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第7話 モブキャラの魔法適正とは

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 ヒロインの代わりとして学園生活を送らなければならないかもしれない。

 一見、ラッキーなのように思えるかもしれないが、そんな簡単にいかないのがモブの宿命である。

 だって、普通に浮かれてヒロインの代わりにこの世界で生きていったら、あと2ヶ月もしないうちに行われる定期試験で死んでしまう未来が見える。

 それに加えて、最近では悪役令嬢が自分の婚約者に手を出すんじゃないかと警戒しており、下手に刺激をしたら、悪役令嬢とその取り巻きから酷いいじめを受けるハメになるだろう。

 そんな状況を楽しめるはずがない。

 そして、今日はある意味運命を決める日でもあった。

「それでは、今から魔法の適性を計測します」

 ふくよかな女性の先生と共にやってきたのは、学園のグラウンド。

 本日は座学から離れて実技の授業。初めての魔法の実践の授業なのだ。

「なんかエリー様、張り切ってます?」

「当然です! 今日という日をどれほど待ったことか」

 そう、今回の初回の魔法の実技では魔法の適性の計測を行う。つまり、エリーの中にある魔力量、またその魔力の性質が分かるのだ。

 私がヒロインの代わりとして学園生活を送ったとき、私はゲームのヒロインのようにダンジョンのイレギュラーに巻き込まれることになる。

 そのときに生き延びる手段という物を見つけておかないと、冗談抜きで人生が終了してしまうのだ。


 その手段の一つとして有効なのが魔法。

 上手く魔法を扱うことができれば、それだけで生存率をぐっと上げることができる。

 そんなこれからの未来がかかっていると意気込む私の他にも、この魔法適正を測定するイベントを楽しみにしているクラスメイトがちらほらと見えた。

 どうやら、自分の魔法適正が何であるかを知りたいのは私だけではないらしい。いつもよりもクラスが浮足立っているみたいだ。

「それでは、まずは魔法の適性を確認しましょうか。魔法の適性を調べる水晶があるので、名前を呼ばれた人は私の所に来てください」

 次々に名前を呼ばれて一喜一憂しているクラスメイトたちを見ながら、私はこの世界の魔法の性質について思い出していた。

 確か、魔法の属性は火・水・土・雷・風の属性と、光・無属性魔法って言うのが存在していた気がする。

 無属性魔法というのは多分、ミーアの索敵魔法とかが該当した気がする。属性魔法以外の魔法が無属性魔法って感じの認識だ。

 ヒロインのティアの得意な光魔法は回復に特化しているので、他の属性の魔法とは別枠として考えられることが多い。

 やっぱり、欲を言うのなら火か雷当たりの魔法の適性が欲しい所ではある。

 なんか攻撃力強そうだし、魔物に襲われても抵抗できる気がするし。

「それでは、次は――エリー・アルベルト」

「はいっ」

 私はミーアに小さく応援されながら、教師の下へと小走りで向かって行った。そして、ゲームの再現みたいに差し出された水晶の上に手を置いて、その結果を静かに待った。

 すると、その水晶の色は徐々に変わっていき、その色の変化を見た教師は小さく頷いて口を開いた。

「属性は風ですね」

「か、風ですか」

「はい。きっと鍛錬を積めばある程度は使えるようになりますよ!」

「鍛錬を積んである程度……」

「それじゃあ、エリーさんはそのまま魔力量の測定に進んでください」

 私は気を遣ったような教師の笑顔を前にして、顔を思わず引きつらせてしまった。

 ……いや、でもまだだ。

 風の魔法だって十分に魔物と渡り合えることができる。そもそも、どんな適正であっても問題はないのだ。

 そう、問題は今の魔力量。

 正直なところ、どんな魔法の属性であっても魔力量がちんけだったら意味がない。逆に言えば、魔力量が膨大にあれば何も問題はないのだ。

 私は後ろで見守ってくれていたミーアに小さく手を振ると、そのまま少し離れた所にあった別の教員がいる場所に向かって行った。

 自分のことのように心配してくれているミーアの顔に少しだけ癒されて、私はそのまま魔力測定ができる別の水晶に触れた。

 確か、魔力測定をする水晶では、去年の学生の魔力量のデータと比較して、100点満点で採点のように測ってくれるんだった気がする。

 確か、ヒロインはここで100点に近い点数を叩き出して、クラスメイトから注目を浴びるのだ。

 はたして、エリーの魔力慮はどのくらいなのか。

「エリー・アルベルト。42点ですね。ま、まぁ、魔力量は練習次第である程度は伸びますから」

「れ、練習してある程度ですか」

 こうして、私エリー・アルベルトの魔法がどのような物なのかが判明した。

 風適正の平均以下の魔力。それも、頑張ればもう少しマシになりますよ程度の伸びしろ。

 モブらしいと言えばモブらしい、のかな?

 ……これは、いよいよ本格的にマズい気がしてきた。

 他の生徒が一喜一憂する中、私は一人深刻な顔をして冷や汗を流すのだった。

 着々とダンジョン先で死亡するルートが明確になっていいく、そんな気がした。


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