上 下
122 / 221
第三部 〜新たな力〜

第百二十話

しおりを挟む
「付与の解除?そりゃまたどうして?」

「そ、それは、気にしないで大丈夫です!」
エマはアルージェから顔を逸らして話す。

「んー?まぁいいや。ちなみにだけど、もちろんそのペンダントを傷つけず、壊さずに付与解除ディスエンチャントしたいんだよね?」

「そ、そうです」
エマが頷く。

「解除かー、今まで付与することばかりで考えたことなかったなー。よし!ちょっと面白そうだから僕も混ぜてもらっていい??」

「も、も、もちろんです!というか一緒に考えて欲しくて、ここで待ってました!」

「あっ、そうなんだ、ごめんね待ってもらって」
アルージェは両手を合わせて謝る。

「い、いえ、ミスティさんに相談したらアルージェ君と考えてみたらって言われて、それでどうしても今日会いたくて、勝手に待ってたのは私なので」

「あっ!でも、これから攻撃魔法研究会ってところにも顔出すから付きっきりはちょっと難しいかも」
アルージェは拳で掌を叩いて、思い出したように話す。

「むっ?それは初耳だ。そんな話全く聞いていないぞ」
二人の時間だからと遠慮して会話に参加していなかったミスティが紅茶を置いて、会話に混ざる。

「あぁ、すいません今日決めたことで、まだ報告できてなかったですね。どこから話したらいいか」
アルージェは今朝素振りをしていたことから話し始める。

「ふむ、食堂でちょっかいを掛けてきた貴族か・・・、そこまでされたらもう何もしてくることはないと思うが、念のためそちらは私の方で手を打っておこう」

「ミスティさん!ありがとうございます!最高にかっこいいです!」

「か、かっこいいか・・・。まぁ素直に受け取っておこう。後は攻撃魔法研究会か、あまり覚えていないがアルージェと一緒にこの学校に来た時、話しかけてきた男が居たな。名はディビック・・?といったか?確かその男が攻撃魔法研究会がどうとか言っていたな」
ミスティは初めて学園に来た時のことを思い出しながら話す

「おぉ!覚えてるんですね!そうです、貴族を倒した後逃げないとって思ってたら、ちょうど近くに居たみたいで、その人に助けてもらって成り行きで攻撃魔法研究会に行きました」

「なるほどな。確かに毎朝誰かをイメージして素振りをしているのは見ていたが、相手が出来ると言うのはいいことかもしれないな」

「うぅ・・・、先に気付いていれば二人の時間をもっと作れたのに・・・」
エマはぶつぶつと言って何か悲しんでいる。

「ということで、しばらくは勉学と戦闘訓練もしときますので、少し忙しくなります」
アルージェが二人に話している時、ルーネがミスティの方に移動していく。

そして、ルーネはミスティに「ワウワウ」と何かを訴える。

「ん?それなんか前に聞いたような気がするぞ・・・?」
アルージェがルーネの吠え方を聞いて「なんだったかな」と思い出す。

「な、なんだと!?」
ミスティが声を上げる。

「アルージェ、また婚約者候補をみつけてきたのか!?」
ミスティがアルージェに詰め寄る。

「ど、どういうことですか!」
それを聞いてエマもアルージェに詰め寄る。

「いや、あの、またって、まだ一度も見つけてきたことはないですが・・・」
アルージェは二人の言葉を否定するとルーネがディビックのことだと教えてくれる。

「ん?ディビックさん?いやあの人、男なんだけど?」
アルージェがルーネの言葉に驚く。

「お、男だと!?アルージェお前は、そ、そっちもイケるくちなのか!」
ミスティがさらに声を上げ驚く。

「ちょっと待ってください!勘違いですよ!確かにディビックさん妙に距離感近いなと思ってましたが多分元々距離感が近い人とかそういうやつですよ!」
アルージェはアワアワとしながら必死に誤解を解く。

「人たらしのアルージェ様、恐ろしい子」
マイアさんはボソッと呟く。

アルージェの必死の説得で、なんとかミスティとエマに誤解だと分かってもらえた。

「わ、私はアルージェが望むならいつでもけ、結婚できるからな」
ミスティがさりげなくアルージェにアピールする。

それに続いてエマも「わ、私だって」と謎に張り合う。

「何言ってんですか!そんなこと言われたら本気にしちゃいますよ!ミスティさんは綺麗だし、エマは可愛いし、もっといい人見つかりますって!僕みたいな人選ぶなんて相当物好きしかいないと思うので、いつでも在庫処分みたいなもんですよ。ハハハハッ!」
アルージェが自分の部屋に戻りながら二人に言う。

「さーて、エマの首飾りに付与された魔法の付与解除ディスエンチャント方法探さないとなぁ!」
自分の部屋の椅子に座り、付与魔法についてまとめたノートを読み返し始める。

「むむむ、ここまで言ってダメか・・・、アルージェは本当に手強い」

「はい・・・、鈍感というか、空気を読めないというか」


「でも、お二人ともそんなアルージェ様がお好きなのでしょう?」
とマイアが尋ねると顔を赤くする。

ミスティもエマも恋愛どころか人とのコミュニケーションを最近までまともに取ったこと無かったのだから、ここまでよく進化したものだがアルージェはかなり手強かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

処理中です...