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エヴグラフの反応、自覚する
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数日後。
ルフィーナはエヴグラフに迎えに来てもらい、宮殿の図書館に向かった。
「グラーファ様、お忙しい中本当にありがとうございます」
「礼には及ばない。俺がやりたくてやっでいることだ。宮殿の図書館に着いたらルフィーナ嬢は自由にしてくれて構わない。簡単な書類仕事が終われば君を迎えに行く。執務室でまた話をしよう」
エヴグラフはフッと優しげに表情を綻ばせている。
「はい。ありがとうございます。楽しみにしております」
ルフィーナはふわりと柔らかな表情になった。
(グラーファ様と執務室でお話する時に渡そうかしら)
ルフィーナはこっそり持って来たエヴグラフへのプレゼントにそっと触れた。
その後、ルフィーナは宮殿の図書館で興味のある本を片っ端から読んでいた。
アシルス帝国の文学作品や他国の文学作品、技術書や領地経営に関する本など、読んだジャンルは様々である。
「ルフィーナ嬢はいつも読書に集中しているな」
背後からエヴグラフの声が聞こえたので、ルフィーナは本を閉じてゆっくりと振り返る。
「ええ。読書は夢中になれますわ」
ルフィーナはクスッと楽しそうに笑った。
「準備が出来たから迎えに来た」
エヴグラフはそっとルフィーナに手を差し出す。
「ありがとうございます」
ルフィーナはその手を取り、エヴグラフの執務室に向かった。
今回出された紅茶はローズティー。そしてブルーベリージャムと蜂蜜ケーキが用意されていた。
どれもルフィーナの好物である。
「いつも私の好物が用意されているので、実はこの時間がとても楽しみになっておりました」
ルフィーナは品良く柔らかに微笑む。
ペリドットの目はどことなくキラキラとしていた。
「ならば用意した甲斐があった。まあ作っているのは宮殿のシェフ達だが」
エヴグラフは嬉しそうにラピスラズリの目を細めた。
ルフィーナとエヴグラフは早速お菓子や紅茶を楽しみながら、読んだ本について語る。
エヴグラフと過ごす時間は嫌なことを全て忘れることが出来る。ルフィーナはこの時間を心から楽しんでいた。
(そろそろお渡ししたいわね)
ルフィーナはエヴグラフへのプレゼントにチラリと目を向けた。
「ルフィーナ嬢、何かあったか?」
エヴグラフは不思議そうに首を傾げている。
ルフィーナは改めて、エヴグラフに体を向ける。
「実は、グラーファ様にお渡ししたいものがございます」
「ルフィーナ嬢が俺に。それは嬉しいな」
エヴグラフは心底嬉しそうに破顔した。
ルフィーナは丁寧にラッピングされた袋をエヴグラフに渡す。
「グラーファ様には、いつも色々と良くしていただいておりますので、ささやかながらそのお礼でございます。もし不要でしたら、捨ててもらっても構いませんので」
ルフィーナは少しだけ自信なさげである。
「ルフィーナ嬢からもらったものが不要なものなわけがない」
エヴグラフは宝物を扱うかのようにルフィーナからのプレゼントを受け取った。
「中身を開けてみても良いだろうか?」
「どうぞ」
エヴグラフの言葉に、ルフィーナはコクリと頷いた。
丁寧に袋を開けるエヴグラフ。
白い百合と縁に白い花々が刺繍された、紺色のクラヴァットである。
「素敵な刺繍だな。これはもしかしてルフィーナ嬢が刺繍したのか?」
エヴグラフは感心したようにラピスラズリの目を輝かせている。
「はい」
ルフィーナはエヴグラフから目を逸らして、コクリと頷いた。
「ルフィーナ嬢が自ら刺繍を……これは俺の宝物にしよう」
エヴグラフは宝物を扱うかのように、クラヴァットをそっと胸に当てた。
「グラーファ様にそう仰っていただけて、大変光栄でございます」
ルフィーナはホッと肩を撫で下ろした。
作った甲斐があったと心から感じた。
まるで全てが報われたかのような気分である。
ルフィーナの胸の奥から温かく柔らかな感情が込み上げていた。
(この気持ちは……)
ルフィーナはその感情の名前に気付き始めていた。
思わずエヴグラフから目を逸らしてしまう。
ルフィーナの頬はほんのりと赤く染まっていた。
「ルフィーナ嬢」
凛として低く、それでいて優しいエヴグラフの声。その声で名前を呼ばれ、ルフィーナの心臓はトクリと跳ねた。
ルフィーナはゆっくりとエヴグラフに目を向ける。
「似合うだろうか?」
エヴグラフはルフィーナからプレゼントされたクラヴァットを早速着用していた。
ラピスラズリの目の輝きが増している。
「はい」
ルフィーナはゆっくりと頷き、花が咲いたように表情を綻ばせた。
ルフィーナのペリドットの目と、エヴグラフのラピスラズリの目はキラキラとしており、二人の視線は真っ直ぐ絡み合う。
ルフィーナはこの時間がずっと続いて欲しいと願うのであった。
ルフィーナはエヴグラフに迎えに来てもらい、宮殿の図書館に向かった。
「グラーファ様、お忙しい中本当にありがとうございます」
「礼には及ばない。俺がやりたくてやっでいることだ。宮殿の図書館に着いたらルフィーナ嬢は自由にしてくれて構わない。簡単な書類仕事が終われば君を迎えに行く。執務室でまた話をしよう」
エヴグラフはフッと優しげに表情を綻ばせている。
「はい。ありがとうございます。楽しみにしております」
ルフィーナはふわりと柔らかな表情になった。
(グラーファ様と執務室でお話する時に渡そうかしら)
ルフィーナはこっそり持って来たエヴグラフへのプレゼントにそっと触れた。
その後、ルフィーナは宮殿の図書館で興味のある本を片っ端から読んでいた。
アシルス帝国の文学作品や他国の文学作品、技術書や領地経営に関する本など、読んだジャンルは様々である。
「ルフィーナ嬢はいつも読書に集中しているな」
背後からエヴグラフの声が聞こえたので、ルフィーナは本を閉じてゆっくりと振り返る。
「ええ。読書は夢中になれますわ」
ルフィーナはクスッと楽しそうに笑った。
「準備が出来たから迎えに来た」
エヴグラフはそっとルフィーナに手を差し出す。
「ありがとうございます」
ルフィーナはその手を取り、エヴグラフの執務室に向かった。
今回出された紅茶はローズティー。そしてブルーベリージャムと蜂蜜ケーキが用意されていた。
どれもルフィーナの好物である。
「いつも私の好物が用意されているので、実はこの時間がとても楽しみになっておりました」
ルフィーナは品良く柔らかに微笑む。
ペリドットの目はどことなくキラキラとしていた。
「ならば用意した甲斐があった。まあ作っているのは宮殿のシェフ達だが」
エヴグラフは嬉しそうにラピスラズリの目を細めた。
ルフィーナとエヴグラフは早速お菓子や紅茶を楽しみながら、読んだ本について語る。
エヴグラフと過ごす時間は嫌なことを全て忘れることが出来る。ルフィーナはこの時間を心から楽しんでいた。
(そろそろお渡ししたいわね)
ルフィーナはエヴグラフへのプレゼントにチラリと目を向けた。
「ルフィーナ嬢、何かあったか?」
エヴグラフは不思議そうに首を傾げている。
ルフィーナは改めて、エヴグラフに体を向ける。
「実は、グラーファ様にお渡ししたいものがございます」
「ルフィーナ嬢が俺に。それは嬉しいな」
エヴグラフは心底嬉しそうに破顔した。
ルフィーナは丁寧にラッピングされた袋をエヴグラフに渡す。
「グラーファ様には、いつも色々と良くしていただいておりますので、ささやかながらそのお礼でございます。もし不要でしたら、捨ててもらっても構いませんので」
ルフィーナは少しだけ自信なさげである。
「ルフィーナ嬢からもらったものが不要なものなわけがない」
エヴグラフは宝物を扱うかのようにルフィーナからのプレゼントを受け取った。
「中身を開けてみても良いだろうか?」
「どうぞ」
エヴグラフの言葉に、ルフィーナはコクリと頷いた。
丁寧に袋を開けるエヴグラフ。
白い百合と縁に白い花々が刺繍された、紺色のクラヴァットである。
「素敵な刺繍だな。これはもしかしてルフィーナ嬢が刺繍したのか?」
エヴグラフは感心したようにラピスラズリの目を輝かせている。
「はい」
ルフィーナはエヴグラフから目を逸らして、コクリと頷いた。
「ルフィーナ嬢が自ら刺繍を……これは俺の宝物にしよう」
エヴグラフは宝物を扱うかのように、クラヴァットをそっと胸に当てた。
「グラーファ様にそう仰っていただけて、大変光栄でございます」
ルフィーナはホッと肩を撫で下ろした。
作った甲斐があったと心から感じた。
まるで全てが報われたかのような気分である。
ルフィーナの胸の奥から温かく柔らかな感情が込み上げていた。
(この気持ちは……)
ルフィーナはその感情の名前に気付き始めていた。
思わずエヴグラフから目を逸らしてしまう。
ルフィーナの頬はほんのりと赤く染まっていた。
「ルフィーナ嬢」
凛として低く、それでいて優しいエヴグラフの声。その声で名前を呼ばれ、ルフィーナの心臓はトクリと跳ねた。
ルフィーナはゆっくりとエヴグラフに目を向ける。
「似合うだろうか?」
エヴグラフはルフィーナからプレゼントされたクラヴァットを早速着用していた。
ラピスラズリの目の輝きが増している。
「はい」
ルフィーナはゆっくりと頷き、花が咲いたように表情を綻ばせた。
ルフィーナのペリドットの目と、エヴグラフのラピスラズリの目はキラキラとしており、二人の視線は真っ直ぐ絡み合う。
ルフィーナはこの時間がずっと続いて欲しいと願うのであった。
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