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いざ、ベルサイユ宮殿へ!
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ベルサイユ宮殿に向かうためにバスに乗り込んだ美玲達ツアー参加者。
この日はガイドとして仁美も同行する。
「皆さん、フランスと言えばベルサイユ宮殿のイメージがある人もいると思いますが、実はベルサイユ宮殿は割と歴史が浅いんですよ。何と、百八年くらいしか使われていないのです。現在は人生百年時代と言われていますが、人間の寿命プラスアルファの年数ですね。ルイ十四世がパリからベルサイユに拠点を移する前は、ルーブル宮殿が使われていました。皆さんが昨日行った美術館があった場所ですね」
(……そういえば、昨日そんな話聞いたっけ)
美玲は車窓からの景色を見ながら、仁美の解説を聞いていた。
◇◇◇◇
そしていよいよベルサイユ宮殿が見えてきた。
(もうすぐベルサイユ宮殿……!)
美玲はワクワクと心躍らせていた。
バスから降りる美玲達。
開けた土地の少し奥に、コの字型の壮麗な宮殿が見えた。
よく晴れた青い空の下、宮殿の屋根が煌めく様子はまさに当時の王侯貴族の栄華を象徴しているかのようである。
「ベルサイユ宮殿……本物だ……!」
美玲は目を大きく見開き固まっていた。
門の外からでも豪華絢爛で煌びやかな雰囲気が伝わってきて、十分心満たされるものがあった。
「おいおい岸本さん、まだ中に入ってもないのに。まだまだこれからだぞ」
隣で誠一は苦笑していた。
その後、美玲は誠一に写真を撮ってもらい、ベルサイユ宮殿へ入るのであった。
◇◇◇◇
厳重なセキュリティチェックを抜け、階段を上る。
目に飛び込んでくる豪華絢爛で煌びやかな部屋、天井の絵画、所々にある百合をモチーフにしたフランス王家の紋章、価値ある調度品。
美玲は見えるもの全てに心を奪われていた。
(本当にここで過ごした王族や貴族達がいるんだ……)
かつてここで繰り広げられた華やかな舞踏会や宮廷生活に思いを馳せた。
「はい、ここが有名な鏡の間です。その名の通り壁一面鏡で覆われています」
先頭を行く仁美がツアー参加者達にそう説明する。
ちなみに添乗員の明美は最後尾にいる。
美玲は目を輝かせる。
壁一面の鏡、そして無数のシャンデリア。窓からの光が反射し、部屋全体が光の海と化している。
「すごい……」
満足そうな表情の美玲。これ以上の言葉が出てこなかった。
もちろん写真を撮ることを忘れてはいない。
誠一と互いに写真の撮り合いや、二人で写る写真も撮ってもらった。
フランスの華やかなイメージそのもののベルサイユ宮殿。過去と現在が交錯する場所である。
美玲は圧倒されながらも、自身がこの空間にいることに対し、不思議な感覚になっていた。
その後、美玲達は鏡の間を抜け、次の部屋へと向かった。
マリー=アントワネットも使用したと言われている王妃の寝室。
豪華絢爛、その上華やかで可愛らしい雰囲気の部屋である。
赤を基調とした重厚な王の寝室とは雰囲気がガラリと変わる。
「皆さん、可愛らしい部屋ですよね。かの有名なマリー=アントワネットもここで過ごしていたんですよ」
仁美がそう解説する。
優美で繊細な装飾。そして壁には豪華な織物や絵画が飾られ、天井には美しいフレスコ画が施されている。
(こんなに豪華な部屋で暮らしてたんだ……。私なら緊張して落ち着かないかもしれないけど……一度はこういう場所でも生活してみたいかも)
美玲は少しだけベルサイユ宮殿での生活を想像してうっとりとしていた。
◇◇◇◇
ベルサイユ宮殿内部を一通り回った後は、それぞれ思い思いにお土産を選んでいた。
「あれ? 岸本さん、お土産買わないの?」
誠一がお土産を見ているだけの美玲にそう声をかける。
「いやあ……今までは自暴自棄になってたからもう気になったやつどんどん買ってたけどさ……クレカ請求額が何か怖くなって……」
ハハっと苦笑する美玲。
この先の人生が続くとなれば、今までみたいに爆買いしていたら生活が苦しくなるのだ。
「今更じゃん。せっかく楽しみにしてたベルサイユ宮殿だからさ、今までみたいに心置きなく買えばいいと思うぞ。まあ破産しない程度にだけど」
フッと笑う誠一。
「……まあ……そっか」
美玲は少し悩みつつも、気になったものを手に取ってみた。
「……今まではお菓子とか中心だったけど、食器買って普段使いにしてみようかな」
「おお、いいんじゃないか。気に入ったものを使ってると毎日楽しいと思うぞ」
ニッと白い歯を見せる誠一であった。
「そうだね。これ買ってみようかな」
美玲は食器を手に取った。
そしてレジへ並ぼうとした時、品物の前で悩んでいる朱理の姿が目に入った。
「朱理ちゃん、どれにするか悩んでるの?」
「美玲さん……。はい。実は同棲中の彼氏へのお土産なんですけど、彼紅茶が好きなので、どっちがいいかなと思っていまして」
おっとりと微笑む朱理。
「朱理ちゃん、彼氏いるんだ。お嬢様って聞いてたから、そういうの家が厳しそうって勝手に思ってた」
美玲は意外そうに目を見開いていた。
「実家は単に経済的に裕福なだけですよ。一番上の兄も二番目の兄も恋愛結婚していますし。ちなみにすぐ上の姉はアメリカ人と国際結婚して今アメリカにいます。ちなみに、家族でニースに行く時、兄夫婦も毎回ではないですが参加してる時があります。たまに姉夫婦もアメリカから来たりしてますよ」
ふふっと笑う朱理。
どうやら四人兄弟の末っ子らしい。
「何か……本当に意外」
美玲はまだ驚きを隠せなかった。
「今回は彼氏と来なかったんだ」
「はい。彼は長時間フライトと外国の料理が合わないみたいなんです。大学時代も長期休みに一緒にドイツに行ったんですけど、やっぱり駄目みたいで」
思い出しては苦笑する朱理。
「あ、これが彼氏なんですけど」
朱理はスマートフォンに入っている写真を見せてくれた。
眼鏡をかけた知的な好青年である。
「え、普通にカッコいい」
美玲はクスッと笑う。
「ん? 何見てんの?」
そこへ凛子もやってきた。
「朱理ちゃんの彼氏の写真」
「へえ、朱理ちゃん、彼氏おるんや。わあ、カッコいいな。やっぱり眼鏡をかけたらインテリっぽい感じになるけど、うちの晃ちゃんは……」
凛子は朱理の彼氏と自身の彼氏である晃樹を見比べて苦笑した。
同じ眼鏡でも、晃樹はインテリではなくひょうきんに見えてしまう。
「ええ、宮本さんも優しそうでいいと思いますよ」
朱理はふふっと穏やかに笑う。
「まあそうなんよ。晃ちゃん、優しくておもろいんよなあ」
凛子は少し離れた場所にいる晃樹を見て愛おしげに目を細めていた。
(何か凛ちゃん可愛い)
美玲はクスッと笑うのであった。
その後、会計を済ませた美玲はお土産の隣にパリで有名なマカロンのお店を発見した。
こちらには初日からやたらとキラキラしたオーラを放っていた新婚の高橋夫妻がショーウィンドウの前で悩んでいた。
「佳奈、これも美味しそう」
「本当だ。何味だろう? フラ……フランボワーズ? フランボワーズって木苺だっけ?」
「多分そう。あ、下に英語表記もある。こっちのは英語でストロベリーだから苺だな」
「苺欲しいなあ。それと、キャラメルとバニラも。後、ローズも」
「あ、佳奈、後ろ並んでるから先に行ってもらおう」
夫である悠人が美玲の姿に気付いたようだ。
「本当だ。すみません、私達時間かかりそうなのでお先にどうぞ」
申し訳なさそうに微笑む妻の佳奈である。
「すみません、ありがとうございます」
美玲は軽く会釈をし、会計に並んだ。
会計の際、「ボンジュール」とカタコトのフランス語で挨拶をし、後はカタコトの英語でローズとキャラメルとバニラとピスタチオのマカロンを注文する美玲であった。
その後、屋内ではなく外で食べるよう店員から指示があったので、美玲は屋外でマカロンを食べていた。
「美味そうだな」
お土産を買い終えた誠一がやってくる。
「うん。美味しい」
美玲は満面の笑みであった。
その笑みを見て、誠一はフッと嬉しそうに笑っていた。
この日はガイドとして仁美も同行する。
「皆さん、フランスと言えばベルサイユ宮殿のイメージがある人もいると思いますが、実はベルサイユ宮殿は割と歴史が浅いんですよ。何と、百八年くらいしか使われていないのです。現在は人生百年時代と言われていますが、人間の寿命プラスアルファの年数ですね。ルイ十四世がパリからベルサイユに拠点を移する前は、ルーブル宮殿が使われていました。皆さんが昨日行った美術館があった場所ですね」
(……そういえば、昨日そんな話聞いたっけ)
美玲は車窓からの景色を見ながら、仁美の解説を聞いていた。
◇◇◇◇
そしていよいよベルサイユ宮殿が見えてきた。
(もうすぐベルサイユ宮殿……!)
美玲はワクワクと心躍らせていた。
バスから降りる美玲達。
開けた土地の少し奥に、コの字型の壮麗な宮殿が見えた。
よく晴れた青い空の下、宮殿の屋根が煌めく様子はまさに当時の王侯貴族の栄華を象徴しているかのようである。
「ベルサイユ宮殿……本物だ……!」
美玲は目を大きく見開き固まっていた。
門の外からでも豪華絢爛で煌びやかな雰囲気が伝わってきて、十分心満たされるものがあった。
「おいおい岸本さん、まだ中に入ってもないのに。まだまだこれからだぞ」
隣で誠一は苦笑していた。
その後、美玲は誠一に写真を撮ってもらい、ベルサイユ宮殿へ入るのであった。
◇◇◇◇
厳重なセキュリティチェックを抜け、階段を上る。
目に飛び込んでくる豪華絢爛で煌びやかな部屋、天井の絵画、所々にある百合をモチーフにしたフランス王家の紋章、価値ある調度品。
美玲は見えるもの全てに心を奪われていた。
(本当にここで過ごした王族や貴族達がいるんだ……)
かつてここで繰り広げられた華やかな舞踏会や宮廷生活に思いを馳せた。
「はい、ここが有名な鏡の間です。その名の通り壁一面鏡で覆われています」
先頭を行く仁美がツアー参加者達にそう説明する。
ちなみに添乗員の明美は最後尾にいる。
美玲は目を輝かせる。
壁一面の鏡、そして無数のシャンデリア。窓からの光が反射し、部屋全体が光の海と化している。
「すごい……」
満足そうな表情の美玲。これ以上の言葉が出てこなかった。
もちろん写真を撮ることを忘れてはいない。
誠一と互いに写真の撮り合いや、二人で写る写真も撮ってもらった。
フランスの華やかなイメージそのもののベルサイユ宮殿。過去と現在が交錯する場所である。
美玲は圧倒されながらも、自身がこの空間にいることに対し、不思議な感覚になっていた。
その後、美玲達は鏡の間を抜け、次の部屋へと向かった。
マリー=アントワネットも使用したと言われている王妃の寝室。
豪華絢爛、その上華やかで可愛らしい雰囲気の部屋である。
赤を基調とした重厚な王の寝室とは雰囲気がガラリと変わる。
「皆さん、可愛らしい部屋ですよね。かの有名なマリー=アントワネットもここで過ごしていたんですよ」
仁美がそう解説する。
優美で繊細な装飾。そして壁には豪華な織物や絵画が飾られ、天井には美しいフレスコ画が施されている。
(こんなに豪華な部屋で暮らしてたんだ……。私なら緊張して落ち着かないかもしれないけど……一度はこういう場所でも生活してみたいかも)
美玲は少しだけベルサイユ宮殿での生活を想像してうっとりとしていた。
◇◇◇◇
ベルサイユ宮殿内部を一通り回った後は、それぞれ思い思いにお土産を選んでいた。
「あれ? 岸本さん、お土産買わないの?」
誠一がお土産を見ているだけの美玲にそう声をかける。
「いやあ……今までは自暴自棄になってたからもう気になったやつどんどん買ってたけどさ……クレカ請求額が何か怖くなって……」
ハハっと苦笑する美玲。
この先の人生が続くとなれば、今までみたいに爆買いしていたら生活が苦しくなるのだ。
「今更じゃん。せっかく楽しみにしてたベルサイユ宮殿だからさ、今までみたいに心置きなく買えばいいと思うぞ。まあ破産しない程度にだけど」
フッと笑う誠一。
「……まあ……そっか」
美玲は少し悩みつつも、気になったものを手に取ってみた。
「……今まではお菓子とか中心だったけど、食器買って普段使いにしてみようかな」
「おお、いいんじゃないか。気に入ったものを使ってると毎日楽しいと思うぞ」
ニッと白い歯を見せる誠一であった。
「そうだね。これ買ってみようかな」
美玲は食器を手に取った。
そしてレジへ並ぼうとした時、品物の前で悩んでいる朱理の姿が目に入った。
「朱理ちゃん、どれにするか悩んでるの?」
「美玲さん……。はい。実は同棲中の彼氏へのお土産なんですけど、彼紅茶が好きなので、どっちがいいかなと思っていまして」
おっとりと微笑む朱理。
「朱理ちゃん、彼氏いるんだ。お嬢様って聞いてたから、そういうの家が厳しそうって勝手に思ってた」
美玲は意外そうに目を見開いていた。
「実家は単に経済的に裕福なだけですよ。一番上の兄も二番目の兄も恋愛結婚していますし。ちなみにすぐ上の姉はアメリカ人と国際結婚して今アメリカにいます。ちなみに、家族でニースに行く時、兄夫婦も毎回ではないですが参加してる時があります。たまに姉夫婦もアメリカから来たりしてますよ」
ふふっと笑う朱理。
どうやら四人兄弟の末っ子らしい。
「何か……本当に意外」
美玲はまだ驚きを隠せなかった。
「今回は彼氏と来なかったんだ」
「はい。彼は長時間フライトと外国の料理が合わないみたいなんです。大学時代も長期休みに一緒にドイツに行ったんですけど、やっぱり駄目みたいで」
思い出しては苦笑する朱理。
「あ、これが彼氏なんですけど」
朱理はスマートフォンに入っている写真を見せてくれた。
眼鏡をかけた知的な好青年である。
「え、普通にカッコいい」
美玲はクスッと笑う。
「ん? 何見てんの?」
そこへ凛子もやってきた。
「朱理ちゃんの彼氏の写真」
「へえ、朱理ちゃん、彼氏おるんや。わあ、カッコいいな。やっぱり眼鏡をかけたらインテリっぽい感じになるけど、うちの晃ちゃんは……」
凛子は朱理の彼氏と自身の彼氏である晃樹を見比べて苦笑した。
同じ眼鏡でも、晃樹はインテリではなくひょうきんに見えてしまう。
「ええ、宮本さんも優しそうでいいと思いますよ」
朱理はふふっと穏やかに笑う。
「まあそうなんよ。晃ちゃん、優しくておもろいんよなあ」
凛子は少し離れた場所にいる晃樹を見て愛おしげに目を細めていた。
(何か凛ちゃん可愛い)
美玲はクスッと笑うのであった。
その後、会計を済ませた美玲はお土産の隣にパリで有名なマカロンのお店を発見した。
こちらには初日からやたらとキラキラしたオーラを放っていた新婚の高橋夫妻がショーウィンドウの前で悩んでいた。
「佳奈、これも美味しそう」
「本当だ。何味だろう? フラ……フランボワーズ? フランボワーズって木苺だっけ?」
「多分そう。あ、下に英語表記もある。こっちのは英語でストロベリーだから苺だな」
「苺欲しいなあ。それと、キャラメルとバニラも。後、ローズも」
「あ、佳奈、後ろ並んでるから先に行ってもらおう」
夫である悠人が美玲の姿に気付いたようだ。
「本当だ。すみません、私達時間かかりそうなのでお先にどうぞ」
申し訳なさそうに微笑む妻の佳奈である。
「すみません、ありがとうございます」
美玲は軽く会釈をし、会計に並んだ。
会計の際、「ボンジュール」とカタコトのフランス語で挨拶をし、後はカタコトの英語でローズとキャラメルとバニラとピスタチオのマカロンを注文する美玲であった。
その後、屋内ではなく外で食べるよう店員から指示があったので、美玲は屋外でマカロンを食べていた。
「美味そうだな」
お土産を買い終えた誠一がやってくる。
「うん。美味しい」
美玲は満面の笑みであった。
その笑みを見て、誠一はフッと嬉しそうに笑っていた。
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