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花屋のうさぎの困惑1※
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いつもの通りに午後にリオネル様とニルス様が迎えに来て、今日も僕は花でいっぱいの馬車の中でリオネル様のお膝の上に座らされていた。優しく頭を撫でられ、首筋をさわさわとされて、その心地よさに思わず吐息を漏らしてしまう。リオネル様のうさぎフェチ行為には慣れないと、と思うのだけれど……これがなかなか慣れないものだ。
「そうだ。近頃、組織的にオメガを拐かす輩がいてな。騎士団で調査をしている最中なのだが……気をつけなさい」
リオネル様は心配そうな声音で言いながら、僕の体を抱きしめた。ふわりと、リオネル様の香りが漂う。それを嗅いでいると小さな心臓が早い鼓動を刻んだ。
……僕は身のほどをわきまえているうさぎだけれど。こんなことばかりされてはどうしても意識をしてしまって、とても困る。それだけリオネル様は魅力的な男性なのだ。
それにしても、オメガを拐かす輩……? どうしてオメガを攫うのかはわからないけれど、その組織が捕まるまでは、遅い時間の外出は控えた方がいいかもしれない。
以前、オメガばかりの娼館が摘発されたことがある。『娼館』を経営するだけなら、国に許可さえ取っていれば違法ではないのだけれど。問題になったのは、そこに居たオメガたちが皆攫われてきた者たちだったことだ。特殊な薬を打たれ、常時発情状態にされた娼館のオメガたちは……皆壊れていたらしい。
その話を聞いただけで、ぞくりと肌が粟立ったのを覚えている。
また、似たようなことが起きているのかもしれないな。じゅうぶんに注意をして生きているつもりではあるけれど、今後はさらに気をつけないと。
「夕方以降はなるべく、家から出ないようにしますね」
僕の言葉を聞いたリオネル様は、口角を少しだけ上げて笑う。基本的には無表情なリオネル様だけれど、時々微笑んだりもするのだ。そしてその微笑みは……綺麗すぎて心臓に悪い。
「そうだな。いっそ、私の屋敷に住むか? 安全性は保証できると思うが」
リオネル様の言葉に、僕はキョトンとしてしまった。侯爵家ならたしかに安全だろうけど……これはリオネル様流の冗談だろう。
「冗談がお上手ですね!」
「いや、その。……そうだな」
リオネル様はなぜかガクリとうなだれて、僕の首筋に顔を埋めてしまう。肌にかかる吐息がくすぐったくて、僕は少し笑ってしまった。
「リオネル様はお優しいですね。平民のオメガのことも、こんなに気にしてくださるんですから」
僕がそう言うと、リオネル様はなぜかまた深いため息をついた。
「私はそんなに優しい人間ではない。レイラだから、優しくしたいだけだ」
「リオネル様……?」
かけられた言葉の意味を考える前に、耳裏に口づけされる。その柔らかな感触にぞくりと体が震えた。丸い尻尾にも手が伸びて、もふりと優しく揉み込まれる。
「や……リオネル、様」
口から甘い吐息が漏れる。性感帯である耳や尻尾に触れられているのに振り解こうという気は不思議と起きず、僕はリオネル様に触れられるままになってしまった。
リオネル様の舌が、ぬるりと耳を舐める。すると体中に淡い刺激が伝播した。下腹部が硬さを持ち、トラウザーズを押し上げる。
「……硬く、なっているな」
それをリオネル様に指摘され、僕は顔を真っ赤にした。
「ご、ごめんなさい。リオネル様……」
恥ずかしい。次期侯爵様、しかもお取引先様相手にこんな粗相をしてしまうなんて。
そもそもの話、べたべたと触るリオネル様が悪いのだけれど! そんな文句は言えようはずがない。
「どうして、謝る?」
リオネル様は囁きながら、今度は首筋に舌を這わせた。首輪が覆っていない部分にちらりと舌先が当たって、それはぞくりと体を震わせる。
「は、はしたなくて……ごめんなさい」
これはいつもの、リオネル様のうさぎフェチからくる行為だ。それがわかっているのに、体は与えられる刺激に反応してしまう。オメガはやっぱりはしたないのだと、リオネル様に思われたらどうしよう。そう思うと恥ずかしくて僕は泣きそうになった。
「謝らなくていい」
耳に優しく囁かれ、綺麗な指でトラウザーズの前が開かれていく。その光景をどこかぼんやりと、他人事のように僕は見つめていた。トラウザーズをそっと下ろされ、下着の中に大きな手が侵入する。そして持ち上がっている熱が、そっと握り込まれた。
「そうだ。近頃、組織的にオメガを拐かす輩がいてな。騎士団で調査をしている最中なのだが……気をつけなさい」
リオネル様は心配そうな声音で言いながら、僕の体を抱きしめた。ふわりと、リオネル様の香りが漂う。それを嗅いでいると小さな心臓が早い鼓動を刻んだ。
……僕は身のほどをわきまえているうさぎだけれど。こんなことばかりされてはどうしても意識をしてしまって、とても困る。それだけリオネル様は魅力的な男性なのだ。
それにしても、オメガを拐かす輩……? どうしてオメガを攫うのかはわからないけれど、その組織が捕まるまでは、遅い時間の外出は控えた方がいいかもしれない。
以前、オメガばかりの娼館が摘発されたことがある。『娼館』を経営するだけなら、国に許可さえ取っていれば違法ではないのだけれど。問題になったのは、そこに居たオメガたちが皆攫われてきた者たちだったことだ。特殊な薬を打たれ、常時発情状態にされた娼館のオメガたちは……皆壊れていたらしい。
その話を聞いただけで、ぞくりと肌が粟立ったのを覚えている。
また、似たようなことが起きているのかもしれないな。じゅうぶんに注意をして生きているつもりではあるけれど、今後はさらに気をつけないと。
「夕方以降はなるべく、家から出ないようにしますね」
僕の言葉を聞いたリオネル様は、口角を少しだけ上げて笑う。基本的には無表情なリオネル様だけれど、時々微笑んだりもするのだ。そしてその微笑みは……綺麗すぎて心臓に悪い。
「そうだな。いっそ、私の屋敷に住むか? 安全性は保証できると思うが」
リオネル様の言葉に、僕はキョトンとしてしまった。侯爵家ならたしかに安全だろうけど……これはリオネル様流の冗談だろう。
「冗談がお上手ですね!」
「いや、その。……そうだな」
リオネル様はなぜかガクリとうなだれて、僕の首筋に顔を埋めてしまう。肌にかかる吐息がくすぐったくて、僕は少し笑ってしまった。
「リオネル様はお優しいですね。平民のオメガのことも、こんなに気にしてくださるんですから」
僕がそう言うと、リオネル様はなぜかまた深いため息をついた。
「私はそんなに優しい人間ではない。レイラだから、優しくしたいだけだ」
「リオネル様……?」
かけられた言葉の意味を考える前に、耳裏に口づけされる。その柔らかな感触にぞくりと体が震えた。丸い尻尾にも手が伸びて、もふりと優しく揉み込まれる。
「や……リオネル、様」
口から甘い吐息が漏れる。性感帯である耳や尻尾に触れられているのに振り解こうという気は不思議と起きず、僕はリオネル様に触れられるままになってしまった。
リオネル様の舌が、ぬるりと耳を舐める。すると体中に淡い刺激が伝播した。下腹部が硬さを持ち、トラウザーズを押し上げる。
「……硬く、なっているな」
それをリオネル様に指摘され、僕は顔を真っ赤にした。
「ご、ごめんなさい。リオネル様……」
恥ずかしい。次期侯爵様、しかもお取引先様相手にこんな粗相をしてしまうなんて。
そもそもの話、べたべたと触るリオネル様が悪いのだけれど! そんな文句は言えようはずがない。
「どうして、謝る?」
リオネル様は囁きながら、今度は首筋に舌を這わせた。首輪が覆っていない部分にちらりと舌先が当たって、それはぞくりと体を震わせる。
「は、はしたなくて……ごめんなさい」
これはいつもの、リオネル様のうさぎフェチからくる行為だ。それがわかっているのに、体は与えられる刺激に反応してしまう。オメガはやっぱりはしたないのだと、リオネル様に思われたらどうしよう。そう思うと恥ずかしくて僕は泣きそうになった。
「謝らなくていい」
耳に優しく囁かれ、綺麗な指でトラウザーズの前が開かれていく。その光景をどこかぼんやりと、他人事のように僕は見つめていた。トラウザーズをそっと下ろされ、下着の中に大きな手が侵入する。そして持ち上がっている熱が、そっと握り込まれた。
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