78 / 94
三章・いきなりですが冒険編
さも当然のように
しおりを挟む
わたしたちは北極大陸にて、大魔封陣のセッティグを完了した。
賢姫さまが無線で合図をする。
「開始してください」
五つの魔方陣に配置した、それぞれの破邪の戦士が力を解放する。
それは大魔宮殿を中心として、巨大な魔方陣を形成。
魔方陣内部の魔が払われ、大魔宮殿の結界が消失した。
兵士たちが一斉に快哉の声を上げる。
「「「やったぞ!!!」」」
みんなはいったん集まる。
「さあ、みなさん。大魔宮殿にもう一度乗り込みましょう。今度こそ、大魔王を倒せます」
みんなは力強く頷いた。
「あのー、ちょっと 良いですか」
オッサンが手を上げた。
「実は 聖女さまに、お伝えしなければならないことがありますです」
わたしは考えていたセリフを先に言った。
「ごめんなさい。貴方の気持ちは全身全霊 拒否させていただきます」
オッサンは心底 怪訝に首を傾げた。
「なんの話ですか?」
「私のことが好きだって言う話でしょう。実は裏庭で大魔道士さまと話しているのを偶然聞いてしまって。残念でも何でもありませんが、貴方の気持ちには全力で応えません」
「僕が聖女さまのこと好きだなんて、そんなわけないじゃないですか」
さも当然のように言うオッサン。
「え? 違うんですか?」
「聖女さまって何気に腹黒くて、ちょっと怖いというか。それに けっこう暴力的ですし、性格悪いですし、僕も嫌です」
「なんかボロクソに言ってくれてますけど、じゃあ何の話なんです?」
あの話で恋バナではないとしたら なに?
オッサンは申し訳なさそうに、
「すいませんです。僕、ここで旅から外れさせていただきますです」
わたしは理解できなかった。
「え? なに言ってるんですか? 今から決戦ですよ」
「わかってますです。これで本当に最後の戦いです。そして大魔王を倒せば英雄になれるんです。英雄になれば世界中の女の人が僕の童貞を欲しがりますです。童貞卒業した後も、何人もの女の人をとっかえひっかえできますです。
でも、でも……」
オッサンはボロボロと泣き出した。
「怖くて足が動いてくれないんです。ずっと怖かったのを我慢していましたです。だから根性を出してるのに、気合いを入れてるのに、とうとう足が進んでくれなくなっちゃったんです。
情けないですよね。あともう少しなのに。童貞卒業まであと少しなのに。でもダメなんです。
こんな僕は一生 童貞です。でも しかたないです。こんな臆病者なんですから。
みなさん、頑張ってくださいです」
わたしはオッサンの手を握った。
「貴方が臆病なのは知っています。
でも、貴方はいつも勇気を出して、わたしたちと一緒に戦ってくれた。
あなたは、勇気ある臆病者です。
でも、もう十分です。
いままで ありがとうございました」
「……聖女さま……」
こうしてオッサンは、最後の戦いを目前として、パーティーから離脱した。
でも、オッサンを責める人は誰もいなかった。
わたしはみんなに伝える。
「さあ、今まで勇気を振り絞って戦ってくれた臆病者のためにも、必ず勝利しましょう」
こうしてオッサンの勇気を受けて、私たちは大魔宮殿へ乗り込んだ。
悪友は心底疑いの目で聞いてきた。
「で、ホントはどう思ってたの?」
「一生 童貞で当然だろうなって思ってた。やばかったわー。あの オッサン、盛り上がってるところに水を差すこと言い出すんだもの。ごまかしてなかったら士気がだだ下がりだったわ」
「そんなことだろうと思ったわ」
賢姫さまが無線で合図をする。
「開始してください」
五つの魔方陣に配置した、それぞれの破邪の戦士が力を解放する。
それは大魔宮殿を中心として、巨大な魔方陣を形成。
魔方陣内部の魔が払われ、大魔宮殿の結界が消失した。
兵士たちが一斉に快哉の声を上げる。
「「「やったぞ!!!」」」
みんなはいったん集まる。
「さあ、みなさん。大魔宮殿にもう一度乗り込みましょう。今度こそ、大魔王を倒せます」
みんなは力強く頷いた。
「あのー、ちょっと 良いですか」
オッサンが手を上げた。
「実は 聖女さまに、お伝えしなければならないことがありますです」
わたしは考えていたセリフを先に言った。
「ごめんなさい。貴方の気持ちは全身全霊 拒否させていただきます」
オッサンは心底 怪訝に首を傾げた。
「なんの話ですか?」
「私のことが好きだって言う話でしょう。実は裏庭で大魔道士さまと話しているのを偶然聞いてしまって。残念でも何でもありませんが、貴方の気持ちには全力で応えません」
「僕が聖女さまのこと好きだなんて、そんなわけないじゃないですか」
さも当然のように言うオッサン。
「え? 違うんですか?」
「聖女さまって何気に腹黒くて、ちょっと怖いというか。それに けっこう暴力的ですし、性格悪いですし、僕も嫌です」
「なんかボロクソに言ってくれてますけど、じゃあ何の話なんです?」
あの話で恋バナではないとしたら なに?
オッサンは申し訳なさそうに、
「すいませんです。僕、ここで旅から外れさせていただきますです」
わたしは理解できなかった。
「え? なに言ってるんですか? 今から決戦ですよ」
「わかってますです。これで本当に最後の戦いです。そして大魔王を倒せば英雄になれるんです。英雄になれば世界中の女の人が僕の童貞を欲しがりますです。童貞卒業した後も、何人もの女の人をとっかえひっかえできますです。
でも、でも……」
オッサンはボロボロと泣き出した。
「怖くて足が動いてくれないんです。ずっと怖かったのを我慢していましたです。だから根性を出してるのに、気合いを入れてるのに、とうとう足が進んでくれなくなっちゃったんです。
情けないですよね。あともう少しなのに。童貞卒業まであと少しなのに。でもダメなんです。
こんな僕は一生 童貞です。でも しかたないです。こんな臆病者なんですから。
みなさん、頑張ってくださいです」
わたしはオッサンの手を握った。
「貴方が臆病なのは知っています。
でも、貴方はいつも勇気を出して、わたしたちと一緒に戦ってくれた。
あなたは、勇気ある臆病者です。
でも、もう十分です。
いままで ありがとうございました」
「……聖女さま……」
こうしてオッサンは、最後の戦いを目前として、パーティーから離脱した。
でも、オッサンを責める人は誰もいなかった。
わたしはみんなに伝える。
「さあ、今まで勇気を振り絞って戦ってくれた臆病者のためにも、必ず勝利しましょう」
こうしてオッサンの勇気を受けて、私たちは大魔宮殿へ乗り込んだ。
悪友は心底疑いの目で聞いてきた。
「で、ホントはどう思ってたの?」
「一生 童貞で当然だろうなって思ってた。やばかったわー。あの オッサン、盛り上がってるところに水を差すこと言い出すんだもの。ごまかしてなかったら士気がだだ下がりだったわ」
「そんなことだろうと思ったわ」
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる