フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい！

連載

第80話 例のあのトースト

「チーズが凄いことになってるな。こんな状態のチーズは初めて見た」

「私もここまで見栄え良くなるとは思いませんでした。……もしかしたら、チーズがすごいとろけやすいものなのかもしれませんね」

　キャンプの朝食として、私は某アニメに出てくるようなとろけるチーズを上にのせたトーストを作った。

　私は前世でも挑戦をしたことはあったのだが、某アニメの物ほどチーズがとろけるようなものを作ることができなったのだ。

　確か、テレビでも某アニメのあのチーズをまねようとしていたけれど、上手くいかなかった気がする。

　そう、あの時はあのとろけるチーズはフィクションだったのかと少し落ち込んだものが、あの頃憧れていた食べ物にこうして出会えるなんて思いもしなかった。

　この世界のチーズにここまでの可能性があるとは思わなかったなぁ。

「アンよ、この料理には何かかけるのか？」

「いえ、これはこのままいきます。とろけるチーズを食べるための料理だと思ってください」

　ただの味だけで言えばピザトーストのようにケッチャプをかけた方が美味しいかもしれない。

　それでも、このトーストだけは何もかけないで食べるのが正解な気がする。

　ただの味だけでなく、憧れも一緒に食べるものだと私は思うのだ。

「それでは、冷めないうちにいただきましょう」

　せっかくとろとろにしたチーズも、時間経過によって熱が冷めてしまっては元の形に戻ろうとするだろう。

　そんなことをしてしまっては、勿体なさすぎる。

　そう思った私は会話をそこそこに、さっそくとろけさせたチーズの表面に少しだけ息を吹きかけてから、下にあるパンごと一口頬張った。

「んんっ、こ、これはっ……」

　とろとろのチーズの濃厚な香りと少しの塩気が程よく、そこにパンのカリっとした触感と小麦の風味が広がってくる。

　シンプル過ぎる料理と言っていいのか分からない料理。それなのに、手間暇かけて作った料理を大きく上回るだけのポテンシャルがそこにはあった。

「うまっ！　熱々のチーズが……ほらっ、こんなに伸びるぞ！」

「まさか、ここまでの風味があるとは。このチーズという物はハマりそうだ」

　エルドさんもシキもとろとろのチーズに驚きながら感動していたようだった。

　エルドさんがピザのコマーシャルのようにチーズを伸ばしていたのを見て、私も急いで
それを真似てみた。

　す、凄い伸びる。それに、本当にチーズだけで他の味付けをしないで食べられるみたい。

　何もつけないでも食べられるのは、この世界の食料の材料の元のポテンシャルあってかもしれない。

　これは、本当に癖になりそうな美味しさだ。

　簡単なお茶とシンプルな某アニメに出てくるようなトーストを食べて、私たちはキャンプでの朝をとても優雅に過ごすことができた気がした。

　……今度、エルドさんの家の外でも作ろうかな。

　自然とそんなことを本気で考えてしまうくらいの感動を抱きながら、私は幸せと共にそのトーストの味を噛みしめたのだった。