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34・球竜 宮
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コンクールは終了した。
俺は今、コンクールの参加者や審査員などの、関係者 打ち上げパーティーに出席している。
俺から遠く離れたセルニアの周囲には、様々な人が集まっている。
ヒゲを蓄えた老紳士。
頭の軽そうな若いチャラ男。
南国蝶のような服の貴婦人。
彼らの対応にセルニアは忙しそうだった。
そして俺の隣には、吉祥院 父がいた。
俺はなるべくお父さんを見ないようにしていたのだけど、そのガタイから発せられる威圧感は無視できなかった。
「ふん。まあ、この程度のコンクール、セルニアなら優勝できて当然だな。だが、よくやったと言っておこう」
そう、セルニアは優勝した。
俺はセルニアの曲を思い出す。
凄かったの一言だった。
その細い指は 盤上を 優雅に 軽やかに、それでいて 力強く舞い踊っていた。
グランドピアノから発せられる音の旋律は、感動しかなかった。
そして弾き終わったセルニアに、皆がスタンディングオベーション。
万雷の拍手を、セルニアは堂々と、誇らしげに受けていた。
そんなセルニアの姿に、俺と彼女は住む世界が違うと思った。
お父さんがグラスをテーブルに置くと、
「では、私はこれで失礼する。大事な会議があるのでね」
「今日はお招きいただき、ありがとうございました」
「私が呼んだのではない。呼んだのはセルニアだ」
「そ、そうですか」
余計なやぶ蛇だったみたい。
そして吉祥院 父は俺の肩に手を置き、
「いずれ 君とは、ゆっくりと話をしたいものだな」
「……ハイ、ソウデスネ」
こうして俺は お父さんから解放されたわけだが、セルニアは挨拶に忙しいし、湖瑠璃ちゃんもセルニアの妹と言うことで、それなりに人が集まっていて、つまり俺にかまっていられる暇がない。
俺は ぼーっとしていても仕方ないので、テーブルに並べられた食事を遠慮なく食べることにした。
そう、俺は大物ラッパー。
こんなセレブでブルジョワな場所にも、Tシャツとハーフパンツで来て、空中浮遊ができるくらいに浮きまくるんだZE。
こうなりゃ 開き直り、気分を盛り上げて 食いまくり、そして ひんしゅく 買いまくり。
でも 気にしないYO。
セレブどもなんざ ファックだZE。
「いやー、君 すごい図太い神経だね」
俺がバクバク食べていると、楽譜を貸してくれた褐色美少女が話しかけてきた。
「いい、あううおあいえうええあいあおう」
「飲み込んでから喋って」
「ムシャムシャ ゴックン。
君、楽譜を貸してありがとう」
「どういたしまして。それにしても、君って 何者? こんな場所に そんな格好で来るなんて」
「これは不可抗力なんだ。具体的に話すと、夏休みのひとときに ダラダラ映画を見てると、突然 家にメン・イン・ブラックが来て、強制拉致されて、ここに連れてこられた」
「アハハハ! 受けるー! でも ありえなーい!」
信じてくれなかった。
「そういえば、まだ 自己紹介してなかったね。
あたし、球竜 宮。気軽に宮って呼んで。よろしくね」
「あれ? その名前。じゃあ 君、日本人なの」
「あたりまえじゃない。何人だと思ったの?」
「東南アジアの人だと思ってた」
「半分 当たってる。あたし、沖縄民なの」
「あぁー」
俺は納得して、変な声がでた。
「確かに沖縄は東南アジアに近い。そして日本で最も太陽に愛された土地だから、日焼けしているのか」
「そういうこと」
そして 宮は セルニアに眼を向けた。
「いやー、それにしても、吉祥院さん凄いよね。みんなからの人気もだけど、ピアノも」
「宮も凄かったよ」
実はセルニアの後、宮の番だったのだ。
面識があったから、注意して聞いていたので、記憶に残っている。
「ありがとう。でも、お世辞はいらない。吉祥院さんとの実力の差は、あたし自身一番よく分かっている」
その言葉に、俺は それ以上 なにも言うことができなかった。
確かに セルニアの後の宮の演奏は、どこか物足りなさを感じた。
それが実力の差なのならば、宮が二位になったのも実力なのだろう。
「でも、いつか吉祥院さんを超えてみせる。今は無理だけど、一年後、二年後、もっと先かも知れないけど、いつか吉祥院さんよりも、みんなを感動させてみせる」
球竜 宮のセルニアに向ける眼には、強い決意があった。
セルニアにライバルが出現したと思った。
そして 宮は、
「それじゃ、あたしも挨拶とかあるから、もう行くね」
「ああ。楽譜、ホントにありがとう。助かったよ」
「うん。じゃあ、バイバイ」
俺は今、コンクールの参加者や審査員などの、関係者 打ち上げパーティーに出席している。
俺から遠く離れたセルニアの周囲には、様々な人が集まっている。
ヒゲを蓄えた老紳士。
頭の軽そうな若いチャラ男。
南国蝶のような服の貴婦人。
彼らの対応にセルニアは忙しそうだった。
そして俺の隣には、吉祥院 父がいた。
俺はなるべくお父さんを見ないようにしていたのだけど、そのガタイから発せられる威圧感は無視できなかった。
「ふん。まあ、この程度のコンクール、セルニアなら優勝できて当然だな。だが、よくやったと言っておこう」
そう、セルニアは優勝した。
俺はセルニアの曲を思い出す。
凄かったの一言だった。
その細い指は 盤上を 優雅に 軽やかに、それでいて 力強く舞い踊っていた。
グランドピアノから発せられる音の旋律は、感動しかなかった。
そして弾き終わったセルニアに、皆がスタンディングオベーション。
万雷の拍手を、セルニアは堂々と、誇らしげに受けていた。
そんなセルニアの姿に、俺と彼女は住む世界が違うと思った。
お父さんがグラスをテーブルに置くと、
「では、私はこれで失礼する。大事な会議があるのでね」
「今日はお招きいただき、ありがとうございました」
「私が呼んだのではない。呼んだのはセルニアだ」
「そ、そうですか」
余計なやぶ蛇だったみたい。
そして吉祥院 父は俺の肩に手を置き、
「いずれ 君とは、ゆっくりと話をしたいものだな」
「……ハイ、ソウデスネ」
こうして俺は お父さんから解放されたわけだが、セルニアは挨拶に忙しいし、湖瑠璃ちゃんもセルニアの妹と言うことで、それなりに人が集まっていて、つまり俺にかまっていられる暇がない。
俺は ぼーっとしていても仕方ないので、テーブルに並べられた食事を遠慮なく食べることにした。
そう、俺は大物ラッパー。
こんなセレブでブルジョワな場所にも、Tシャツとハーフパンツで来て、空中浮遊ができるくらいに浮きまくるんだZE。
こうなりゃ 開き直り、気分を盛り上げて 食いまくり、そして ひんしゅく 買いまくり。
でも 気にしないYO。
セレブどもなんざ ファックだZE。
「いやー、君 すごい図太い神経だね」
俺がバクバク食べていると、楽譜を貸してくれた褐色美少女が話しかけてきた。
「いい、あううおあいえうええあいあおう」
「飲み込んでから喋って」
「ムシャムシャ ゴックン。
君、楽譜を貸してありがとう」
「どういたしまして。それにしても、君って 何者? こんな場所に そんな格好で来るなんて」
「これは不可抗力なんだ。具体的に話すと、夏休みのひとときに ダラダラ映画を見てると、突然 家にメン・イン・ブラックが来て、強制拉致されて、ここに連れてこられた」
「アハハハ! 受けるー! でも ありえなーい!」
信じてくれなかった。
「そういえば、まだ 自己紹介してなかったね。
あたし、球竜 宮。気軽に宮って呼んで。よろしくね」
「あれ? その名前。じゃあ 君、日本人なの」
「あたりまえじゃない。何人だと思ったの?」
「東南アジアの人だと思ってた」
「半分 当たってる。あたし、沖縄民なの」
「あぁー」
俺は納得して、変な声がでた。
「確かに沖縄は東南アジアに近い。そして日本で最も太陽に愛された土地だから、日焼けしているのか」
「そういうこと」
そして 宮は セルニアに眼を向けた。
「いやー、それにしても、吉祥院さん凄いよね。みんなからの人気もだけど、ピアノも」
「宮も凄かったよ」
実はセルニアの後、宮の番だったのだ。
面識があったから、注意して聞いていたので、記憶に残っている。
「ありがとう。でも、お世辞はいらない。吉祥院さんとの実力の差は、あたし自身一番よく分かっている」
その言葉に、俺は それ以上 なにも言うことができなかった。
確かに セルニアの後の宮の演奏は、どこか物足りなさを感じた。
それが実力の差なのならば、宮が二位になったのも実力なのだろう。
「でも、いつか吉祥院さんを超えてみせる。今は無理だけど、一年後、二年後、もっと先かも知れないけど、いつか吉祥院さんよりも、みんなを感動させてみせる」
球竜 宮のセルニアに向ける眼には、強い決意があった。
セルニアにライバルが出現したと思った。
そして 宮は、
「それじゃ、あたしも挨拶とかあるから、もう行くね」
「ああ。楽譜、ホントにありがとう。助かったよ」
「うん。じゃあ、バイバイ」
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