上 下
16 / 16
御曹司は懊悩する(栗生視点)

7

しおりを挟む
 ジャケットを首尾よく脱がせた僕は、べっとりと汚れたシャツに手をかける。

 ――女の子の服を脱がすのって、こんなに緊張することだっけ。

 そんなことを考えながらこくりと生唾を飲み、震える指先でシャツのボタンを外していく。すると……美也ちゃんの白い肌が少しずつ露わになっていった。
 毎日通勤しているはずなのに、美也ちゃんの肌は病的に白い。服の下の肌は表に出ているものよりさらに白く、血管が透けてしまいそうな錯覚さえ覚えた。
 浮いた鎖骨の側には小さなほくろがある。

「……綺麗だな」

 ぽつりとつぶやいてから、僕はそのほくろに吸い寄せられるように美也ちゃんの肌に唇で触れた。ざらりと舌で舐めると甘いのは、チョコなのか……美也ちゃん自身の味なのか。
 肌を舐めたり食んだりしながらシャツのボタンをすべて外して前を開く。すると量販店で買ったのだろう、インナーが姿を現した。ヒートなんたらとか言うやつだな。ぴったりとしていて、なんとも脱がせづらそうだ。
 防寒重視のインナーのデザインには、まったく色気がない。そして、そのことにむしろ興奮する。このインナーは、僕の知らない美也ちゃんの日常と繋がっているのだ。
 今日はふつうに出社して、ふつうに家に帰るつもりだったんだろうな。
 僕みたいな男と関わるなんて……夢にも思わずに。
 そんなことを考えて、最低な僕はさらに興奮してしまった。
 裾から手を入れて肌を撫でながらインナーを捲くり上げる。すると少しずつ、白い肌が暴かれていった。
 少しだけお肉がついたお腹は、脂肪が冷たくて柔らかい。華奢な彼女だけれど、運動はしていないんだろう。そんな感触がする。
 お腹の無防備な感触をたっぷりと堪能してから、インナーを一気に胸まで捲る。

「おお……」

 するとそこには、シンプルなブラに包まれた意外に大きな胸があった。野暮ったいスーツの下に、こんな素敵なものが隠されていたなんて。
 手を伸ばし、ブラに手をかけようとして……僕は必死に思い留まった。
 ――僕はあくまで、美也ちゃんの服が汚れていたから着替えさせようとしているだけなのだ。
 その建前の範囲を大幅に上回ることは、避けないとならない。彼女の信頼を、僕は勝ち取らなければならないのだから。

「……うん。我慢だ、僕」

 いろいろな感情を押さえ込み、お湯で濡らしたタオルを手にする。そしてチョコで汚れた口元を、まずはしっかりと拭う。首筋を、鎖骨を、胸の上のあたりを。あくまで紳士にを心がけつつ、僕は丁寧に拭っていった。
 ……少しだけ舐めたり吸ったりしたけれど。紳士の規範に収まっていると、僕は思っている。
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

natsucoma
2022.08.26 natsucoma

はじめまして!
作者様の他の作品と共に楽しく読ませて頂いています(*^^*)
美也ちゃんと部長のレストランでのやり取り、駆け引き?が面白くて!!美也ちゃんのオタクとしての葛藤など…同意出来る部分が多々あり(笑)(´艸`*) 悩みました笑笑

部長の忍耐も大変そうだけど頑張ってるのが可愛いですね(笑)
期限付きの3ヶ月の2人の新婚生活が楽しみでなりません(o´罒`o)
いつかイチャイチャする2人も見て見たい!!

更新される予定はあるのでしょうか?
ここでの「待て!」は悲しいです( ⌯᷄௰⌯᷅ )

解除
YUKI
2022.04.05 YUKI

続きが気になります!
ゆっくりでもいいので更新お願いします!

解除
、
2021.12.15

夕日さんの文章がとても好きで、ファンタジー以外は少し苦手であまり読まないのですが、夕日さんのだからと気になって読んでみました。最高でした。読んでいて楽しいです。
何よりとても読みやすい文章と物語の内容の面白さ、小説の中へ引き込まれる感じが本当に素敵です。
物語が完結せずに終わることもないので、安心して読めます。いつもありがとうございます…!
今回の小説も早く続きが読みたい!と思うようなわくわくがあって最高です。
無理せず、体調に気をつけてください。応援してます!

解除

あなたにおすすめの小説

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

レンタル彼氏がヤンデレだった件について

名乃坂
恋愛
ネガティブ喪女な女の子がレンタル彼氏をレンタルしたら、相手がヤンデレ男子だったというヤンデレSSです。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

【完結】大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした

あさリ23
恋愛
大学で人気の爽やかイケメンはなぜか私によく話しかけてくる。 しまいにはバイト先の常連になってるし、専属になって欲しいとお金をチラつかせて誘ってきた。 お金が欲しくて考えなしに了承したのが、最後。 私は用意されていた蜘蛛の糸にまんまと引っかかった。 【この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません】 ーーーーー 小説家になろうで投稿している短編です。あちらでブックマークが多かった作品をこちらで投稿しました。 内容は題名通りなのですが、作者的にもヒーローがやっちゃいけない一線を超えてんなぁと思っています。 ヤンデレ?サイコ?イケメンでも怖いよ。が 作者の感想です|ω・`) また場面で名前が変わるので気を付けてください

ヒョロガリ殿下を逞しく育てたのでお暇させていただきます!

冬見 六花
恋愛
突如自分がいる世界が前世で読んだ異世界恋愛小説の中だと気づいたエリシア。婚約者である王太子殿下と自分が死ぬ運命から逃れるため、ガリガリに痩せ細っている殿下に「逞しい体になるため鍛えてほしい」とお願いし、異世界から来る筋肉好きヒロインを迎える準備をして自分はお暇させてもらおうとするのだが……――――もちろん逃げられるわけがなかったお話。 【無自覚ヤンデレ煽りなヒロイン ✖️ ヒロインのためだけに体を鍛えたヒロイン絶対マンの腹黒ヒーロー】 ゆるゆるな世界設定です。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。