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三章・いきなりですが冒険編

テメェら

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 竜騎将軍との戦いから一週間。
 中隊長さんは順調に回復している。
 魔兵将くん親子も到着した。
 魔兵将くんたちが、試練をサポートすることによって、試練に合格する可能性が高くなる。
 だけど、中隊長さんが試練を受けるのはまだ先になりそうだ。
 気長に中隊長さんの回復を待とう。
 そんな ある日、聖姫さまが一冊の日記を持ってきた。
「竜騎将軍が話していた女性の日記です。
 記録が残っているかも知れないと思って、探して貰い、王宮の蔵書の中から発見しました。
 ここには、彼女が王に慰め者にされていたときの事が書かれていると思います。
 ですが、私にはとても読むことはできません。読む勇気がないのです。彼女の苦痛を想像しただけで、わたしは胸が張り裂けそうになる。
 だから、聖女さまに読んで欲しいのです。
 聖女さまに読んで貰うのは間違っているかもしれません。
 ですが、もしかすると 竜騎将軍に彼女の本当の気持ちを少しでも伝えることができるかも知れない。
 つらい体験を乗り越えた貴女なら、読むことができるのではないかと思い、こうして持ってきました。
 読まなくてもかまいません。ですが、少しだけでも、考えてください」
 聖姫さまはそう言って退室した。
 わたし自身、読むのはためらう。
 だって、わたしの話って、大嘘なんだから。
 でも、読まないわけにはいかないわよね、これ。
 しかたない。
 読むしかない。


 幼馴染みが竜の勇者になって、魔王討伐に旅立った。
 その間、私は王さまを誘惑してパコパコしている。
 竜の勇者くんが旅立つ前、私にプロポーズしてきた。
 実は私が昔から他の男と何人もヤってるなんて知らないで、純粋な眼差しでプロポーズをしてきたとき、興奮でアソコが大変なことになっちゃった。
 純情な童貞男に愛を囁いて、陰で影で他の男とヤるのってたまらない。
 不自然なまでに興奮しちゃう。


 ……なんか、変な内容なんだけど。


 竜の勇者くんが魔王討伐から帰ってきた。
 計画通り、王さまとパコパコしているのを見せつけてやった。
 竜の勇者くん、ものすごい絶望的な顔してた。
 純情童貞男をイジめるのってたまらない。
 竜の勇者くんが、私と結婚するのを目標に命がけで戦ってるのに、私は王さまとヤってるシチュエーションにたまらなく興奮してたけど、見せつけたときの興奮はすごかった。
 興奮しすぎて、三日三晩もイキっぱなしになった。
 王さまは、なんか罪悪感で止めたいって言ってるけど、逃がさないわ。
 私のテクで気持ちよくメロメロのメロンメロンにすれば、王さまだって言いなりよ。
 さあ、次の純情童貞くんは誰にしようかなー。


「……」
 わたしはそっと日記を閉じて、暖炉の中に投げ込んで、火をつけて 燃やして 灰になるのをきちんと確認して、夜中に日記の灰を 土の中に一メートル以上 掘って 埋めて 処分した。


 竜騎将軍には見せられねー!


 悪友が引きつった顔で、
「それ、竜騎将軍に知られたら、今度こそ立ち直れなくなるわね」
「それだけじゃないの。ロリ女神が聖姫さまを聖女にしなかった理由も分かった」
「え? それって理由があったの?」
 

 王宮でのこと。
 聖姫さまはわたしに聞いてきた。
「彼女の真意はどうでしたか?」
 わたしは鼻毛を引っこ抜いて涙を出すと、
「あまりにもつらい体験を綴っていて、竜騎将軍にはとても伝えられません。ううぅ……」
「そうでしたか。ううぅ……」
 わたしの大嘘に聖姫さまも貰い泣き。
 そこに、処女厨な大臣たちが嫌みったらしい笑い顔で現れた。
「話は聞きましたぞ。竜騎将軍が大魔王に付いたのは、汚れた女のためだとか。聖女さまの同類ですな。同類として責任は感じないのですかな?
 ああ、汚されても公衆の面前に出てこられる面の皮が厚い聖女さまは、責任など感じませんか。さっすが、聖女さまになられる方は普通の女性とは違いますなぁ」
 遠回りになっていない皮肉にも、わたしは言い返すことが出来なかった。
 だって、真実はもっとヤバかったから。
 わたしはさっさと退散しようと思った。
 しかし その時、聖姫さまが叫んだ。
「いい加減にしなさい! 貴方たちには聖女さまの清らかさが理解できないのですか!?
 たとえどれほど体を汚されようとも、心まではけして汚されなかった、この方の清らかさ。
 この方こそ聖女にふさわしいお方です!」
 なんか、聖姫さまって わたしを過剰評価しておられるのよね。
 汚されたって話 自体、大嘘だから言えないけど。
 とりあえずわたしは聖姫さまを落ち着かせようとする。
「あの、いいんです。わたしは気にしませんから」
「いいえ! わたしはもう我慢なりません! この者たちの無礼さ! 目に余ります!」
「い、いえ、ホントいいですから」
「貴女は真に清らかな聖女なのです! それを偏見の眼で見るなど許しがたい行為! ましてや暴言を吐くなどもってのほか!」
「いや、あの、マジでその辺でカンベンしてください」
 なんか 聖姫さまの言葉が、わたしのミイラのように痩せ細った良心にザクザクと突き刺さるんですけど。
 だけど聖姫さまはそれでも続けた。
「この方は世界で最も清らかな女性と言っても過言ではありません!
 どんなにオニンニンをヌプヌプされても おしゃぶりさせられても ましてやお尻の穴まで!
 ああぁあん。
 私は想像しただけでたまりません! 私なら快楽に負けて即座に快楽落ちして牝奴隷にならせてくださいとおねだりしてしまいます!
 あの悪魔が現れたときも 悪魔のテクで虜にして欲しいと思っちゃったんです!
 しかし! この方はそんな汚らわしい欲望が全くないのです! 貴方たちには それがわからないのですか!?」
 ……
 わたしも大臣たちも、聖姫さまの突然の告白に、ポカンとしていた。
 しばらくして わたしは、
「……あの、聖姫さま、実はムッツリなんですか?」
「ムッツリというか、すでに経験済みです」
「経験済みって、聖姫さま非処女なんですか!?」
 聖姫なんてがっちりガードされた立場でどうやって出来るのよ?
「実は、新しく騎士に叙勲された者の中から、優秀な者 数人と聖姫一人が面会する習わしがあるのです。
 私が聖姫になった最初の年も、新しい騎士たちと会ったのですが、その騎士たちが私の大きな胸をチラチラと見ながら股間を隠していまして。明らかに童貞って感じで、その様子が あまりにも可愛かったので、つい筆下ろしを」
「しちゃったんですか!? しかも聖姫さま その時 処女ですよね!? それなのにいきなり複数プレイしちゃったんですか!?」
「わたし、初体験でいきなり殿方一人では満足できない体になってしまいました。それからというもの、新しい騎士たちと面会するたびに、彼らの筆下ろしを。わたしが関係を持った殿方の人数は二十八人です」
 ロリ女神が聖女にしなかったわけだよ。
 処女じゃないんだから。
 って いうか、これ 大臣たちに知られて、ヤバいんじゃ。
 処女厨って、好きな人が非処女だと、理不尽にキレるって言うし。
 わたしは不安で大臣たちに眼を向けた。
 しかし大臣たちは、なぜかモジモジと恥ずかしそうに聖姫さまに、
「あの、聖姫さま、よければ わしも筆下ろししてくださりませんか」
「僕も筆下ろしを」
「俺も ぜひ」
 ……プチッ。
 わたしはキレた。
「テメェら! アタイん時は散々 皮肉を連発したくせに 聖姫さまの時はそれかよ! っていうか童貞なのかよ! その年で童貞かよ! これだから処女厨はキモいんだよ! このキモオタ処女厨どもが! 全員ブチのめしてやらあ! 覚悟しやがれ!!」
「「「ひぃいいいいい!!!」」」


 わたしは大臣たちを百人 倒した。
 そして聖王国から噂が広がった。
 聖女は武闘派。
 女神が聖女にしたのは、聖女はシャレにならないほど凶暴なので、犯すのがマジでヤバいからだと。
 そして わたしが賢者の国で 獣士将軍を倒した実績も知られることとなり、その噂は真実味を帯びることとなった。
 こうして、聖女・武闘伝が始まった。


 悪友は遠い目をしていた。
「あぁー、うん、まあ、なんていうか、その、コメントが出ないわ」
「無理に出そうとしなくて良いわよ」


 全ての童貞に告ぐ。
 女に夢を見るのはやめろ。
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