に探しますよ」
そして十五分後。
マグロ釣りにでも使いそうなメチャクチャデカい釣り竿を俺は見つけた。
「あの、これですか?」
「ああ、それそれ。よく見つけてくれたね。ありがとうよ」
こんな釣り竿で釣る魚って、ハッピーフィッシュってどんな魚なんだ?
パツキンねーちゃんは俺に、
「なにかお礼をしないといけないね」
「いえ、良いっすよ」
「でも、なんにもしないってのもねぇ」
そのとき、ポケットの携帯電話がなった。
通知を見ると、玲からだ。
「セルニアさんのー、着替えが終わりましたよー」
「ああ、わかった」
俺が電話を切ると、パツキンねーちゃんは にやりと笑い、
「なーに? 女の子を待たせてたの? なーんだ。そんなことなら早く言いなさいよ。ほら、早く行ってあげて。女を待たせちゃダメよ」
ノリの良いねーちゃんだ。
「それじゃ、行ってきます」
こうして、地元民とちょっとした交流をしたのだった。
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