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第14話 お兄様との休日
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「また休みの日にこうして、エリ―とお出かけする日が来るとはね」
ルークをデートに誘った数日後に訪れた休日。私達は馬車で学園から近くにある街に向かっていた。
デートと言っても、兄妹としてのお出かけでしかないが、何となく互いにぎこちなさがあるような気がした。
そういえば、二人きりでルークと会話をしたことはあまりないかもしれない。
それこそ、私が魔物に襲われかけた日に私の部屋に来て以来な気がする。
私は向かい合って座った馬車の中の会話をどうやって展開させるか考えながら、先程のルークの言葉を思い出していていた。
『また』ということは、以前にもエリ―とルークは休日に出かけていたということだ。でも、その言葉回しからはお出かけに誘われたことが意外みたいな感じだった。
……もしかして、エリ―とルークの間で何かあったのかな?
そんなことを考えてみたが、何があったのかまるで分らなかったので、私は小首を傾げたまま口を開いた。
「私がお誘いしたのは、そんなに意外ですか?」
「驚くところはあるけど嬉しいよ」
そんな言葉を口にしたルークは優しい笑みを浮かべていたが、その笑みにはどこか影があるような気がして、私はまた上手く言葉を返すことができなくなっていた。
本当に、この二人の間には何があったんだろう。
ゲームに登場してこなかった二人にどんな物語があるのか、それはゲームしかプレイしていなかった私には分からないことだった。
「それで、今日はどこに行きたいんだ?」
「へ? えっと、街の方に」
「いや、街に行くのは知っているけど、どの店に行きたいとかあるんじゃないのか?」
「え……」
今回の目的はルークのことを深く知ること。そして、何かを隠しているような表情が何なのかを探ること。
だから、すっかり抜けていたのだ。
街に行ってからどこに行くとか、何をするのかとか。
だ、だって、これから行く街のことなんてゲームで見たイベントCG以外知らないし。
「……決めていないのか?」
「そ、その、お兄様とお出かけしたかっただけで、特に行先とかは決めてませんでした」
さすがにノープランだとは思っていなかったのか、ルークは私の言葉を受けて目をぱちくりとさせていた。
休日に連れ出しておいて、何も考えてなかったって言うのはさすがに失礼な気がするし、それなら本当のことを告げてしまった方がいいかもしれない。
そう思った私は、少しの間を置いた後にぽろっと言葉を漏らした。
「お兄様の学校でのこととか、色々改めて聞きたいなと思いまして」
「改めて、か。そうだね。俺もエリ―の学校でのこととか聞いてみたいかな」
「私のことですか?」
「ロドル王国の第二王子レイラ―様、魔法省のトップの息子のエルドナ、国家騎士団の息子のマイネルに、レイラ―様の婚約者のクリス様。少し見ないうちに、人脈作りのプロになったみたいだしね」
おどけるようにそんな言葉を口にしたルークは、少しの笑みを浮かべていた。
口元と目元を微かに緩めただけの笑みだったのだけれど、普段影がありそうなルークがそんな笑みをすると、いつものギャップで妙にその笑顔が魅力的に映った。
「エリ―? 顔が赤くないか?」
「そ、そんなことありません。気のせいです、きっと」
正面に座るルークからじっと見つめられてしまって、私は反射的に視線を逸らしてしまった。
……この兄、モブなのに無駄に顔が良すぎるんだよ。
そんな誰に言ったらいいのか分からない文句を思いながら、少しだけほぐれたような雰囲気の中で、私達は色んな話をしたのだった。
ルークをデートに誘った数日後に訪れた休日。私達は馬車で学園から近くにある街に向かっていた。
デートと言っても、兄妹としてのお出かけでしかないが、何となく互いにぎこちなさがあるような気がした。
そういえば、二人きりでルークと会話をしたことはあまりないかもしれない。
それこそ、私が魔物に襲われかけた日に私の部屋に来て以来な気がする。
私は向かい合って座った馬車の中の会話をどうやって展開させるか考えながら、先程のルークの言葉を思い出していていた。
『また』ということは、以前にもエリ―とルークは休日に出かけていたということだ。でも、その言葉回しからはお出かけに誘われたことが意外みたいな感じだった。
……もしかして、エリ―とルークの間で何かあったのかな?
そんなことを考えてみたが、何があったのかまるで分らなかったので、私は小首を傾げたまま口を開いた。
「私がお誘いしたのは、そんなに意外ですか?」
「驚くところはあるけど嬉しいよ」
そんな言葉を口にしたルークは優しい笑みを浮かべていたが、その笑みにはどこか影があるような気がして、私はまた上手く言葉を返すことができなくなっていた。
本当に、この二人の間には何があったんだろう。
ゲームに登場してこなかった二人にどんな物語があるのか、それはゲームしかプレイしていなかった私には分からないことだった。
「それで、今日はどこに行きたいんだ?」
「へ? えっと、街の方に」
「いや、街に行くのは知っているけど、どの店に行きたいとかあるんじゃないのか?」
「え……」
今回の目的はルークのことを深く知ること。そして、何かを隠しているような表情が何なのかを探ること。
だから、すっかり抜けていたのだ。
街に行ってからどこに行くとか、何をするのかとか。
だ、だって、これから行く街のことなんてゲームで見たイベントCG以外知らないし。
「……決めていないのか?」
「そ、その、お兄様とお出かけしたかっただけで、特に行先とかは決めてませんでした」
さすがにノープランだとは思っていなかったのか、ルークは私の言葉を受けて目をぱちくりとさせていた。
休日に連れ出しておいて、何も考えてなかったって言うのはさすがに失礼な気がするし、それなら本当のことを告げてしまった方がいいかもしれない。
そう思った私は、少しの間を置いた後にぽろっと言葉を漏らした。
「お兄様の学校でのこととか、色々改めて聞きたいなと思いまして」
「改めて、か。そうだね。俺もエリ―の学校でのこととか聞いてみたいかな」
「私のことですか?」
「ロドル王国の第二王子レイラ―様、魔法省のトップの息子のエルドナ、国家騎士団の息子のマイネルに、レイラ―様の婚約者のクリス様。少し見ないうちに、人脈作りのプロになったみたいだしね」
おどけるようにそんな言葉を口にしたルークは、少しの笑みを浮かべていた。
口元と目元を微かに緩めただけの笑みだったのだけれど、普段影がありそうなルークがそんな笑みをすると、いつものギャップで妙にその笑顔が魅力的に映った。
「エリ―? 顔が赤くないか?」
「そ、そんなことありません。気のせいです、きっと」
正面に座るルークからじっと見つめられてしまって、私は反射的に視線を逸らしてしまった。
……この兄、モブなのに無駄に顔が良すぎるんだよ。
そんな誰に言ったらいいのか分からない文句を思いながら、少しだけほぐれたような雰囲気の中で、私達は色んな話をしたのだった。
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