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家庭キョンシー

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 困ったな、困ったな

 高橋家のお母さん、困っています。それは、娘の智子ちゃん(小学4年生)が、算数のテストで毎回0点をとってくるからです。

 うーん、このままでは智子の将来がしなびてしまうわ。家庭教師でも雇ってみようかしら。

 お母さんは家庭教師を雇おうと、家庭教師派遣会社に電話しました。

「もしもし、娘の成績のことで相談があるのですが。」

「はい、状況を詳しく教えて頂けますか。」

「算数のテストで0点ばかりとってくるのですよ。」

「それは大変だ。明日から、家庭教師を派遣しましょう。」

 次の日、

 ピンポーン

 お母さん、ドアを開けると、なにかがぴょんぴょん跳ねています。帽子をかぶり、手を前に出しながら。

 あら、間違って家庭キョンシーを派遣してしまったのね。

 お母さんは思いました。しかし、ずっと玄関で跳ねさせておくわけにもいきません。お母さんは、家庭キョンシーを中に入れました。

 どうぞ

 キョンシーは家に入り、跳び回りました。

 ぴょんぴょんぴょん

 早速派遣会社に電話を入れます。

「もしもし、昨日の高橋ですけど、家庭教師と間違えて、家庭キョンシーを派遣していますよ?」

「そんなはずがないです。確かに家庭教師を派遣しました。」

「いえ、確かに家庭キョンシーですよ。だって、ほら。」

 ドンドンドン

 お母さんはキョンシーがジャンプして、床を叩く音を電話で拾いました。

「その音がどうしました?あなたが床を叩いているだけでしょう。」

「あら、よく気づきましたね。私はただのクレーマー。失礼しました。」

 お母さんは、会話するのが突然めんどくさくなったため、嘘をついていたことにして、電話を切りました。

 ぴょんぴょんぴょんぴょん

 家庭キョンシー、跳ねます、跳ねます。あちこちを、跳ね回ります。しかし、外に逃すわけにもいきません。なぜなら、キョンシーは中国からの外来種で、野に返すことが禁止されているためです。

 とにかく、あちこち跳ねまわられるのは迷惑だ。お母さんは、ダンボールで敷居を作り、その中にキョンシーを入れました。キョンシーは、敷居の中を跳び回りました。

 ぴょんぴょん、ぴょんぴょん

 とりあえずこれで、あちこち跳ね回られることはないわね。お母さんは、少し安心しました。

 ズドーーーーーーン

 下の階に住んでいる佐藤さんから、大砲が打ち込まれました。

「さっきから、ドンドンドンドン!!うるさいわよーーーーー!!」

「ごめんなさい、ごめんなさい。」

 確かにそうだ。悪いことをしたな。お母さんは防音マットを買ってきて、敷居の中にひきました。これで下に響くことはない。お母さんは安心しました。

 ただいま帰りました

 智子ちゃんが帰ってきました。お母さんは早速キョンシーを紹介しました。

「今日から一緒に暮らすことになった、キョンシーよ。」

「わあ、キュート。これからよろしくね。」

 キョンシーはただ跳んでいました。

 ぴょんぴょんぴょんぴょん

 智子ちゃんも真似して跳びました。

 ぴょんぴょんぴょんぴょん

 ズドーーーーーーン

 再び、下の階の佐藤さんから大砲が打ち込まれました。

「うるさいって、いってるじゃないのよーーー!!」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ほらっ、智子も!!」

「跳びはねて、ごめんなさい。」

 お母さん、智子ちゃん、謝りました。

「もうっ、気をつけなさいよ!!」

 佐藤さんは、とりあえず許してくれました。すると、

 ただいま帰りました

 お父さんが帰ってきました。お母さんは、お父さんにキョンシーを紹介しました。

「今日から一緒に暮らすことになった、キョンシーよ。」

「おう、これからよろしくな、キョンシー。」

 キョンシーはただ跳んでいました。

 ぴょんぴょんぴょんぴょん

 お父さんは真似をして、手を前に出しました。

 ビッビッ、ビッビッ

 下の階の佐藤さんを気にして、跳びはねる真似をしないあたり、お父さんは流石だ、それに対し、私はまだ幼い。

 智子ちゃんは思いました。

 その夜、

 カサカサ、カサカサ

 キョンシーは防音マットの上を跳んでいるため、そこまで大きな音はなりません。しかし、防音マットがすれる、小さな音まで消すことは出来ませんでした。

 カサカサ、カサカサ

 お父さんはその音が気になりました。気になって、眠れません。お父さんはだんだんイライラしてきました。

 殺してやる.....

 お父さんはキョンシーを殺そうと台所に行き、包丁を手に取りました。

 シャキーーーン!!

 キョンシーに、近づいていきます。

 トコトコ、トコトコ

 キョンシーはなにも気づかず、跳んでいます。

 ぴょんぴょん、ぴょんぴょん

 キョンシーを殺せる距離まできました。さっさと殺そう。お父さんは包丁を振り上げました。

「やめてえ!!!」

 この声は、、、智子ちゃんです。偶然トイレで起きてきた智子ちゃんが、お父さんを止めようと叫びました。

「お父さんには、キョンシーを殺す権利があるの?」

 智子ちゃんは聞きました。

「あるさ。俺はキョンシーを殺せる、この事実こそ、権利なのだ。」

 なるほど、そういう考え方もあるか。智子ちゃんは思いました。しかし、キョンシーが殺されるのは嫌です。

「次の、次の算数のテストで、100点をとるから、どうか殺さないで!!」

 智子ちゃんはお父さんに訴えました。

「オールライト」

 お父さんは手を止めました。

「ただ、100点じゃなかったら、その時は、、、、、」

「わかってるわ。必ず100点取ってみせる、、、」

 二人は寝室に帰り寝ました。キョンシーはずっと、跳んでいました。

 ぴょんぴょん、ぴょんぴょん

 智子ちゃんはやれば出来る子だったので、100点を取りました。

「よくやった智子、キョンシーは生かしておいてやるぞ。」

「ありがとう、お父さん。」

 キラキラキラキラ

 突然、キョンシーの周りを、光が覆いました。

 なんだ、なんだ

 光は徐々に弱まっていき、消えました。

 なんということでしょう。そこには、イケメン王子様が立っていました。なんと、智子ちゃんに100点を取ってもらうまでキョンシーになる呪いを、魔女にかけられていたのです。

「智子、君は僕のプリンセスだ。」

 二人は結婚し、幸せに暮らしましたとさ。

 完












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