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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百六十一話
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エマはアルージェの無駄のない殺し方をぼーっと眺める。
「エマ大丈夫?」
返り血も浴びることなく、アルージェは短剣に付いた血を払う。
アルージェに声を掛けられ、エマはビクッと体を震わす。
「あっ、はい。すいません、ボーとしてしまって。アルージェ君の手際が良かったので驚いてただけです」
「ん?そうかな?昔、森での戦い方教えてもらったから、それかなぁ?」
「アルージェ君、色々と学びすぎじゃないですか・・・」
「あはは、まぁ気になったことは全部やろうって決めてるからね!さぁ、集落見つけよう」
ゴブリンを殺した場所から五分程歩いたところに集落を発見した。
「あれだね。入り口は・・・、あそこだけかな?」
ゴブリンの集落は、周りを岩壁に囲まれた場所に作られている。
アルージェとエマは高台から集落の様子を伺う。
「作戦なんだけど・・・?」
アルージェがエマから返事がないことを不審に思い、視線をエマに向ける。
エマは緊張で体が震えていた。
「エマ、大丈夫?」
震えるエマの手をアルージェが握る。
「怖かったら、ここで待っててもいいよ?」
エマはアルージェの手の温もりを感じ、少し震えがおさまる。
「これからのことを考えたら、ここで慣れないとダメですよね。アルージェ君ありがとうございます。落ち着きました」
「そっか、ならちゃっちゃっと終わらしちゃお!んで、フォルスタに戻ったら稼いだお金でミスティさんに内緒でご飯行こう!」
アルージェは自分の出来る範囲でエマを元気付ける。
「は、はい!」
アルージェはエマの体の震えが無くなったのを確認して、二つの作戦を提案する。
一つはアルージェが広域殲滅魔法を発動して、ほとんどのゴブリンを倒してから進む方法。
もう一つは姿を隠して一体ずつ確実に仕留めていく方法。
前者は時間をかけずに短期決戦で決着をつける方法なので、イレギュラーが発生する可能性が非常に高い。
後者は時間はかかるが確実に仕留めていくので、イレギュラーが発生する可能性が少ないが、集中力を欠いてしまえば失敗する。
「ア、アルージェ君は広域殲滅魔法を発動したら動けなくなりますか?」
「いや、動けなる程では無いと思う。けど、魔力の大半を消費するから怠くなって、少し動きは鈍くなるかもしれない」
「そうですか。なら、私がアルージェ君を守りながら戦います。だから広域魔法の準備お願いします」
「わかった。エマに僕の命預けるよ」
アルージェが体内の魔力を操作する。
エマは新魔法体系で魔法を学んだので、アルージェの中で膨大な量の魔力が動いているのが分かる。
「本当に綺麗」
アルージェの魔力を見て、エマは呟く
「よし、いつでも発動可能。集落全域に破裂する小球を降らせるね。魔法が終わったら、二人で中に入って全滅させよう」
「いつでも、いけます」
エマがアルージェをグッと見つめる。
「分かった。行くよ」
アルージェが練っていた魔力を解放して魔法を行使すると、数多の魔法陣が展開されてゴブリン集落の空を覆いつくす。
そして、全ての魔法陣から破裂する小球が降り注ぎ、ゴブリンの集落を襲う。
ゴブリン達は初め空の魔法陣をただ眺めているだけだった。
だが、そこからブラストボールが降ってきたことで攻撃だと認識する。
だが空からの攻撃に打つ手はなく、ただ一方的に破裂する小球の餌食になる。
「そろそろ魔法が終わるよ。エマ準備はいい?」
「はい!いつでもいけます」
障壁を出す魔法で拳も覆う手甲と脛当てを形作り、全身に軽微な身体強化を施す。
「行くよ!」
アルージェがエマの手を握る。
「な、何するんですか・・・?」
エマは首を傾げる。
アルージェは手を握ったまま走り出し、崖を飛び降りる。
「きゃー!!!!」
エマが絶叫する。
アルージェは魔力を操作して、徐々に落ちる速度を落としていく。
ふわりと着地してから、アルージェもアイテムボックスから斧と剣を取り出す。
そして身体強化を全身に施す。
魔法が収まり、ゴブリンの集落はひどい有様だった。
それでも生き残ったゴブリンが他のゴブリンを必死に救助していた。
だが、一匹のゴブリンが集落に猛スピードで近寄ってくる二人を見てゴブリンが叫ぶ。
他のゴブリンも叫び声に気付き、アルージェとエマを見て救助の手を止めて臨戦態勢になる。
「思ったより生き残ってるね。エマ、気を抜かないように」
「はい!アルージェ君も魔力少ないからって、やられたりしないでくださいね」
「うわっ!そんなこと言うんだ!さっきまでエマ震えてたじゃん!」
「し、知りません!」
エマは先行して障壁魔法を纏った拳でゴブリンを殴りつける。
ゴブリンは一撃で頭が凹み、絶命する。
ゴブリンがエマに集まる。
だが、エマは囲まれないように、常に一対一で戦えるように立ち回り。
一体ずつ確実に蹴りや殴りで仕留めていく。
刃物を持ったゴブリンに対しては手甲で刃物を受け流し、反撃をする。
だが、どれだけエマが一対一になるように立ち回ってもゴブリンは数で圧倒し、徐々にエマを囲んでいく。
そして一斉に攻撃して仕留めようとするが、後ろにも目が有るのではないかと思う動きでエマは後ろからの攻撃にもしっかり対応する。
ゴブリン達はエマに攻撃を当てられずに次々と仕留められる。
「エマ、いつの間にそんな武闘派に・・・。すごっ!」
アルージェは斧でゴブリンの刃物を受け流して、剣でゴブリンの首を斬りながらエマの活躍に驚く。
「エマ大丈夫?」
返り血も浴びることなく、アルージェは短剣に付いた血を払う。
アルージェに声を掛けられ、エマはビクッと体を震わす。
「あっ、はい。すいません、ボーとしてしまって。アルージェ君の手際が良かったので驚いてただけです」
「ん?そうかな?昔、森での戦い方教えてもらったから、それかなぁ?」
「アルージェ君、色々と学びすぎじゃないですか・・・」
「あはは、まぁ気になったことは全部やろうって決めてるからね!さぁ、集落見つけよう」
ゴブリンを殺した場所から五分程歩いたところに集落を発見した。
「あれだね。入り口は・・・、あそこだけかな?」
ゴブリンの集落は、周りを岩壁に囲まれた場所に作られている。
アルージェとエマは高台から集落の様子を伺う。
「作戦なんだけど・・・?」
アルージェがエマから返事がないことを不審に思い、視線をエマに向ける。
エマは緊張で体が震えていた。
「エマ、大丈夫?」
震えるエマの手をアルージェが握る。
「怖かったら、ここで待っててもいいよ?」
エマはアルージェの手の温もりを感じ、少し震えがおさまる。
「これからのことを考えたら、ここで慣れないとダメですよね。アルージェ君ありがとうございます。落ち着きました」
「そっか、ならちゃっちゃっと終わらしちゃお!んで、フォルスタに戻ったら稼いだお金でミスティさんに内緒でご飯行こう!」
アルージェは自分の出来る範囲でエマを元気付ける。
「は、はい!」
アルージェはエマの体の震えが無くなったのを確認して、二つの作戦を提案する。
一つはアルージェが広域殲滅魔法を発動して、ほとんどのゴブリンを倒してから進む方法。
もう一つは姿を隠して一体ずつ確実に仕留めていく方法。
前者は時間をかけずに短期決戦で決着をつける方法なので、イレギュラーが発生する可能性が非常に高い。
後者は時間はかかるが確実に仕留めていくので、イレギュラーが発生する可能性が少ないが、集中力を欠いてしまえば失敗する。
「ア、アルージェ君は広域殲滅魔法を発動したら動けなくなりますか?」
「いや、動けなる程では無いと思う。けど、魔力の大半を消費するから怠くなって、少し動きは鈍くなるかもしれない」
「そうですか。なら、私がアルージェ君を守りながら戦います。だから広域魔法の準備お願いします」
「わかった。エマに僕の命預けるよ」
アルージェが体内の魔力を操作する。
エマは新魔法体系で魔法を学んだので、アルージェの中で膨大な量の魔力が動いているのが分かる。
「本当に綺麗」
アルージェの魔力を見て、エマは呟く
「よし、いつでも発動可能。集落全域に破裂する小球を降らせるね。魔法が終わったら、二人で中に入って全滅させよう」
「いつでも、いけます」
エマがアルージェをグッと見つめる。
「分かった。行くよ」
アルージェが練っていた魔力を解放して魔法を行使すると、数多の魔法陣が展開されてゴブリン集落の空を覆いつくす。
そして、全ての魔法陣から破裂する小球が降り注ぎ、ゴブリンの集落を襲う。
ゴブリン達は初め空の魔法陣をただ眺めているだけだった。
だが、そこからブラストボールが降ってきたことで攻撃だと認識する。
だが空からの攻撃に打つ手はなく、ただ一方的に破裂する小球の餌食になる。
「そろそろ魔法が終わるよ。エマ準備はいい?」
「はい!いつでもいけます」
障壁を出す魔法で拳も覆う手甲と脛当てを形作り、全身に軽微な身体強化を施す。
「行くよ!」
アルージェがエマの手を握る。
「な、何するんですか・・・?」
エマは首を傾げる。
アルージェは手を握ったまま走り出し、崖を飛び降りる。
「きゃー!!!!」
エマが絶叫する。
アルージェは魔力を操作して、徐々に落ちる速度を落としていく。
ふわりと着地してから、アルージェもアイテムボックスから斧と剣を取り出す。
そして身体強化を全身に施す。
魔法が収まり、ゴブリンの集落はひどい有様だった。
それでも生き残ったゴブリンが他のゴブリンを必死に救助していた。
だが、一匹のゴブリンが集落に猛スピードで近寄ってくる二人を見てゴブリンが叫ぶ。
他のゴブリンも叫び声に気付き、アルージェとエマを見て救助の手を止めて臨戦態勢になる。
「思ったより生き残ってるね。エマ、気を抜かないように」
「はい!アルージェ君も魔力少ないからって、やられたりしないでくださいね」
「うわっ!そんなこと言うんだ!さっきまでエマ震えてたじゃん!」
「し、知りません!」
エマは先行して障壁魔法を纏った拳でゴブリンを殴りつける。
ゴブリンは一撃で頭が凹み、絶命する。
ゴブリンがエマに集まる。
だが、エマは囲まれないように、常に一対一で戦えるように立ち回り。
一体ずつ確実に蹴りや殴りで仕留めていく。
刃物を持ったゴブリンに対しては手甲で刃物を受け流し、反撃をする。
だが、どれだけエマが一対一になるように立ち回ってもゴブリンは数で圧倒し、徐々にエマを囲んでいく。
そして一斉に攻撃して仕留めようとするが、後ろにも目が有るのではないかと思う動きでエマは後ろからの攻撃にもしっかり対応する。
ゴブリン達はエマに攻撃を当てられずに次々と仕留められる。
「エマ、いつの間にそんな武闘派に・・・。すごっ!」
アルージェは斧でゴブリンの刃物を受け流して、剣でゴブリンの首を斬りながらエマの活躍に驚く。
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