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公爵騎士様と一夜を過ごしてしまいました?1
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スヴァンテ様は微妙なご様子のままだったけれど、最終的には共寝を承諾してくれた。
……よかった。公爵様を床で寝かせた上に風邪をひかせてしまったら、すごくいたたまれないもの。
窓に目を向けると木立が激しく揺れているのが見え、ガラスには激しく水滴が叩きつけられている。どれくらいで嵐が過ぎ去るのだろうと少し不安になりながら、私は二人分の夕食の準備に取り掛かった。
ノライモと貰い物のベーコンで作ったスープで夕食を済ませてから、沐浴のための大きめの桶を用意する。人一人が入るサイズではあるのだけれど、スヴァンテ様の体格だとギリギリだろうな。
桶にお湯を溜めていると、馬の様子を見に外に出ていたスヴァンテ様が戻ってきた。その姿は雨に濡れていて、とても寒そうだ。
「スヴァンテ様、これをどうぞ」
「ニカナ、これは?」
大きめの布を数枚スヴァンテ様に差し出せば、彼は目を丸くする。
「体を拭いたり、髪を洗ったりしてください。お湯が入った桶は台所に用意しましたので。ふだんは外で沐浴してるんですけど、今日はこの天気なので……」
「わかった。ありがたく使わせてもらう」
スヴァンテ様は布を受け取ると、どこかぎこちない表情でにこりと微笑んだ。
……やっぱり、沐浴は嫌かな。貴族様の家には、大きな浴室があると聞く。沐浴をさせてしまうのは申し訳ないなと思ったけれど、我が家にはこれしか手段がないのだ。
奇跡で出した水だからか、この水を使うと体の汚れがよく落ちる。だから汚れが落ちずに気持ち悪い……ということはないと思う。多分。
「いえいえ。着替えの用意ができないのが、申し訳ないですが」
「着替えはあるので大丈夫だ。天気が荒れて野宿をするような場合を想定して、持ち歩いていたからな」
なんと、準備がとてもいい。王都からこの山小屋までは片道で三時間がかかるから、そんな場合を想定していて当然といえば当然か。
「ふふ。ご準備がいいですね。では、しばらく寝室にいますね。あっ、お湯はそのままにしていてください。私も続けて沐浴しますので」
そう言ってから、私は寝室へと向かった。扉を閉めてしばらくすると、ちゃぷちゃぷとスヴァンテ様がお湯を使っているらしい音がする。王都で人気の公爵騎士様が隣で沐浴してるなんて、考えてみたらなんだかすごいな。
どうしてかな……胸がドキドキする。
首を傾げながら寝台に腰を下ろし、足をぶらぶらとさせる。改めて見るとこの寝台はとても狭い。ここにぎゅうぎゅうになりながら寝るんだな……という想像をすると、胸の鼓動はさらに速くなった。
その時、扉がノックされた。その音に、私は飛び上がらんばかりに驚いてしまう。
「ニカナ、入ってもいいか?」
続けて、スヴァンテ様からお声がかかった。
「はい! どうぞ!」
私は、ひっくり返り気味の声で返事をした。するとスヴァンテ様が笑った気配がして、カチャリと扉が開く。
「さっぱりしたよ。ありがとう」
部屋に入ってきたスヴァンテ様は、ふだんの騎士服姿ではなくシャツとトラウザーズのみのラフな服装だ。いつもは結ばれている髪も、紐が解かれて背中に垂らされている。そんな彼の姿を目にしていると、先ほどから感じている落ち着かなさがさらに増していった。
……よかった。公爵様を床で寝かせた上に風邪をひかせてしまったら、すごくいたたまれないもの。
窓に目を向けると木立が激しく揺れているのが見え、ガラスには激しく水滴が叩きつけられている。どれくらいで嵐が過ぎ去るのだろうと少し不安になりながら、私は二人分の夕食の準備に取り掛かった。
ノライモと貰い物のベーコンで作ったスープで夕食を済ませてから、沐浴のための大きめの桶を用意する。人一人が入るサイズではあるのだけれど、スヴァンテ様の体格だとギリギリだろうな。
桶にお湯を溜めていると、馬の様子を見に外に出ていたスヴァンテ様が戻ってきた。その姿は雨に濡れていて、とても寒そうだ。
「スヴァンテ様、これをどうぞ」
「ニカナ、これは?」
大きめの布を数枚スヴァンテ様に差し出せば、彼は目を丸くする。
「体を拭いたり、髪を洗ったりしてください。お湯が入った桶は台所に用意しましたので。ふだんは外で沐浴してるんですけど、今日はこの天気なので……」
「わかった。ありがたく使わせてもらう」
スヴァンテ様は布を受け取ると、どこかぎこちない表情でにこりと微笑んだ。
……やっぱり、沐浴は嫌かな。貴族様の家には、大きな浴室があると聞く。沐浴をさせてしまうのは申し訳ないなと思ったけれど、我が家にはこれしか手段がないのだ。
奇跡で出した水だからか、この水を使うと体の汚れがよく落ちる。だから汚れが落ちずに気持ち悪い……ということはないと思う。多分。
「いえいえ。着替えの用意ができないのが、申し訳ないですが」
「着替えはあるので大丈夫だ。天気が荒れて野宿をするような場合を想定して、持ち歩いていたからな」
なんと、準備がとてもいい。王都からこの山小屋までは片道で三時間がかかるから、そんな場合を想定していて当然といえば当然か。
「ふふ。ご準備がいいですね。では、しばらく寝室にいますね。あっ、お湯はそのままにしていてください。私も続けて沐浴しますので」
そう言ってから、私は寝室へと向かった。扉を閉めてしばらくすると、ちゃぷちゃぷとスヴァンテ様がお湯を使っているらしい音がする。王都で人気の公爵騎士様が隣で沐浴してるなんて、考えてみたらなんだかすごいな。
どうしてかな……胸がドキドキする。
首を傾げながら寝台に腰を下ろし、足をぶらぶらとさせる。改めて見るとこの寝台はとても狭い。ここにぎゅうぎゅうになりながら寝るんだな……という想像をすると、胸の鼓動はさらに速くなった。
その時、扉がノックされた。その音に、私は飛び上がらんばかりに驚いてしまう。
「ニカナ、入ってもいいか?」
続けて、スヴァンテ様からお声がかかった。
「はい! どうぞ!」
私は、ひっくり返り気味の声で返事をした。するとスヴァンテ様が笑った気配がして、カチャリと扉が開く。
「さっぱりしたよ。ありがとう」
部屋に入ってきたスヴァンテ様は、ふだんの騎士服姿ではなくシャツとトラウザーズのみのラフな服装だ。いつもは結ばれている髪も、紐が解かれて背中に垂らされている。そんな彼の姿を目にしていると、先ほどから感じている落ち着かなさがさらに増していった。
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