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問3 条件による分岐を辿れ
答3-6
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「よう、来たぞカグツチ」
俺は屋根の上に這い上がると、かかってこいよ、とボディランゲージを決めてカグツチを挑発する。
ネクロのAIは独自のアルゴリズムに従って人間じみた思考を獲得しているため、こういうのが非常に効く――などということは全くないので、ただの自己満足だ。
男の子が屋根の上に登ったら、やっぱテンションも上がってついノッちゃうよね。
「おいりょーちん、カッコつけてる時間はねーぞ!」
「やべ、見てた?」
「見てるわっ! お前のアクションからだろ!? もう俺らの準備は出来てるぞ!」
本堂を見下ろすと、3人は残りの雑魚を掃討しながら俺の方を向いていた。
「んじゃ、よろしくお願いしまーす!」
俺は手札から【ピコピコハンマー】をアクティブ化する。
まずはこれを……っ!
「そぉらッ!」
ぐるん、と砲丸投げの要領で放り投げた。
【ピコピコハンマー】
アバターの2倍ほどの大きなおもちゃのハンマーを模したガジェットカードだ。
使用方法はただぶん殴るだけ、というシンプルな武器だ。特徴は大きさの割に重量が非常に軽い事で、誰でも簡単に振り回せる。
その割にエネミーにはしっかり見た目の質量通りのダメージ判定があるので、まあ普段はあまり使わないタダ強カードに類する。
ぐおんぐおんと回りながら、ハンマーはカグツチにはかすりもせず遥か彼方へ飛んでいく。
これは予定通りだ。なんのステータス修正も無く、そんな遅い攻撃が上空の動き回るエネミーに当たるわけがない。
俺は飛んでいったハンマーとカグツチを結ぶ延長線上にすばやく移動すると、既に起動していた【強引な誘引】のアクションを行う。
右手の指先をくいっと曲げる。効果によって引っ張られたハンマーが、高速で俺に向かって引き寄せられる。
それはつまり、その間にいるカグツチの背後から大質量の物体が襲いかかるのと同義だ。
「よっしゃクリーンヒットオォォ!!」
ハンマーはカグツチの背中から豪快に当たり、ピコッとまた間抜けな音を響かせた。
AIは特定のアクションパターンを持ち、それとは別に奴の視界に映る攻撃は避けるように動いているのは確かだった。
まさか、後ろからの攻撃までがプログラミングされているとは考えにくい。というかこんなん避けられたら詰む。
大打撃が入ったおかげか一瞬止まっていたカグツチに向かって、下からは彼女が射出されていた。
「そーらもう一回だぞー!」
下から飛んできたみずちがもう一発ハンマーを叩き込むべくカグツチに襲いかかる。
しかしそれはわずかなタイミングのズレで回避されてしまった。
「ありゃ?」
「いや、ナーイスみずっち!!」
避ける方向に先回りするように、チョッキの剣が走っていた。
サクサクッ、と4本の剣がカグツチの左半身に刺さる。
グワオオ、とカグツチがうめき声を上げた。
前口上の時はよく喋るくせに、いざ戦闘が始まると全くの無口になっていたカグツチなだけに、ちょっとびっくりする。
「ほーい今度こそぉー、もう、いっ、かい!」
外れて通り越してしまったものの、引力によって落ちてきたみずちが、その体をぐるんと前転させながらカグツチの脳天に向かってハンマーを振り下ろした。
ビィゴッ! と、あまり聞き慣れない音が出た。ハンマーの音バグか?
あまりのパワーにカグツチの首が胴体に少しめり込んでいる。
みずちは落下せずにカグツチの体に生えたチョッキの剣にぶら下がって掴まると、至近距離から攻撃カードを連打した。
「ごめん! これでロストアクション! 降りるよー!」
「いや、よくやったみずっち!」
これでようやくカグツチのライフは半分を切った。
まだ半分か。なんとかここから落とせるか?
と、俺の心配をよそに、カグツチが纏っていた炎が消えた。
「おっ?」
「ステージ変化、入りました!」
下からミューミューの声が届く。見下ろすと、本堂で燃え盛っていた炎が嘘のように消えていた。
同時に、カグツチも目を閉じてゆっくり落下していく。
なるほど、条件はライフの半分か。
降りたら奴も本気を出すってところだろ? 空飛ぶ敵にありがちなやつだな。
だが、そうはさせない。
「ちょーっと待ってくれよ、カグツチさん?」
俺は四肢を地につけ、吠える。
【獣王の咆哮】
あー、ミューミューにも見られた。やだなー、これ。
俺が吠えている間はボーナスステージだ。
宙で止まったカグツチに、攻撃は当て放題になる。
チョッキとミューミューが手札の攻撃カードを惜しげもなく切っていく。
光線が、水流が、爆発がカグツチを襲う。
いいねぇ、ゴリゴリ削れてるぞ?
俺が息を切らし、咆哮が止まった。
まだだ。あと2割。
「りょーちん、やっちゃえ!」
あと僅かで本堂に降り立つカグツチに、俺は上から飛び降りながら【強引な誘引】で手元に戻してあったピコピコハンマーを放り投げる。
そしてタイミングよくハンマーの上に自分が来るようにジャンプすると、【踏み込む独歩】をアクティブ化させた。
これ、自分で殴るよりダメージ出るんだよね、実は。
武器型のガジェットカードは、攻撃カードの効果が上乗せ出来る。
【斜斬】などの斬撃系カードは剣のガジェットカードを持った状態で振るうと、威力がその分加算された上に属性一致のボーナスがさらに乗ったダメージが出る。
【踏み込む独歩】のダメージの属性は「打撃」だ。手に持っているわけではないが、ピコピコハンマーに足が触れている状態でこれを撃つと――
ビゴンッ! とまたバグったような大きな音を出しながらハンマーがカグツチに打ち据えられた。
俺もこれで手札を使い切った。
全員ロストアクション状態で、カグツチが焦げが残る木の床にみしりと降り立つ。
これで終わってくれれば楽だったんだけどなぁ。
1割を切った僅かなライフを残し、カグツチの瞼がゆっくり上げられた。
俺は屋根の上に這い上がると、かかってこいよ、とボディランゲージを決めてカグツチを挑発する。
ネクロのAIは独自のアルゴリズムに従って人間じみた思考を獲得しているため、こういうのが非常に効く――などということは全くないので、ただの自己満足だ。
男の子が屋根の上に登ったら、やっぱテンションも上がってついノッちゃうよね。
「おいりょーちん、カッコつけてる時間はねーぞ!」
「やべ、見てた?」
「見てるわっ! お前のアクションからだろ!? もう俺らの準備は出来てるぞ!」
本堂を見下ろすと、3人は残りの雑魚を掃討しながら俺の方を向いていた。
「んじゃ、よろしくお願いしまーす!」
俺は手札から【ピコピコハンマー】をアクティブ化する。
まずはこれを……っ!
「そぉらッ!」
ぐるん、と砲丸投げの要領で放り投げた。
【ピコピコハンマー】
アバターの2倍ほどの大きなおもちゃのハンマーを模したガジェットカードだ。
使用方法はただぶん殴るだけ、というシンプルな武器だ。特徴は大きさの割に重量が非常に軽い事で、誰でも簡単に振り回せる。
その割にエネミーにはしっかり見た目の質量通りのダメージ判定があるので、まあ普段はあまり使わないタダ強カードに類する。
ぐおんぐおんと回りながら、ハンマーはカグツチにはかすりもせず遥か彼方へ飛んでいく。
これは予定通りだ。なんのステータス修正も無く、そんな遅い攻撃が上空の動き回るエネミーに当たるわけがない。
俺は飛んでいったハンマーとカグツチを結ぶ延長線上にすばやく移動すると、既に起動していた【強引な誘引】のアクションを行う。
右手の指先をくいっと曲げる。効果によって引っ張られたハンマーが、高速で俺に向かって引き寄せられる。
それはつまり、その間にいるカグツチの背後から大質量の物体が襲いかかるのと同義だ。
「よっしゃクリーンヒットオォォ!!」
ハンマーはカグツチの背中から豪快に当たり、ピコッとまた間抜けな音を響かせた。
AIは特定のアクションパターンを持ち、それとは別に奴の視界に映る攻撃は避けるように動いているのは確かだった。
まさか、後ろからの攻撃までがプログラミングされているとは考えにくい。というかこんなん避けられたら詰む。
大打撃が入ったおかげか一瞬止まっていたカグツチに向かって、下からは彼女が射出されていた。
「そーらもう一回だぞー!」
下から飛んできたみずちがもう一発ハンマーを叩き込むべくカグツチに襲いかかる。
しかしそれはわずかなタイミングのズレで回避されてしまった。
「ありゃ?」
「いや、ナーイスみずっち!!」
避ける方向に先回りするように、チョッキの剣が走っていた。
サクサクッ、と4本の剣がカグツチの左半身に刺さる。
グワオオ、とカグツチがうめき声を上げた。
前口上の時はよく喋るくせに、いざ戦闘が始まると全くの無口になっていたカグツチなだけに、ちょっとびっくりする。
「ほーい今度こそぉー、もう、いっ、かい!」
外れて通り越してしまったものの、引力によって落ちてきたみずちが、その体をぐるんと前転させながらカグツチの脳天に向かってハンマーを振り下ろした。
ビィゴッ! と、あまり聞き慣れない音が出た。ハンマーの音バグか?
あまりのパワーにカグツチの首が胴体に少しめり込んでいる。
みずちは落下せずにカグツチの体に生えたチョッキの剣にぶら下がって掴まると、至近距離から攻撃カードを連打した。
「ごめん! これでロストアクション! 降りるよー!」
「いや、よくやったみずっち!」
これでようやくカグツチのライフは半分を切った。
まだ半分か。なんとかここから落とせるか?
と、俺の心配をよそに、カグツチが纏っていた炎が消えた。
「おっ?」
「ステージ変化、入りました!」
下からミューミューの声が届く。見下ろすと、本堂で燃え盛っていた炎が嘘のように消えていた。
同時に、カグツチも目を閉じてゆっくり落下していく。
なるほど、条件はライフの半分か。
降りたら奴も本気を出すってところだろ? 空飛ぶ敵にありがちなやつだな。
だが、そうはさせない。
「ちょーっと待ってくれよ、カグツチさん?」
俺は四肢を地につけ、吠える。
【獣王の咆哮】
あー、ミューミューにも見られた。やだなー、これ。
俺が吠えている間はボーナスステージだ。
宙で止まったカグツチに、攻撃は当て放題になる。
チョッキとミューミューが手札の攻撃カードを惜しげもなく切っていく。
光線が、水流が、爆発がカグツチを襲う。
いいねぇ、ゴリゴリ削れてるぞ?
俺が息を切らし、咆哮が止まった。
まだだ。あと2割。
「りょーちん、やっちゃえ!」
あと僅かで本堂に降り立つカグツチに、俺は上から飛び降りながら【強引な誘引】で手元に戻してあったピコピコハンマーを放り投げる。
そしてタイミングよくハンマーの上に自分が来るようにジャンプすると、【踏み込む独歩】をアクティブ化させた。
これ、自分で殴るよりダメージ出るんだよね、実は。
武器型のガジェットカードは、攻撃カードの効果が上乗せ出来る。
【斜斬】などの斬撃系カードは剣のガジェットカードを持った状態で振るうと、威力がその分加算された上に属性一致のボーナスがさらに乗ったダメージが出る。
【踏み込む独歩】のダメージの属性は「打撃」だ。手に持っているわけではないが、ピコピコハンマーに足が触れている状態でこれを撃つと――
ビゴンッ! とまたバグったような大きな音を出しながらハンマーがカグツチに打ち据えられた。
俺もこれで手札を使い切った。
全員ロストアクション状態で、カグツチが焦げが残る木の床にみしりと降り立つ。
これで終わってくれれば楽だったんだけどなぁ。
1割を切った僅かなライフを残し、カグツチの瞼がゆっくり上げられた。
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