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三章・いきなりですが冒険編
後はアドリブで
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……続き。
中隊長さんは聖姫さまの治療を受けていた。
「外傷はありません。しかし、体全体の細胞にダメージがあるような感じです。
竜騎将軍が竜の力を共鳴させ、竜戦士様の竜の力を暴走させたことによって、竜戦士様は自分自身の竜の力でダメージを受けてしまったんです。
聖女さま、貴方も気をつけてください。伝承では、聖女の力を過剰に使うと、これと同じ事が起きるとの事です。
おそらく、竜騎将軍はこのことを知っていて、それで同じ竜の力を持つ者になら可能なのだと考えたのでしょう」
わたしは嫌な汗が出てきた。
聖女の力、いままで上手くいっていたから、ポンポン簡単に使ってたけど、こんなにヤバかったの。
っていうか、聖姫さまのほうが聖女の力を使うの上手いんだから、なぜにあのロリ女神は 聖姫さまを聖女にしなかったのか。
絶対 間違いなく 人選ミスってる。
聖姫さまは続けて、
「とにかく 竜戦士さまは、当分の間は動けません。
試練を受けることができないのはもちろん、次に竜騎将軍が来たときも、戦うことはできないでしょう」
オッサンが震えながら、
「勝ち目がないから逃げましょうです」
わたしは一瞬 全面的に賛成したくなったけど、そこをグッとこらえた。
聖姫さまが そんな わたしを見て、
「聖女さま、そんなに耐え忍んでおられて。竜戦士様のことをそんなに心配されるとは。まさに聖女にふさわしい お方」
なんか誤解していたけど、それもスルーして、とにかく考える。
精霊将軍が携帯電話で魔兵将軍親子に連絡していた。
二人は急いでここに向かっているとのことだけど、次の竜騎将軍の襲撃には間に合わないだろう。
正直 勝ち目はない。
だけど、一つだけ事態を解決する方法がある。
それは、
「みなさん。わたしは竜騎将軍を説得したいと思います」
みんな驚きの眼を向けた。
わたしの女の勘が、竜騎将軍は真性のBLではないと告げていた。
BLに走ったのは何か理由があるはず。
それを聞き出すことができれば、説得の糸口になるかも知れない。
中隊長さんが戦えない今、わたしがなんとかする。
わたしは竜騎将軍の正面に立つ覚悟を決めた。
ダンディーなオジサマをノーマルにしたらわたしにもチャンスがあるかも知れないし。
魔兵将くんが尊敬の眼差しで、
「さすがです、聖女さま。やっぱり貴女は聖女にふさわしい方です」
「当然よ。清く正しくビューティホーな私の身と心がなんかそんな感じの……」
「あんたマジで良心の呵責がないの」
三日後、中隊長さんの身体がほとんど回復しないまま、竜騎将軍が完全回復して戻ってきた。
「予想以上に早いですね」
わたしが聞くと、竜騎将軍が応える。
「竜の祠と言う場所がある。そこでは 竜や 竜の力を持った者の回復が早くなるのだ。新しき竜戦士にも、大魔王様に付けば教えてやったのだがな」
ともかく説得開始だ。
「戦う前に貴方と話がしたいのです」
「話だと?」
「貴方はなぜ大魔王に付いたのですか? 貴方は人間が悪だと言いました。そう断言する理由があるはず。それはなんです?」
竜騎将軍は語り始めた。
百年前。
俺はこの国、聖王国で生まれた。
そして優れた戦士となり、勇者となった俺は、現在の魔王とは別の魔王と戦った。
世界を救おうなどと大それた事を考えていたわけではなかった。
まして英雄になろうなどという利己的な理由でもない。
俺が救いたかったのは彼女だった。
俺の幼馴染み。
そして俺の初恋。
魔王討伐の旅に出るとき、俺は彼女に誓った。
必ず魔王を倒し世界を平和にしてみせる。
だから帰ったら結婚しようと。
その間、聖王国の王は約束した。
俺の代わりに彼女を守ると。
そして長い旅の果て、死闘を繰り広げた末に、俺は魔王を倒し、故郷へと戻った。
俺を王が呼んだ。
そして見せつけられた。
彼女が王と交わっている姿を。
王は俺に言った。
「ご苦労だったな。もう帰って良いぞ。おまえは用済みだ。ブヒャヒャヒャヒャヒャ」
彼女は言った。
「ヘタレの貴方は一生童貞だろうけど、私がこの人のモノをくわえ込んでるのをオカズに、一生一人寂しくシコシコしててねぇ」
俺は言葉を失い、その場を立ち去るしかなかった。
王はこの話を国中に広めた。
俺は魔王を倒した勇者の栄光から 一転、恋人を寝取られたダメ男の烙印を押され、どこへ行っても笑いものにされた。
王は初めから俺をこうするつもりだった。
王の地位を脅かされる前に、栄光から笑い物へと陥れる、魔王を倒すためだけの捨て駒として、俺を使うつもりだった。
彼女は そんな王に媚びていた。
民も誰一人として俺に味方する者はいなかった。
俺は人間に絶望し、魔界の辺境で隠遁生活をしていた。
そして八十年ほどたって、大魔王様が声をかけてくださった。
女など所詮 すぐに快楽に溺れる惰弱な存在。
真実の愛を教えよう と。
「彼女も、王も、民衆も、俺を利用するだけ利用して、用済みになったとたんゴミのように捨てた。
そんな存在を悪と呼ばずして なんと呼ぶのだ」
わたしは脂汗が出ていた。
なんというか、NTRがリアルに起きると、ドン引き物というかなんというか。
っていうか、大魔王側に付いた理由がマジでかなりキッツイんだけど、これをどうやって説得すれば良いのよ?
ああぁー、頭を抱えたくなってきた。
みんなに説得してみせるなんて啖呵切るんじゃなかった。
落ち着け わたし。
呼吸を整えよう。
ヒッヒッフー。
そうよ、わたしは天才軍師の才能を持つ 出来る女。
前世の十八禁同人誌作家の知識をフル活動させるのよ。
そう、NTRで唯一ハッピーエンドになれる方法がある。
その方向で話を進めよう。
後はアドリブで。
「今の話で理解できました。
貴方は愛というものを思い違いしていると。
貴方は彼女を愛していなかった。
貴方は彼女に愛されたかったのです。
貴方は、彼女はどんなことがあっても、貴方を愛し続けると思っていた。
どんなことがあっても、誰にも体を許さないだろうと思い込んでいた。
でも人にはそれぞれ事情があります。
ただの町娘に過ぎない彼女が、王に逆らうことなどできるはずがない。
彼女はただ耐えるしかなかった。
貴方が帰ってくるまで、王に慰め物にされるのを、黙って耐えるしかなかった。
そして貴方が助けてくれると信じていた。
貴方が助けてくれると信じることだけが、彼女の希望だった。
でも、貴方は彼女に絶望した。
王に慰め物にされていた彼女を、貴方は穢れた者として見たのです。
その目を、その心を見抜かれ、彼女の心は折れてしまった。
彼女が快楽落ちしたのは、貴方の脆弱な心が原因です。
奪われたのなら、奪い返せば良かったのです。
寝取られたのなら、寝取り返せば良かったのです。
勇者の力を持っている貴方なら、力で彼女を王から奪い返すなど簡単だったはず。
その後で、彼女をゆっくりと癒やし、真実の愛を育んでいけば良かった。
でも貴方はなにもしなかった。
黙ってその場から去った。
快楽の悲鳴を上げる彼女を放置して、逃げたのです。
貴方は彼女を幸せにしてあげたがったんじゃない。
貴方が彼女に幸せにして欲しがっていた。
貴方は甘えた子供と同じだったのよ!」
わたしのセリフに竜騎将軍は怒りの表情になる。
「貴様に彼女のなにがわかる!」
「私も同じだからです。
私も陵辱された身です。
いっそ快楽に落ちてしまえば、どれだけ楽だろうかと思いました。
でも、そこから救い出してくれた人がいる。
わたしと彼女は同じ。
異なるのは、貴方は彼女を見捨て、彼らはわたしを助けてくれた。
そして、わたしは女神に聖女と認められました」
「ぐうぅ……」
竜騎将軍はうめき声を上げて、そして沈黙した。
そしてわたしの眼を真っ直ぐに睨んだ。
わたしは臆することはなかった。
竜騎将軍はどんなに強くても、その心が伴っていない。
その証拠に、竜騎将軍は言い返せなくなっている。
しばらくして、竜騎将軍は眼光をやわらげた。
「……おまえは、穢されても なお、清らかなのだな」
わたしは胸を張って応える。
「そのとおりです。わたしを愛してくれる みんながいるから」
まあ 穢されたってこと自体が大嘘なんだけど。
竜騎将軍は、
「しばらく自分の行いを考えるとしよう」
そして背を向けて去って行った。
こうして竜騎将軍との戦いは避けられた。
魔兵将くんは わたしの手に手を添えてきた。
「聖女さま。僕も貴女を愛しています。もし同じ事が貴方に起きたら、僕は必ず貴女を助けます」
「んー、魔兵将くんってば良い子ねー」
頭なでなで。
ふと 悪友を見ると、地上最強生物の如き物凄い形相でわたしを睨んでいた。
「な、なによ? 怖い顔して どうしたのよ?」
「貴様ッ! 今の魔兵将くんのセリフの意味を全く理解してないなッ! そして理解できていないがゆえに今回は見逃してやろうッ! だがッ! 次は 見逃さぬから そう思えいッッ!!」
なんの話してるのよ?
「パパからお電話だよ。パパからお電話だよ」
魔兵将くんの携帯電話の着信音だ。
相手はもちろんお父さん。
魔兵将くんは電話に出る。
「もしもし、パパァ。そうなんだぁ、今 聖女さまと一緒なのぉ。うん、わかったぁ。すぐに戻るねぇ。あ、そうそう。僕、ついに聖女さまに告白しちゃったぁ。詳しいことは帰ってからお話しするからねぇ」
魔兵将くんは電話を切ると、
「それじゃ 聖女さま。父が呼んでいるので、僕は帰ります。告白の答えは 今度 聞かせて貰いますから」
「うん、分かった」
そして魔兵将くんは帰った。
ところで、告白の返事って何のことだろう?
まあ、いいか。
「ふー」
魔兵将くんが帰って、わたしは一息吐く。
「いやー、魔兵将くんがいるから、話にオチとかつけられなくて苦労したわ。あの子には知られたくないし」
「ああ、やっぱり くだらないオチがあったんだ」
次回でオチがつきます。
中隊長さんは聖姫さまの治療を受けていた。
「外傷はありません。しかし、体全体の細胞にダメージがあるような感じです。
竜騎将軍が竜の力を共鳴させ、竜戦士様の竜の力を暴走させたことによって、竜戦士様は自分自身の竜の力でダメージを受けてしまったんです。
聖女さま、貴方も気をつけてください。伝承では、聖女の力を過剰に使うと、これと同じ事が起きるとの事です。
おそらく、竜騎将軍はこのことを知っていて、それで同じ竜の力を持つ者になら可能なのだと考えたのでしょう」
わたしは嫌な汗が出てきた。
聖女の力、いままで上手くいっていたから、ポンポン簡単に使ってたけど、こんなにヤバかったの。
っていうか、聖姫さまのほうが聖女の力を使うの上手いんだから、なぜにあのロリ女神は 聖姫さまを聖女にしなかったのか。
絶対 間違いなく 人選ミスってる。
聖姫さまは続けて、
「とにかく 竜戦士さまは、当分の間は動けません。
試練を受けることができないのはもちろん、次に竜騎将軍が来たときも、戦うことはできないでしょう」
オッサンが震えながら、
「勝ち目がないから逃げましょうです」
わたしは一瞬 全面的に賛成したくなったけど、そこをグッとこらえた。
聖姫さまが そんな わたしを見て、
「聖女さま、そんなに耐え忍んでおられて。竜戦士様のことをそんなに心配されるとは。まさに聖女にふさわしい お方」
なんか誤解していたけど、それもスルーして、とにかく考える。
精霊将軍が携帯電話で魔兵将軍親子に連絡していた。
二人は急いでここに向かっているとのことだけど、次の竜騎将軍の襲撃には間に合わないだろう。
正直 勝ち目はない。
だけど、一つだけ事態を解決する方法がある。
それは、
「みなさん。わたしは竜騎将軍を説得したいと思います」
みんな驚きの眼を向けた。
わたしの女の勘が、竜騎将軍は真性のBLではないと告げていた。
BLに走ったのは何か理由があるはず。
それを聞き出すことができれば、説得の糸口になるかも知れない。
中隊長さんが戦えない今、わたしがなんとかする。
わたしは竜騎将軍の正面に立つ覚悟を決めた。
ダンディーなオジサマをノーマルにしたらわたしにもチャンスがあるかも知れないし。
魔兵将くんが尊敬の眼差しで、
「さすがです、聖女さま。やっぱり貴女は聖女にふさわしい方です」
「当然よ。清く正しくビューティホーな私の身と心がなんかそんな感じの……」
「あんたマジで良心の呵責がないの」
三日後、中隊長さんの身体がほとんど回復しないまま、竜騎将軍が完全回復して戻ってきた。
「予想以上に早いですね」
わたしが聞くと、竜騎将軍が応える。
「竜の祠と言う場所がある。そこでは 竜や 竜の力を持った者の回復が早くなるのだ。新しき竜戦士にも、大魔王様に付けば教えてやったのだがな」
ともかく説得開始だ。
「戦う前に貴方と話がしたいのです」
「話だと?」
「貴方はなぜ大魔王に付いたのですか? 貴方は人間が悪だと言いました。そう断言する理由があるはず。それはなんです?」
竜騎将軍は語り始めた。
百年前。
俺はこの国、聖王国で生まれた。
そして優れた戦士となり、勇者となった俺は、現在の魔王とは別の魔王と戦った。
世界を救おうなどと大それた事を考えていたわけではなかった。
まして英雄になろうなどという利己的な理由でもない。
俺が救いたかったのは彼女だった。
俺の幼馴染み。
そして俺の初恋。
魔王討伐の旅に出るとき、俺は彼女に誓った。
必ず魔王を倒し世界を平和にしてみせる。
だから帰ったら結婚しようと。
その間、聖王国の王は約束した。
俺の代わりに彼女を守ると。
そして長い旅の果て、死闘を繰り広げた末に、俺は魔王を倒し、故郷へと戻った。
俺を王が呼んだ。
そして見せつけられた。
彼女が王と交わっている姿を。
王は俺に言った。
「ご苦労だったな。もう帰って良いぞ。おまえは用済みだ。ブヒャヒャヒャヒャヒャ」
彼女は言った。
「ヘタレの貴方は一生童貞だろうけど、私がこの人のモノをくわえ込んでるのをオカズに、一生一人寂しくシコシコしててねぇ」
俺は言葉を失い、その場を立ち去るしかなかった。
王はこの話を国中に広めた。
俺は魔王を倒した勇者の栄光から 一転、恋人を寝取られたダメ男の烙印を押され、どこへ行っても笑いものにされた。
王は初めから俺をこうするつもりだった。
王の地位を脅かされる前に、栄光から笑い物へと陥れる、魔王を倒すためだけの捨て駒として、俺を使うつもりだった。
彼女は そんな王に媚びていた。
民も誰一人として俺に味方する者はいなかった。
俺は人間に絶望し、魔界の辺境で隠遁生活をしていた。
そして八十年ほどたって、大魔王様が声をかけてくださった。
女など所詮 すぐに快楽に溺れる惰弱な存在。
真実の愛を教えよう と。
「彼女も、王も、民衆も、俺を利用するだけ利用して、用済みになったとたんゴミのように捨てた。
そんな存在を悪と呼ばずして なんと呼ぶのだ」
わたしは脂汗が出ていた。
なんというか、NTRがリアルに起きると、ドン引き物というかなんというか。
っていうか、大魔王側に付いた理由がマジでかなりキッツイんだけど、これをどうやって説得すれば良いのよ?
ああぁー、頭を抱えたくなってきた。
みんなに説得してみせるなんて啖呵切るんじゃなかった。
落ち着け わたし。
呼吸を整えよう。
ヒッヒッフー。
そうよ、わたしは天才軍師の才能を持つ 出来る女。
前世の十八禁同人誌作家の知識をフル活動させるのよ。
そう、NTRで唯一ハッピーエンドになれる方法がある。
その方向で話を進めよう。
後はアドリブで。
「今の話で理解できました。
貴方は愛というものを思い違いしていると。
貴方は彼女を愛していなかった。
貴方は彼女に愛されたかったのです。
貴方は、彼女はどんなことがあっても、貴方を愛し続けると思っていた。
どんなことがあっても、誰にも体を許さないだろうと思い込んでいた。
でも人にはそれぞれ事情があります。
ただの町娘に過ぎない彼女が、王に逆らうことなどできるはずがない。
彼女はただ耐えるしかなかった。
貴方が帰ってくるまで、王に慰め物にされるのを、黙って耐えるしかなかった。
そして貴方が助けてくれると信じていた。
貴方が助けてくれると信じることだけが、彼女の希望だった。
でも、貴方は彼女に絶望した。
王に慰め物にされていた彼女を、貴方は穢れた者として見たのです。
その目を、その心を見抜かれ、彼女の心は折れてしまった。
彼女が快楽落ちしたのは、貴方の脆弱な心が原因です。
奪われたのなら、奪い返せば良かったのです。
寝取られたのなら、寝取り返せば良かったのです。
勇者の力を持っている貴方なら、力で彼女を王から奪い返すなど簡単だったはず。
その後で、彼女をゆっくりと癒やし、真実の愛を育んでいけば良かった。
でも貴方はなにもしなかった。
黙ってその場から去った。
快楽の悲鳴を上げる彼女を放置して、逃げたのです。
貴方は彼女を幸せにしてあげたがったんじゃない。
貴方が彼女に幸せにして欲しがっていた。
貴方は甘えた子供と同じだったのよ!」
わたしのセリフに竜騎将軍は怒りの表情になる。
「貴様に彼女のなにがわかる!」
「私も同じだからです。
私も陵辱された身です。
いっそ快楽に落ちてしまえば、どれだけ楽だろうかと思いました。
でも、そこから救い出してくれた人がいる。
わたしと彼女は同じ。
異なるのは、貴方は彼女を見捨て、彼らはわたしを助けてくれた。
そして、わたしは女神に聖女と認められました」
「ぐうぅ……」
竜騎将軍はうめき声を上げて、そして沈黙した。
そしてわたしの眼を真っ直ぐに睨んだ。
わたしは臆することはなかった。
竜騎将軍はどんなに強くても、その心が伴っていない。
その証拠に、竜騎将軍は言い返せなくなっている。
しばらくして、竜騎将軍は眼光をやわらげた。
「……おまえは、穢されても なお、清らかなのだな」
わたしは胸を張って応える。
「そのとおりです。わたしを愛してくれる みんながいるから」
まあ 穢されたってこと自体が大嘘なんだけど。
竜騎将軍は、
「しばらく自分の行いを考えるとしよう」
そして背を向けて去って行った。
こうして竜騎将軍との戦いは避けられた。
魔兵将くんは わたしの手に手を添えてきた。
「聖女さま。僕も貴女を愛しています。もし同じ事が貴方に起きたら、僕は必ず貴女を助けます」
「んー、魔兵将くんってば良い子ねー」
頭なでなで。
ふと 悪友を見ると、地上最強生物の如き物凄い形相でわたしを睨んでいた。
「な、なによ? 怖い顔して どうしたのよ?」
「貴様ッ! 今の魔兵将くんのセリフの意味を全く理解してないなッ! そして理解できていないがゆえに今回は見逃してやろうッ! だがッ! 次は 見逃さぬから そう思えいッッ!!」
なんの話してるのよ?
「パパからお電話だよ。パパからお電話だよ」
魔兵将くんの携帯電話の着信音だ。
相手はもちろんお父さん。
魔兵将くんは電話に出る。
「もしもし、パパァ。そうなんだぁ、今 聖女さまと一緒なのぉ。うん、わかったぁ。すぐに戻るねぇ。あ、そうそう。僕、ついに聖女さまに告白しちゃったぁ。詳しいことは帰ってからお話しするからねぇ」
魔兵将くんは電話を切ると、
「それじゃ 聖女さま。父が呼んでいるので、僕は帰ります。告白の答えは 今度 聞かせて貰いますから」
「うん、分かった」
そして魔兵将くんは帰った。
ところで、告白の返事って何のことだろう?
まあ、いいか。
「ふー」
魔兵将くんが帰って、わたしは一息吐く。
「いやー、魔兵将くんがいるから、話にオチとかつけられなくて苦労したわ。あの子には知られたくないし」
「ああ、やっぱり くだらないオチがあったんだ」
次回でオチがつきます。
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