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番外編
ハッピーエンド
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組長さんはマシンガンを海に投げ捨てた。
「え?」
放物線を描いて海にポチャンと音を立てて落下した。
役者さんは怪訝に、
「なんのつもりだ?」
組長さんのマシンガンには仕込みをしてあった。
ヤクザの事務所に撮影班の人が忍び込んで、空砲とすり替えていたのだ。
だから発砲しても弾は出ない。
しかし役者さんの衣服の下には仕込みがしてあって、ニセモノの血飛沫が飛び散るようになっていた。
そう言う段取りだったのだが、しかし組長さんはマシンガンを海に投げ捨てた。
これは一体どういうことなのか。
「うえぇえええん!」
さらには脈絡もなく組長さんは泣きだした。
「おまえの気持ちはよくわかった! もう良い! わしは身を引く!
わしはな、わしはおまえが好きだった! 本当に心から愛していた! だからおまえを幸せにしようと一生懸命頑張ってきた!
だが、わしは結局おまえを幸せにできなかった!
その男と一緒になることがおまえの幸せだというなら、わしは身を引く。
だから、どうか幸せになってくれ!
しかし、これだけは憶えていて欲しい! わしは本当におまえが好きだ! いつまでも愛している!」
いきなりの愛の告白に、みんなポカンとしたけど、愛人さんだけは感動していた。
「あたし、その言葉が聞きたかったの。
貴方はあたしにたくさん贅沢させてくれたけど、好きって言ってくれたことがなかったの。愛してるって一度だって言ってくれなかったの。だから あたし いつも不安だった。貴方があたしのことが好きなのか。あたしのこと本当に愛しているのかって。
だから浮気してあなたの気持ちを確かめようとした。だからこんなことしたの。
好きって言葉が聞きたかっただけなの。ただ愛してるって言われたかっただけなの」
「おまえ……」
「あなた……」
組長さんは愛人さんに叫ぶ。
「おまえが好きだ!」
愛人さんも組長さんに叫ぶ。
「あたしも好きよ!」
「おまえを愛してる!」
「貴方を愛してる!」
二人はかけ出しお互い抱きしめ合った。
そして、
「「好ーき。愛してる。好ーき。愛してる。好ーき。愛してる。好ーき。愛してる」」
とか歌いながら、夜の街へ去って行った。
途中からなんかスキップしてた。
役者さんたちをほったらかしにして。
しばらくの静寂の後、役者さんは呟いた。
「……え? 終わり? これで終わりなの?!」
わたしが答える。
「終わり、みたいですけど」
「いや、終わったって、この後どうすんだよ? 色々 仕込みとかしちゃったのに、一つも使わないで終わっちゃったの」
不満げな役者さんに、下っ端ヤクザさんが宥める。
「まーまー、良いじゃないですか。なんだか丸く収まったんだから。俺は振られちゃいましたけど。ハハハ」
「良くないよ。台本だって用意したんだよ。飛びっ切りハードボイルドなやつをさ。それなのにいきなりラブロマンスでハッピーエンドなわけ」
不満タラタラな役者さんだった。
バーンッ!!
一発の銃声が鳴り響いた。
みんな体が硬直し、そして銃声が鳴った方向へ視線を向けた。
まさか、組長さんが戻ってきたの!?
銃声がした方角へ眼を向けたその先にいたのは!?
なんか幸薄そうなサラリーマンのオッサンが銃を持っていた。
役者さんは怪訝に、
「誰?」
わたしはその人を少し知っていた。
「あ、あの人、最近よく見かける人だ。え? なんでここに居るの?」
そして幸薄そうなサラリーマンのオッサンは言った。
「私の名を語る者がいるというから 調べに来てみれば、まさか こんな くだらないことだったとはな」
役者さんがわたしに、
「え? なんの話?」
わたしは首を傾げる。
「さあ?」
みんなが頭の中で疑問符を浮かべている中、下っ端ヤクザさんがサラリーマンの正体に気付いた。
「あー! 本物! 本物の伝説の殺し屋! キラーゲージ!!」
「「「えー!!!」」」
伝説の殺し屋 キラーゲージはわたしたちに銃口を向ける。
「こんなことで殺しをするのも気が引けるが、しかし わたしの名を勝手に使った者を生かしておいては示しが付かん。おまえたちにはここで死んで貰う」
一難去ってまた一難。
「え?」
放物線を描いて海にポチャンと音を立てて落下した。
役者さんは怪訝に、
「なんのつもりだ?」
組長さんのマシンガンには仕込みをしてあった。
ヤクザの事務所に撮影班の人が忍び込んで、空砲とすり替えていたのだ。
だから発砲しても弾は出ない。
しかし役者さんの衣服の下には仕込みがしてあって、ニセモノの血飛沫が飛び散るようになっていた。
そう言う段取りだったのだが、しかし組長さんはマシンガンを海に投げ捨てた。
これは一体どういうことなのか。
「うえぇえええん!」
さらには脈絡もなく組長さんは泣きだした。
「おまえの気持ちはよくわかった! もう良い! わしは身を引く!
わしはな、わしはおまえが好きだった! 本当に心から愛していた! だからおまえを幸せにしようと一生懸命頑張ってきた!
だが、わしは結局おまえを幸せにできなかった!
その男と一緒になることがおまえの幸せだというなら、わしは身を引く。
だから、どうか幸せになってくれ!
しかし、これだけは憶えていて欲しい! わしは本当におまえが好きだ! いつまでも愛している!」
いきなりの愛の告白に、みんなポカンとしたけど、愛人さんだけは感動していた。
「あたし、その言葉が聞きたかったの。
貴方はあたしにたくさん贅沢させてくれたけど、好きって言ってくれたことがなかったの。愛してるって一度だって言ってくれなかったの。だから あたし いつも不安だった。貴方があたしのことが好きなのか。あたしのこと本当に愛しているのかって。
だから浮気してあなたの気持ちを確かめようとした。だからこんなことしたの。
好きって言葉が聞きたかっただけなの。ただ愛してるって言われたかっただけなの」
「おまえ……」
「あなた……」
組長さんは愛人さんに叫ぶ。
「おまえが好きだ!」
愛人さんも組長さんに叫ぶ。
「あたしも好きよ!」
「おまえを愛してる!」
「貴方を愛してる!」
二人はかけ出しお互い抱きしめ合った。
そして、
「「好ーき。愛してる。好ーき。愛してる。好ーき。愛してる。好ーき。愛してる」」
とか歌いながら、夜の街へ去って行った。
途中からなんかスキップしてた。
役者さんたちをほったらかしにして。
しばらくの静寂の後、役者さんは呟いた。
「……え? 終わり? これで終わりなの?!」
わたしが答える。
「終わり、みたいですけど」
「いや、終わったって、この後どうすんだよ? 色々 仕込みとかしちゃったのに、一つも使わないで終わっちゃったの」
不満げな役者さんに、下っ端ヤクザさんが宥める。
「まーまー、良いじゃないですか。なんだか丸く収まったんだから。俺は振られちゃいましたけど。ハハハ」
「良くないよ。台本だって用意したんだよ。飛びっ切りハードボイルドなやつをさ。それなのにいきなりラブロマンスでハッピーエンドなわけ」
不満タラタラな役者さんだった。
バーンッ!!
一発の銃声が鳴り響いた。
みんな体が硬直し、そして銃声が鳴った方向へ視線を向けた。
まさか、組長さんが戻ってきたの!?
銃声がした方角へ眼を向けたその先にいたのは!?
なんか幸薄そうなサラリーマンのオッサンが銃を持っていた。
役者さんは怪訝に、
「誰?」
わたしはその人を少し知っていた。
「あ、あの人、最近よく見かける人だ。え? なんでここに居るの?」
そして幸薄そうなサラリーマンのオッサンは言った。
「私の名を語る者がいるというから 調べに来てみれば、まさか こんな くだらないことだったとはな」
役者さんがわたしに、
「え? なんの話?」
わたしは首を傾げる。
「さあ?」
みんなが頭の中で疑問符を浮かべている中、下っ端ヤクザさんがサラリーマンの正体に気付いた。
「あー! 本物! 本物の伝説の殺し屋! キラーゲージ!!」
「「「えー!!!」」」
伝説の殺し屋 キラーゲージはわたしたちに銃口を向ける。
「こんなことで殺しをするのも気が引けるが、しかし わたしの名を勝手に使った者を生かしておいては示しが付かん。おまえたちにはここで死んで貰う」
一難去ってまた一難。
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