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第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜

第百五十六話

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アルージェは村を出てからの話をかい摘んで話した。
ルーネとの出会い、フォルスタで冒険者になったこと。
ミスティとマイアとの出会い。
付与魔法が気になって、魔法学校を目指して王都に行った事。
魔法学校に入学して、エマと出会った事。

「そっかぁ、アルはいつの間にか遠いところにいっちゃったのね」
サーシャは嬉しそうに、アルージェに微笑みかける。

「ははは、すごいじゃないか!さすが俺達の息子だ!」
フリードは息子の冒険を楽しそうに聞いていた。

「ふふふ、そうね。さすが私達の息子ね!それで、アルはゆっくりしていけるの?」
サーシャは顎に指を置き小首を傾げる。

「うん!ゆっくりする予定だよ!ゴブリンも倒しに行かないといけないし」
受注書をアイテムボックスから取り出す。

「えっ!?今年はアルがその依頼受けたの?大丈夫なの?戦えるの?」

「どうだろう?まぁ、僕が無理でもアインさん達もいるからね」

「おっ?それなら、父さんと打ち合いとかどうだ?ゴブリンに勝てるか試してやるよ!」

「父さんと打ち合い!?やりたい!」

「よし、きた!木剣もあるし、久しぶりに親子水入らずの打ち合いやるか!」

「うん!」
アルージェはフリードについて、裏の畑のほうに行く。

「ねぇ、父さん。師匠は元気かな?」

「ん?あぁ、グレンデ爺さんのことか。そうだな、まだまだピンピンしてるな。最後会った時はアルには負けてられんってかなり張り切ってたな」
フリードは最後に会った時の事を思い出しながら話す。

「そっか!元気か!よかった!」

「また、明日にでも会いにいけばいいさ!それより、構えな。婚約者たちの前一瞬で倒されたら恥ずかしいぞ」
フリードはニヤニヤしながらアルージェを挑発する。

「ぐっ、確かにそうだね。息子を立てる為にワザと負けてくれてもいいんだよ?」
アルージェが木剣を構える。

「ははは、俺も母さんの前で負けるわけには行かないからな!よし!それじゃあ、はじめ!」

フリードの掛け声と同時にアルージェが身体強化魔法を全身に施す。
そして、フリードとの距離を一瞬で詰める。

「おぉ、身体強化は出来るのか!」
フリードは驚いたが、軽く受け流し同じく身体強化を付与する。

フリードはニヤリと笑い、そのまま何合も打ち合う。
「まさか、ここまで強くなったとはな!父さん嬉しいぞ!」

「まだまだこんなもんじゃないよ!」
アルージェは自分の成長をフリードに見せつけるように、何度もフリードに打ち込む。

「あらあら、二人とも張り切っちゃって。ほんと男の人っていつまで経っても子供なんだから」
サーシャはニコニコしながら二人の戦いを見ている。

「義母様から見て、どちらが勝ちそうですか?」
ミスティが椅子に座っているサーシャに紅茶を差し出す。

「あら!ミスティちゃん!ありがとうね!そうねぇ、今回は引き分けかしらね」
サーシャはミスティに差し出された紅茶を受け取る。

「ひ、引き分けですか?」
エマが聞き返したときに、二人が持っていた木剣が衝撃に耐えきれず折れる。

「ふふふ、こういうことよ」

「まさか剣が折れるとは。義母様も剣を嗜むのですか?」

「そうねぇ。もう全盛期程の速さで振ることはできないけど、まだまだあの二人には負けなそうね」

「もしかして義父様よりも義母様のほうが・・・?」

「シーッ、それ以上はいわないの」
サーシャは人差し指を立てて、ウィンクする。

「いやぁ、まさか木剣が折れるとはな!アル、ほんとに成長したな!」
フリードが折れた剣を見て、アルージェに近づき頭を撫でる。

「まだまだこんなもんじゃないよ!魔法も使えるからね!」

「おぉ、それならゴブリンくらい余裕だろうな!サーシャ!アルの成長みたかー?本当に強くなってるぞ!」
フリードは椅子に座って見ていた、サーシャに手を振る。

「はいはい、見てますよー」
サーシャも手を振って返す。

「父さんも母さんも鼻が高いぞ!木剣もなくなったし今回はこれくらいにしておこう」

「はーい」
アルージェは先に家に戻る。
フリードは折れた木剣を拾い、家に戻る。

ルーネにべたべたしていたマールがアルージェに駆け寄ってくる。

「にぃにぃ!私と遊ぼー?」
マールはアルージェに抱き着きながら、上目遣いでアルージェを見る。

「おっ!いいよ!何かしたいことある?」

「あのね、暑いから川に行こ!」

「川か、いいね!汗流したかったし!ちょっとマールと川に行ってくるよ」

「おっ、パパも行こうかなぁ」
折れた木剣をゴミ捨てに置いて戻ってきたフリードがついていこうとする。

「やっ!」
だがマールはフリードを拒否する。

「ガーン!?」
フリードはショックを受けて、膝から崩れ落ちる。

「えぇ、父さんはいやなの?」
アルージェはマールのあまりに直接的な物言いに慌てる。

「うん!にぃにぃと行きたい!」
マールは眩しいほどに満面の笑みを浮かべる。

「あはは、なら二人で行こうか・・・、ルーネは?」
アルージェはフリードを不憫に思い、乾いた笑いが出てしまう。

「ワンワンは一緒にいく!」

「ルーネ!ご指名だぞ!」
マールが離れてようやく落ち着いたルーネは寝転がって寝ようとしていた。
だが、アルージェがルーネを呼ぶと起き上がり、やれやれとアルージェ達についていく。

「二人とも気を付けてねー。ルーネちゃんも二人をお願いねー」
サーシャはついていこうとするフリードを制止しながら、二人と一匹に手を振る。

アルージェはマールを抱っこしてルーネに乗せてから、アルージェもルーネに跨る。

「ルーネ、大丈夫?」

「バウッ!」
これくらい余裕だとルーネから念が飛ばされる。

「なら、川までお願いね!」

ルーネは鼻息を荒くして、川に向けて出発する。
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