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お兄様が実は〇〇〇だったのですが2
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「……お兄様と婚約? でもお兄様とわたくしは兄妹で……」
わたくしが目を白黒させて慌てるとお兄様は少し呆れたような顔をして小さく息を吐いた。
うう……わたくし何か、早とちりを? でもお兄様とは確実に、実の兄妹として育てられたわ。
身を起こしてお兄様に向き合うと、優しく頬をなでられその心地よさにうっとりと目を閉じてしまう。
お兄様が婚約者。……この手が一生わたくしに触れてくれるの? だけど、どうして。
「最近ね、分かったのだけど。僕とビアンカは……従兄妹同士なんだ」
お兄様の言葉にわたくしは衝撃を受け、閉じていた目を開いた。
何度も瞬きをしてお兄様の顔を見るけれど冗談を言っている様子はない。
だけど……。
「で……でもお母様にはご兄弟はいらっしゃらず、叔父様は未婚よね?」
そう、お母様は一人っ子。
お父様には弟がいらっしゃるけれど、どこか浮世離れをしていて日々ガーデニングに精を出しご結婚をするつもりすらないらしい。
「お母様には双子の妹がいたんだ。だけど、馬車の事故で旦那様と一緒に亡くなってしまってね。僕はその、お母様の妹の子供なんだ。シュラット侯爵家には赤ん坊の頃に引き取られたんだよ。……だから本当は、お兄様じゃなくて僕は君の従兄」
お母様の双子の妹……道理でお母様とお兄様は、そっくりなわけよ。
「じゃあ本当に、お兄様と婚約ができるの……?」
発覚した嬉しい事実に、胸にじわり、と温かいものが広がった。
お兄様の、お嫁さんになれる。その喜びが心を震わせる。
だけどそんなわたくしにお兄様は厳しい視線を向けた。
「……ねぇ、ビアンカ。思い出を胸に修道院に行くってなに? 僕が婚前に遊びで妹を抱いて捨てるような男だと思ったの?」
めずらしく強い語気でそう言ってお兄様は悲し気に眉を下げる。
そうだ。わたくしは中途半端に会話を盗み聞いて、勘違いをして、お兄様の真剣なお気持ちを踏みにじってしまったんだ。
……だけど……。
「だけど、わたくしだって真剣だったのですわ。お兄様と結ばれないのならせめて一度だけでもって……」
わたくしは込み上げる気持ちを堪えながら、ぎゅっと唇を噛みしめた。
「ねぇビアンカ。僕もね、『兄』だった頃から君を女性として愛していたよ」
お兄様はわたくしを抱き寄せ、額に優しく唇を落とした。
そして……ずっと欲しがっていた言葉をくれた。
女性として、愛していた? 本当に……? 嬉しい、嬉しすぎてどうになってしまいそう。
「兄妹だから結ばれないんだって思いながら過ごしていたのは……僕も、一緒。だからね、必死になって兄妹じゃない証拠を探したんだ。お父様にカマをかけても白状してくれなかったしね」
そう言ってお兄様は過去を思い返すような目をしてどこか苦い笑いを浮かべた。
「役所で過去の書類を探してもらったり、お父様とお母様の共通の知人を探したり……大変だったけれど証拠が見つかって本当によかったよ。じゃなければ『兄』の僕で……君に間違いを犯していたかもしれない」
それでも、お兄様と犯す間違いなら……わたくしは幸せだったのだと思う。
そんなことをしてしまったら一生罪悪感で苦しんだのだろう、優しいお兄様には言えないけれど。
「お父様は僕が証拠を見つけてきた時には驚いていたよ。僕のことを思って、一生隠し通すつもりだったみたいだから」
父様は自分の血を引いていないお兄様が負い目を感じずシュラット侯爵家を継げるように、ずっと隠していたのだろう。
父様も、優しい人だから。でも……。
「……父様の優しさのおかげで、遠回りになってしまったのね。内緒にしないで、小さな頃からわたくし達を許嫁にでもしてくれたらよかったのに」
拗ねたようにそう言うとお兄様はくすくすと愉快そうに笑った。
「許してあげてよ。お父様も色々と考えてからの決断だからね」
「……仕方ないですわね。一週間口をきかないでおくだけで許してあげますわ」
「天使に夢中なお父様が泣いてしまうよ」
「いいの! 父様なんか泣いて!」
お兄様と笑い合いながら、もつれるようにベットに倒れ込み、顔を合わせてまた笑う。
お兄様の体に目一杯腕を回して抱きつくと、子供の頃から知っているお兄様の香りと温かい体温がそこにあって。
そしてそれがずっと私の傍にあるんだと思ったら……悲しくないのに涙が込み上げて、お兄様の胸に頬をすり寄せ声を上げて泣いてしまった。
そんなわたくしの頭をお兄様は優しく撫で続け、時折旋毛にキスを落とした。
「お兄様、ずっと……ずっと一緒でいいのね」
しゃくりを上げながら問うとお兄様は優しく微笑んでから、確かに頷いた。
「ビアンカ、ずっと一緒だよ。それにもうお兄様じゃない。……アルフォンスと呼んで」
お兄様……ううん、アルフォンスの手がわたくしの頬を愛おしげに何度も撫でてから、唇に触れる。
アルフォンスの端正な顔が近づいて唇をそっと重ねられ、わたくしはその感触に陶然としながら目を閉じた。
「ビアンカ、愛してる。妹としてじゃないよ。女性としてちゃんと」
額を合わせ吐息がかかる距離で、アルフォンスの唇が愛を告げる。
「アルフォンス……わたくしも、わたくしもよ! アルフォンスのことが、男性として大好きなの!」
アルフォンスの首に腕を回してその唇に唇を合わせると彼は少し驚いた顔をしたけれど、応えるように優しく何度も啄むようなキスをした。
わたくしが目を白黒させて慌てるとお兄様は少し呆れたような顔をして小さく息を吐いた。
うう……わたくし何か、早とちりを? でもお兄様とは確実に、実の兄妹として育てられたわ。
身を起こしてお兄様に向き合うと、優しく頬をなでられその心地よさにうっとりと目を閉じてしまう。
お兄様が婚約者。……この手が一生わたくしに触れてくれるの? だけど、どうして。
「最近ね、分かったのだけど。僕とビアンカは……従兄妹同士なんだ」
お兄様の言葉にわたくしは衝撃を受け、閉じていた目を開いた。
何度も瞬きをしてお兄様の顔を見るけれど冗談を言っている様子はない。
だけど……。
「で……でもお母様にはご兄弟はいらっしゃらず、叔父様は未婚よね?」
そう、お母様は一人っ子。
お父様には弟がいらっしゃるけれど、どこか浮世離れをしていて日々ガーデニングに精を出しご結婚をするつもりすらないらしい。
「お母様には双子の妹がいたんだ。だけど、馬車の事故で旦那様と一緒に亡くなってしまってね。僕はその、お母様の妹の子供なんだ。シュラット侯爵家には赤ん坊の頃に引き取られたんだよ。……だから本当は、お兄様じゃなくて僕は君の従兄」
お母様の双子の妹……道理でお母様とお兄様は、そっくりなわけよ。
「じゃあ本当に、お兄様と婚約ができるの……?」
発覚した嬉しい事実に、胸にじわり、と温かいものが広がった。
お兄様の、お嫁さんになれる。その喜びが心を震わせる。
だけどそんなわたくしにお兄様は厳しい視線を向けた。
「……ねぇ、ビアンカ。思い出を胸に修道院に行くってなに? 僕が婚前に遊びで妹を抱いて捨てるような男だと思ったの?」
めずらしく強い語気でそう言ってお兄様は悲し気に眉を下げる。
そうだ。わたくしは中途半端に会話を盗み聞いて、勘違いをして、お兄様の真剣なお気持ちを踏みにじってしまったんだ。
……だけど……。
「だけど、わたくしだって真剣だったのですわ。お兄様と結ばれないのならせめて一度だけでもって……」
わたくしは込み上げる気持ちを堪えながら、ぎゅっと唇を噛みしめた。
「ねぇビアンカ。僕もね、『兄』だった頃から君を女性として愛していたよ」
お兄様はわたくしを抱き寄せ、額に優しく唇を落とした。
そして……ずっと欲しがっていた言葉をくれた。
女性として、愛していた? 本当に……? 嬉しい、嬉しすぎてどうになってしまいそう。
「兄妹だから結ばれないんだって思いながら過ごしていたのは……僕も、一緒。だからね、必死になって兄妹じゃない証拠を探したんだ。お父様にカマをかけても白状してくれなかったしね」
そう言ってお兄様は過去を思い返すような目をしてどこか苦い笑いを浮かべた。
「役所で過去の書類を探してもらったり、お父様とお母様の共通の知人を探したり……大変だったけれど証拠が見つかって本当によかったよ。じゃなければ『兄』の僕で……君に間違いを犯していたかもしれない」
それでも、お兄様と犯す間違いなら……わたくしは幸せだったのだと思う。
そんなことをしてしまったら一生罪悪感で苦しんだのだろう、優しいお兄様には言えないけれど。
「お父様は僕が証拠を見つけてきた時には驚いていたよ。僕のことを思って、一生隠し通すつもりだったみたいだから」
父様は自分の血を引いていないお兄様が負い目を感じずシュラット侯爵家を継げるように、ずっと隠していたのだろう。
父様も、優しい人だから。でも……。
「……父様の優しさのおかげで、遠回りになってしまったのね。内緒にしないで、小さな頃からわたくし達を許嫁にでもしてくれたらよかったのに」
拗ねたようにそう言うとお兄様はくすくすと愉快そうに笑った。
「許してあげてよ。お父様も色々と考えてからの決断だからね」
「……仕方ないですわね。一週間口をきかないでおくだけで許してあげますわ」
「天使に夢中なお父様が泣いてしまうよ」
「いいの! 父様なんか泣いて!」
お兄様と笑い合いながら、もつれるようにベットに倒れ込み、顔を合わせてまた笑う。
お兄様の体に目一杯腕を回して抱きつくと、子供の頃から知っているお兄様の香りと温かい体温がそこにあって。
そしてそれがずっと私の傍にあるんだと思ったら……悲しくないのに涙が込み上げて、お兄様の胸に頬をすり寄せ声を上げて泣いてしまった。
そんなわたくしの頭をお兄様は優しく撫で続け、時折旋毛にキスを落とした。
「お兄様、ずっと……ずっと一緒でいいのね」
しゃくりを上げながら問うとお兄様は優しく微笑んでから、確かに頷いた。
「ビアンカ、ずっと一緒だよ。それにもうお兄様じゃない。……アルフォンスと呼んで」
お兄様……ううん、アルフォンスの手がわたくしの頬を愛おしげに何度も撫でてから、唇に触れる。
アルフォンスの端正な顔が近づいて唇をそっと重ねられ、わたくしはその感触に陶然としながら目を閉じた。
「ビアンカ、愛してる。妹としてじゃないよ。女性としてちゃんと」
額を合わせ吐息がかかる距離で、アルフォンスの唇が愛を告げる。
「アルフォンス……わたくしも、わたくしもよ! アルフォンスのことが、男性として大好きなの!」
アルフォンスの首に腕を回してその唇に唇を合わせると彼は少し驚いた顔をしたけれど、応えるように優しく何度も啄むようなキスをした。
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