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本編2

モブ令嬢は不安を抱える2※

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「んっ……」

 胸に挟んだシャルル王子のものの先端を、舌で丁寧に舐めとる。
 すごいなぁ、パイズリが悠々とできてしまうなんて。モブである私の唯一の特徴であるこの大きな胸には夢が詰まっている。
 前世知識由来の好奇心に駆られ最初にこれをやった時、シャルル王子は目を白黒とさせていたけれど……。今では彼のお気に入りのプレイの一つだ。

「アリエルの胸に包まれているなんて……なんて幸せなんだ……」

 むにむにと両手で挟んだ双丘を動かし彼のものを擦り上げると、シャルル王子からため息とともに甘い声が上がった。
 するしないの押し問答の末に、今日は薬もないしお胸で我慢して、と渋る彼を納得させて今に至るわけである。
 白い頬を紅潮させながら奉仕する私を見つめる彼はとても愛らしい。その姿を見ているだけで心は愛おしさと満足感に満たされてしまう。
 ……私も、彼の子供が欲しい。それは心底そう思うのだ。
 けれど、もっと先の未来が見据えられる状況になってからでないと……不安に思えてしまう。

「……アリエルとの、子が欲しい……」
「今はダメですよ、シャルル様」

 じゅっと音を立てながら口に含んだ熱を吸い上げると、こらえるような抵抗のあとに肉杭が震え、口中に白濁が吐き出された。青臭いそれを飲み下すと、無理をするなと言わんばかりの表情の彼に優しく頬を撫でられる。
 胸から彼のものを解放すると、じっとりと濡れた谷間から糸を引いてそれは離れていった。

「子供は……将来落ち着いてから作ればいいじゃないですか。その……結婚してからでも」

 勝手知ったる他人の家、とばかりにサイドテーブルに置いてある水差しの水を飲みつつそう言うと、シャルル王子に苦いお顔をされてしまう。

「嫌だ。機会を待っているうちにアリエルが私に愛想を尽かして逃げてしまうかもしれないし、妙なことを企む輩が現れるかもしれない。子ができれば君の立場をもっと盤石のものとして主張できる」

 彼はそう言いながら私を背後から抱きしめた。しっとりと温かい素肌の感触と、汗で濡れた髪が背中に当たる。
 ……愛想を尽かされる可能性があるのは、どう考えても私の方だと思うんだけどなぁ。なんといっても私は冴えないモブなのだ。

「……身勝手なのはわかってるんだ。けれど、私は……どんな手段を講じてでもアリエルを手放したくない」

 小さく彼の体が震え、背中を温かな雫が伝った。


 ☆★☆


「やぁ、アリエル嬢」

 シャルル王子のお部屋から退出し、『送る』と言ってきかない彼と二人で王宮の廊下を歩いていると。
 推し様……いや、フィリップ王子に声をかけられた。
 シャルル王子が成長したらこのような美形になるんだろうなぁという傾国の美貌が今日も眩しい。
 何度見ても生のフィリップ王子はとても素敵だ。うう、顔が好みすぎる。この顔が好きすぎて前世でフィリップ王子ルートは何周もしたもんなぁ。
 現在私が恋をしているのはシャルル王子だけれど、フィリップ王子に会うと前世の業が蘇るというか手を合わせて拝みたくなってしまう。
 思わず頬を熱くするとシャルル王子にぎゅっと……正面から胸を掴まれた。

「……シャルル様?」
「兄上を見るな。君は私だけ見てればいい」

 上目遣いで頬を膨らませるシャルル王子は、とてもお可愛らしい。
 だけど掴むのは手とかにしてくれないかな。推しの前で胸を掴まれるなんてなんの拷問だよ!
 まぁ、フィリップ王子との初対面がシャルル王子との最中だった時点で……その。私の印象はかなりの手遅れ感はあるんだけど。

「今日もシャルルが迷惑をかけているようだな」

 彼はその美貌に苦笑を浮かべながら、弟君を見つめた。シャルル王子はそんなフィリップ王子をじとりと睨み、自分のものだと主張するかのように私の腰を抱き寄せる。
 ……そんな風にしなくても、私を好きだという物好きは貴方くらいしかいないのになぁ。

「迷惑だなんてとんでもないです。シャルル様にはよくしていただいています」

 彼は本当に、よくしてくれている。王宮で『第二王子の婚約者』の悪い噂を流す人物は躊躇なく処罰し、王妃様にも日々苦言を呈してくれている……王妃様はどこ吹く風だけれど。
 私がシャルル王子にできることが少なすぎて、日々申し訳ないと思うくらいだ。それを口にすると『一生君が側にいてくれれば、それでいい』と言われてしまう。
 うう……イケショタめ! 好きだ!
 人前で胸を揉まなければもっといいんだけどなぁ……。

「アリエル嬢、困ったことがあればなんでも言ってくれ。君は義妹になるんだからな」
「は……はいっ! ありがとうございましゅ!」

 推しに『義妹』と言われ浮かれた私は盛大に噛んでしまった。恥ずかしくて真っ赤になる私の頭を綺麗な手で優しくひと撫でして、フィリップ王子は微笑んでから去って行く……。す、素敵! 推し様ぁあ!!

「……アリエル……」
「シャルル様。えっと、その」

 婚約者様は不機嫌な顔で私を見上げている。その瞳は涙で潤んでいて、今にも雫が零れ落ちそうだ。

「……浮気者」
「浮気じゃないですよ!?」

 推しとリアルな恋愛感情は別物なのだ。シャルル王子への説明が非常に難しいのだけど……!

「アリエル、しゃがめ」
「はい?」

 少ししゃがむと首に手をかけ引き寄せられて……そっと口づけられた。

「君は私のものだ。よそ見なんかするな」

 囁いてもう一度口づける彼の声音はとても真剣で。私の心を捕らえようとするかのように金の瞳に視線を絡められた。
 ――このイケショタは、どれだけ私を夢中にさせれば気が済むの。

「……はい」

 私の返事に満足げな彼に手を引かれ、再び王宮の廊下を歩いていると……。

「そうだアリエル。明日の舞踏会用のドレスは気に入ってくれたか?」

 シャルル王子がそんなことを言い出した。

「……舞踏会?」

 彼の言葉に、私は首を傾げた。そんな予定は聞いていないし、招待状も届いていない。

「招待状を送ったはずだが」
「……届いていませんねぇ」
「二日前に贈ったドレスは……届いたか?」
「……と、届いてませんね」

 誰の仕業か、というのは言うまでもないなぁ。私はおっとりと微笑む王妃様の姿を思い浮かべた。私がお世話になっている侯爵家の方々も関わってるのかな。……王妃様の勅命だと断れないだろうし。
 私を舞踏会から締め出して別のご令嬢とシャルル王子を引き合わせるつもりだったのか、それとも単純な仲違いを狙ったのか。なんとも陰湿な……。

「くそっ! 母上め!」

 シャルル王子は舌打ちをし、剣呑な表情になった。
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