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第2章 学校編

第43話 残虐

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「ちょっと!僕のこと忘れてない!?」

隅っこにいたアオが声をかける。

そういえば完全に忘れていたな…

「いい加減解いてくれても良くない?」

「わかったよ。【収納】」

俺はアオを縛っていた縄を収納する。

「ふぅーやっと動ける」

アオは手首を確認しながら背伸びをする。
そして真剣な表情で俺と向かい合う。

「ルイス、頼みがあるんだ。
ヘルウィー・ドル・アスタリストを殺して欲しい…
僕はあいつが憎いんだ…」

どうやら、好きでヘルウィーに従っていた訳じゃなさそうだ。

「僕の家族があいつに人質にされてて…それで仕方なく…」

「アオに頼まれなくても、元からあいつは殺すつもりだ」

家族を人質にとるなんて卑怯なやつだ。
ヨカフの仇…そしてメリアが危険だ…!

「う、痛た…」

「おいら達、気を失ってたでやんすか…」

気絶していたクリスケが目を覚ます。

「ヨカフさん…?」

「どうしたでやんすか?…っ!?」

クリスケがヨカフの姿を見て唖然とする。

「そんなの酷いでやんすよ…!」

「ヨカフさぁぁぁん!」

クリスケがヨカフの傍で泣き叫ぶ。

「ヨカフは俺が殺した…」

俺は目の前の光景に耐えきれず、真実を話してしまった。

「そんなの酷いじゃないでやんすか…!」

「なんでやんすか…!」

俺は泣き叫ぶクリスケにヨカフに起きたこと全て話した。

ヨカフがヘルウィーという悪魔と契約したこと。
ヨカフは俺の事は嫌いではなくただ羨ましかったこと。

「そうでやんすか…」

「ルイスくん、今までいじわるして悪かったでやんす…」

ヨカフの話を聞いたクリスケが素直に謝る。

「その事はもういいんだ…それよりも今は悪魔、ヘルウィー・ドル・アスタリストの討伐が最優先だ」

「おいら達にできることはあるでやんすか?」

そうだな…
戦闘に参加しても邪魔になるだけだろう。
しかし、クリスケは他の人よりは強い。

怪我人を運んでもらうのが良さそうだな。

「お前たちはヨカフや他のみんなを街まで運んでくれ」

「「わかったでやんす!」」

「アオも頼んだよ」

「わかったよ!ルイス、そっちも頼んだよ!」

「任せろ!」

俺は自分の前にグッドマークを突き出す。

自信満々に任せろと言ったものの、あの悪魔にどう勝てばいいんだろうか。

正直速さも力も負けている。
それに相手は『中級悪魔 屈強級』だ。
恐らく悪魔専用魔術が使えるだろう。

勝てるビジョンが全く見えない…

本当に勝てるのか俺は…?

俺は自分の心の中に不安を抱きつつ、ヘルウィーを目指し森を駆け抜ける。



◆◆◆



その頃ヘルウィーは…

「ぐへへ、メリアちゅぁんはどこにいるのかなぁ~ぐへへ」

ヘルウィーはメリアを探して森の中を飛んでいた。
もちろん魔物を沢山生みだし、魔物にも探させている。

「あれー?この森の中には居ないみたいだ。
もしかしたら街に戻っちゃったのかな?」

ヘルウィーは方向を変え、街の方へと向かう。



◆◆◆



「全くどこいったんだよ!」

俺は気配に気を配りながらヘルウィーを探す。

「…っ!?」

突然上空に凄まじい気配を感じ、俺は空を見上げる。

「ぐへへ、この際もう暴れた方が楽しそうだなぁ~ぐへへ」

上空には、不気味な笑い声を上げて街へと飛んでいくヘルウィーの姿があった。

あの方向は街!?
まさかあいつ街を滅ぼす気か!?

まずい…早く止めないと!

俺はすぐさま方向転換し、街の方へ走りだした。



◆◆◆



「止まれ!そこの気持ち悪いやつ!」

アスタリスト王国の門を守る兵士がヘルウィーを指して叫ぶ。

「あ?誰が気持ち悪いだって?」

ヘルウィーは怒りを露わにして兵士の前に降り立つ。

「ひっ…貴方様は…ヘルウィー様でございます___」

「黙れ【ブラッドアロー】」

「がっ!」

ヘルウィーは【ブラッドアロー】で兵士の頭を撃ち抜く。

「ヘルウィー様何をして___」

「【ブラッドアロー】」

「ぐあっ!」

もう1人の兵士も【ブラッドアロー】で撃ち抜く。

「ぐへへへ、これは楽しいパーティーになりそうだな!
ぐへへへ、ぐははは、ぐへへへへ!」

ヘルウィーはアスタリスト王国の門を押し開ける。

「おい、なんだあれ…」

「魔物…!?」

「魔物だぁぁ!」

「魔物が入ってきたぞ!逃げろ!」

国民がヘルウィーの姿を見て慌てふためく。

「みんな死ねぇ!【ブラッドレイン】!」

ヘルウィーが魔術を唱える。

ポツ、ポツ、ポツ、ポツ

「なんだこれ、あめ…」

バタッ

「血…」

バタッ

「お父しゃん!起き…」

バタッ

【ブラッドレイン】を浴びた老人、夫婦、子供までもが次々と倒れていく。

「ぐへへへ!最高の気分だ!
【ブラッドレイン】!【ブラッドレイン】!【ブラッドレイン】!!」

ヘルウィーは次々と王都を血の雨で染めていく。

「やめろ!」

カッパを着て血を浴びないようにした冒険者がヘルウィーを止めに来る。

「ちっ!冒険者風情が邪魔しやがって!【ブラッドアロー】!」

ヘルウィーは冒険者に向かって【ブラッドアロー】を放つ。

「まずいっ!」

冒険者に直撃するかと思われたその時…

「モードチェンジ【ウィンドソード】!おりゃあ!」

銀髪の冒険者が駆けつける。

「ヘルバーさん!?」

「おりゃおりゃおりゃおりゃぁぁぁ!」

ヘルバーは魔剣を振り回し大量の風を発生させ、竜巻を作る。

「なに!俺様の【ブラッドレイン】が!」

ヘルバーの生み出した竜巻が【ブラッドレイン】をかき消す。

「おい悪魔!正々堂々勝負しようぜ!」

ヘルバーが剣を前に突き出す。


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