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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百七十九話
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「そういえば、ミスティさん弟が居るって言ってませんでしたか?」
辺境伯様達が居なくなった後、暇になって置物などを見ていたがふとアルージェが思い出す。
「あぁ、居るには居るんだがな。今は家に居ないだろう」
ミスティは言葉を濁す。
「というと?」
「色々とあってな、今何処にいるかわからないんだ。よくない輩と一緒にいるらしいんだが、父から言ってもどうしようもないらしくてな」
「そ・・・、そうなんですね。なんだか複雑で大変そうですね・・・」
「うむ、恥ずかしい限りだ」
「そ、そういえば家の中案内してくれませんか?」
エマが話を逸らそうと、ミスティにお願いする。
「あぁ、良いぞ。と言っても私も本館についてはそこまで詳しく無いんだがな」
「なら一緒に冒険しましょう!ほら、ルーネも何寝ようとしてるの!行くよ!」
アルージェは、ルーネの体を無理やり起こす。
「ワウゥ・・・」
ルーネはイヤイヤ起き上がり、アルージェ達についていく。
ミスティに本館を色々と案内してもらう。
流石貴族。
金持ちの家だ。
屋敷はかなり広いし、無駄に装飾が施されている置物が置いてある。
「すごいなぁ、ここに住んでたら迷子になりそうだ」
アルージェは話しながらチラリと窓から外を見ると、辺境伯の私兵だろうか。
鎧をガチャガチャと音を立てて訓練をしている人達がいた。
「どうした?気になるか?」
ミスティがアルージェの視線に気付き声をかける。
「そうですね。少し気になります」
「なら見学だけ行ってみるか」
「本当ですか!」
アルージェは目を輝かせる。
「あぁ、見るくらいなら別に構わないだろ」
ミスティからも許可が出たので訓練場を見学にいくことになる。
「あ、あのミスティさんちょっと・・・」
エマがミスティに声を掛けてからミスティの側まで近付き耳打ちをする。
「あぁ、それなこの角を曲がったとこにあるぞ。私もついて行こう。アルージェすまないが先に行っといてもらえるか?ルーネ。訓練場にはこの廊下をまっすぐ進んで、三個目の角を曲がっていけば着く。アルージェを案内してもらえるか?」
「ワウッ!」
ルーネはアルージェを背中に乗るように促し、先に訓練場に向かう。
訓練の邪魔にならないように端の方で見学していると、体が一番大きな男がルーネに気付き斧を構えて近づいてくる。
男はルーネに乗っているアルージェにも気付くが、武器を下ろすことはなかった。
「何者だ?ガキが来るような場所じゃ無いぞ」
アルージェが咄嗟に謝ろうとすると、遅れて来たミスティがアルージェを止める。
「なんだ貴様その口の聞き方は」
大男はミスティをじっくりと見る。
「も、もしかして、お嬢?い、いつ戻ってきてたんですか?」
先程の高圧的な態度は何処に行ったのか、大男は斧を下ろしてミスティと話している。
「今日だ。それにしても偉くなったものだな、スベン。私の客人に対してそんな態度とはな」
「い、いや、子供が来たら危ないと思ったんだ」
「えーと、あのー、ミスティさん・・・?」
アルージェがミスティの方を見る。
「あぁ、見苦しいところを見せたな。こいつはスベン。私が小さい時に訓練を付けてくれていた男だ」
「スベンだ」
スベンは無愛想に挨拶する。
ミスティがギロリとスベンを睨む。
「ぐっ・・・。よろしく頼む」
スベンはアルージェに右手を差し出す。
「初めまして、アルージェです。急に来てしまってすいません」
アルージェも握手に応じる。
「私の婚約者だ。くれぐれも粗相の無いようにな」
「あ、あぁ。それで一体どういう風の吹き回しで?お嬢がここにくるなんて、ほんと何年振りだか。婚約者自慢ですか?」
「まさか。アルージェが気になると言ったから見に来ただけだ」
「あはは、我儘言っちゃってすいません。皆さん動きが洗礼されていて、実戦を見据えて訓練しているんだなって思ったので、ついわがまま言っちゃいました」
アルージェは恥ずかしそうに頬を掻く。
「小僧、分かるのか?」
「はい!僕も皆さん程ではないですが、戦いに身を投じていますので!」
「なるほどな。少し小僧に興味が湧いた。一戦どうだ?もちろん死なないように手加減するように伝える」
アルージェは今日一番目を輝かせる。
「いいんですか!?是非!是非お願いします!」
「ミスティさん、また始まっちゃいましたよ?アルージェ君の発作。良いんですか・・・?」
「むー、まだ来て初日だからあんまり怪我とかしてほしくないんだが、あぁなってしまった以上、満足するまでやらせるしか無いだろう。何か別のことに興味を持たせれたらいいが、今の私達にアルージェの興味を引くものを提示出来ないからなぁ」
ミスティがエマに答える。
「そうですよねぇ・・・。あっ、でも今日で良かったかもしれません。怪我してもラーニャも居ますし」
「あぁ、確かにな。なら逆に今日満足するまで遊んでもらって、明日から落ち着いてもらう方が良いか」
「ワウゥ」
エマとミスティ、それにいつの間にか会話に入っていたルーネまでもが、アルージェが満足するまで遠巻きで見ることにする。
辺境伯様達が居なくなった後、暇になって置物などを見ていたがふとアルージェが思い出す。
「あぁ、居るには居るんだがな。今は家に居ないだろう」
ミスティは言葉を濁す。
「というと?」
「色々とあってな、今何処にいるかわからないんだ。よくない輩と一緒にいるらしいんだが、父から言ってもどうしようもないらしくてな」
「そ・・・、そうなんですね。なんだか複雑で大変そうですね・・・」
「うむ、恥ずかしい限りだ」
「そ、そういえば家の中案内してくれませんか?」
エマが話を逸らそうと、ミスティにお願いする。
「あぁ、良いぞ。と言っても私も本館についてはそこまで詳しく無いんだがな」
「なら一緒に冒険しましょう!ほら、ルーネも何寝ようとしてるの!行くよ!」
アルージェは、ルーネの体を無理やり起こす。
「ワウゥ・・・」
ルーネはイヤイヤ起き上がり、アルージェ達についていく。
ミスティに本館を色々と案内してもらう。
流石貴族。
金持ちの家だ。
屋敷はかなり広いし、無駄に装飾が施されている置物が置いてある。
「すごいなぁ、ここに住んでたら迷子になりそうだ」
アルージェは話しながらチラリと窓から外を見ると、辺境伯の私兵だろうか。
鎧をガチャガチャと音を立てて訓練をしている人達がいた。
「どうした?気になるか?」
ミスティがアルージェの視線に気付き声をかける。
「そうですね。少し気になります」
「なら見学だけ行ってみるか」
「本当ですか!」
アルージェは目を輝かせる。
「あぁ、見るくらいなら別に構わないだろ」
ミスティからも許可が出たので訓練場を見学にいくことになる。
「あ、あのミスティさんちょっと・・・」
エマがミスティに声を掛けてからミスティの側まで近付き耳打ちをする。
「あぁ、それなこの角を曲がったとこにあるぞ。私もついて行こう。アルージェすまないが先に行っといてもらえるか?ルーネ。訓練場にはこの廊下をまっすぐ進んで、三個目の角を曲がっていけば着く。アルージェを案内してもらえるか?」
「ワウッ!」
ルーネはアルージェを背中に乗るように促し、先に訓練場に向かう。
訓練の邪魔にならないように端の方で見学していると、体が一番大きな男がルーネに気付き斧を構えて近づいてくる。
男はルーネに乗っているアルージェにも気付くが、武器を下ろすことはなかった。
「何者だ?ガキが来るような場所じゃ無いぞ」
アルージェが咄嗟に謝ろうとすると、遅れて来たミスティがアルージェを止める。
「なんだ貴様その口の聞き方は」
大男はミスティをじっくりと見る。
「も、もしかして、お嬢?い、いつ戻ってきてたんですか?」
先程の高圧的な態度は何処に行ったのか、大男は斧を下ろしてミスティと話している。
「今日だ。それにしても偉くなったものだな、スベン。私の客人に対してそんな態度とはな」
「い、いや、子供が来たら危ないと思ったんだ」
「えーと、あのー、ミスティさん・・・?」
アルージェがミスティの方を見る。
「あぁ、見苦しいところを見せたな。こいつはスベン。私が小さい時に訓練を付けてくれていた男だ」
「スベンだ」
スベンは無愛想に挨拶する。
ミスティがギロリとスベンを睨む。
「ぐっ・・・。よろしく頼む」
スベンはアルージェに右手を差し出す。
「初めまして、アルージェです。急に来てしまってすいません」
アルージェも握手に応じる。
「私の婚約者だ。くれぐれも粗相の無いようにな」
「あ、あぁ。それで一体どういう風の吹き回しで?お嬢がここにくるなんて、ほんと何年振りだか。婚約者自慢ですか?」
「まさか。アルージェが気になると言ったから見に来ただけだ」
「あはは、我儘言っちゃってすいません。皆さん動きが洗礼されていて、実戦を見据えて訓練しているんだなって思ったので、ついわがまま言っちゃいました」
アルージェは恥ずかしそうに頬を掻く。
「小僧、分かるのか?」
「はい!僕も皆さん程ではないですが、戦いに身を投じていますので!」
「なるほどな。少し小僧に興味が湧いた。一戦どうだ?もちろん死なないように手加減するように伝える」
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「いいんですか!?是非!是非お願いします!」
「ミスティさん、また始まっちゃいましたよ?アルージェ君の発作。良いんですか・・・?」
「むー、まだ来て初日だからあんまり怪我とかしてほしくないんだが、あぁなってしまった以上、満足するまでやらせるしか無いだろう。何か別のことに興味を持たせれたらいいが、今の私達にアルージェの興味を引くものを提示出来ないからなぁ」
ミスティがエマに答える。
「そうですよねぇ・・・。あっ、でも今日で良かったかもしれません。怪我してもラーニャも居ますし」
「あぁ、確かにな。なら逆に今日満足するまで遊んでもらって、明日から落ち着いてもらう方が良いか」
「ワウゥ」
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