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三章・いきなりですが冒険編

人選 間違えてる

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 ……続き。


 竜騎将軍が 中隊長さんと兄貴に とどめを刺そうとした その時、無数の魔法の炎の矢が竜騎将軍に向かって放たれた。
「むぅっ!」
 竜騎将軍はそれを剣で全て迎撃した。
 炎の矢を放った人物を見て、わたしは思わず歓喜の声。
「精霊将軍さん!」
 別行動中の精霊将軍がなぜここに居るのか。
 後で聞いたのだけど、魔兵将くんが無事 炉歩徒を手に入れたので、それを知らせるためと、そして聖殿における試練をバックアップできるのではないかという話を伝えるために、精霊将軍を行かせたとか。
 ちなみに携帯電話は電波が届いていなかったとか。
 それはともかく、わたしは安心した。
 精霊将軍は、上位精霊と融合すれば、魔王よりも強くなる。
 それなら竜騎将軍を倒すことができるはず。
 だけど、精霊将軍は竜騎将軍に険しい表情を向けていて、なんか変な汗が滲み出ていた。
「ど、どうしたんですか? もしかして 今 トラブル中で、精霊と融合することができなくなっているとか、そんな感じですか?」
「いや、ちゃんと融合できる」
「なら 融合して、竜騎将軍をちゃちゃっと倒しちゃってださい」
 精霊将軍は険しい表情のまま、
「無理だ」
「なぜに!?」
「精霊と融合しても、私は竜騎将軍には勝てん。理由は単純だ。竜騎将軍の方が強いからだ」
「貴方は一時的に魔王よりも強くなるのにですか!?」
「大魔王軍の真の最強は竜騎将軍なのだ。
 大魔王が魔王を元帥にしたのは、かつて魔王軍を統率していた経歴を評価してのこと。
 だが、竜騎将軍は基本的に単独行動で、動かすとしても少人数。
 だから 大魔王軍の指揮を取らせるのは魔王にしたのだ。
 しかし、一対一での闘いならば、竜騎将軍が上。
 竜騎将軍に勝てる者など、誰もいない」
 なんか大ピンチ!
 竜騎将軍が精霊将軍に、
「そこまで分かっているのならば、なぜ助けに入った?」
「妹に聖女たちを助けて欲しいとお願いされたのでな。姉として妹の願いは聞いてやらねば。
 たとえ、負けると分かっていてもだ!」
 精霊将軍が風の上位精霊を召喚し融合した。
竜巻トルネード!」
 精霊将軍が巨大な竜巻で竜騎将軍を攻撃した。
 なるほど。
 倒すというより、相手を遠くへ吹き飛ばして、その間に逃げるという算段ね。
 だけど、
「どうした? 精霊将軍の力は この程度か?」
 竜騎将軍は吹き飛ばされることなく、その場にとどまっていた。
 竜騎将軍の体から吹き出している闘気が竜巻の接近を阻んでいて、それで踏みとどまっているみたい。
 ってことは、どちらが先に力尽きるかの勝負になるんだけど、精霊将軍さんって精霊と融合していられるのに時間制限があるのよね。
 それに、精霊将軍さんは見るからに限界突破の勢いでフルパワーって感じなんだけど、竜騎将軍は明らかに余裕がある。
 この勝負、間違いなく精霊将軍が負ける。
 どうしよう?
「聖女さま、お耳を」
 そこに聖姫さまが耳打ちしてきた。
「聖女の力については存じております。その力を私に使ってください」
「え? でも、聖女の力は、秘められた力がある人じゃないと効果がないんです」
 聖姫さまには秘められた力がないのだ。
「わかっています。使い道は別にあります。詳しく話している時間はありません。早く私に力を」
 意味は分からないけど、聖姫さまには作戦があるみたいだから、とにかくわたしは聖女の力を使った。
 聖女の力を受けた聖姫さまの体が光を発するが、それだけで、なにかの力が覚醒したと言うことは やはりなかった。
 だけど、聖女の力が聖姫さまの体の中に滞留している状態になっている。
 どうして聖女じゃない聖姫さまが、そんな高度で難しい使い方ができるのよ?
 後で聞いたのだけど、聖姫に選ばれる女性は、聖女になるための修行を積んでいる者の中から選ばれるそうだ。
 だから、聖女の力をある程度使えるとか。
 わたしはこの話を聞いたとき、心の中で叫んだ。
 あのロリ女神、絶対に人選 間違えてる!


 聖姫さまは兄貴と中隊長さんのところへ。
 秘められた力が覚醒状態にある二人に、聖姫さまはさらに聖女の力を分散して行使した。
 力が分散されたから、過剰になることなく、二人の力がさらにアップした。
「すごいでござる。力がさらにみなぎってきたござる」
「これなら奴にダメージを与えられる」
 聖姫さまが、
「ですが、その状態での攻撃は一度しかできないでしょう。その一撃で倒さなくてはなりません」
 二人はうなずくと、精霊将軍の隣へ。
電撃爆雷ライトニングエクスプロージョン!」
竜撃斬破ドラゴンバスター!」
 精霊将軍が起こしている竜巻に、雷の爆発と、竜の力による斬撃の衝撃波が加わる。
 三つの攻撃が合わさり、竜騎将軍に届いた。
「ヌゥオオオ!!」
 すさまじい力が吹き荒れた。


 力の奔流が収まると、そこには膝を付いている竜騎将軍。
 あれだけの攻撃をまともに受けたのに、まだ無事だ。
「むぅ……俺としたことが、敵の力を侮っていたか」
 落ち着け。
 覇気が衰えていない竜騎将軍だけど、大ダメージを受けたのは間違いない。
 今なら倒せるかも。
「みなさん! 今のうちに攻撃してください!」
 このチャンスを逃すな。
 しかし竜騎将軍は、
「そういうわけにはいかん。今の俺の状態で戦うのは危険。ここは一度 引かせて貰う」
 中隊長さんが、
「逃がすと思うか!?」
「見逃がすしかないのだよ」
 突然、甲高い耳鳴りが始まった。
 それは最初は小さく、だけど徐々に大きくなり、そして耳を塞ぎたくなるほどの大きさになる。
「竜騎将軍がなにかしています! 早く倒して!」
 だけど、みんな耳を塞いでいて、行動不能状態になっている。
 そして なにより 中隊長さんが、
「うぐぐぐ……グガアアアアア!!」
 悲鳴を上げて苦しみだした。
 聖姫さまが、
「いけない! 竜の力を共鳴させて体の内部から攻撃しています! 竜騎将軍を早く止めてください!」
「ラ、雷光電撃ライトニングボルト!」
大気切断ウィンドカッター!」
 兄貴と精霊将軍が竜騎将軍を攻撃し、竜騎将軍がそれを迎撃したことによって、耳鳴りが止まった。
 でも、中隊長さんが、
「……あ……」
 地面に倒れて動かなくなってしまった。
 竜騎将軍は、
「これで当分の間は竜戦士は戦えぬ。さて、どうする? これでも戦うか?」
 誰も答えなかった。
「では 引かせて貰おう。しかし、俺はすぐに戻ってくるぞ」
 竜騎将軍は去って行った。


 魔兵将くんはシリアスな表情で聞いていた。
「竜騎将軍……そこまで恐ろしい男だったとは」
 わたしは竜騎将軍を思い出しながら、
「ええ、本当に素敵な、いえ そうじゃなくて、ダンディーな、いえ そうじゃなくて、美中年な、いえ そうじゃなくて、渋いイケメンな、いえ そうじゃなくて……」
 悪友があきれたように、
「あんた 本音が ダダ漏れよ」
 魔兵将くんがシリアスな表情なまま、
「僕がいれば、中隊長さんを そんなことにはさせなかったのに」
「なぜに こいつの本音に気付かないのか、魔兵将くんの純情さに萌える私。
 ねえ、ちょっと寝室 使わせてくれない」
「使わせるわけねえだろ。っていうかなにに使う気だ」


 今回はちょっとオチがついて続く……
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