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2人の聖女様

ごじゅうなな

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 翌日。
 ララに少しでも顔を隠せるような服を見繕って貰った。
 精霊士がどういう服装をしてるのかわからないから、怪しまれない格好を教えてほしかったから。
 僕は学園にも行ってないし、孤児院以外はそこまでうろうろしてないし、目立ったことはしてないのでバレたりはしないだろう。
 果穂も居れば最悪城を壊してでも逃げることもできる。
 王都の生活は便利だけど、いざとなれば外に逃げれる身軽さだ。

 大丈夫だ、落ち着いていけ。怪しまれないようにしろ。
 精霊士様はきっとそんなそわそわしない。

「大丈夫なの、行ける?」
「うん」
「外で待ってるわ、危なくなったら合図して」
「合図ってどうしたら」
「……どっか爆発でもさせて」

 思考が同じで笑ってしまった。

「何よ、一応心配してるのよ!」
「わかってるわかってる」
「あのね、カレンは一応ちゃんとした聖女様よ、その聖女様の力を奪って、監視の目もあるだろう第1王子に呪いかなにかかけてるのよ、しかも伝染るのよ、果穂もいるのよ、お城には多分関係ない人も多いのよ、もっと危機感持って」
「……うん」
「……緊張してるの?」
「そりゃね……ほんとなら果穂にこんなことさせたくなかったし」
「……ごめんね」
「え?」
「あたしたち……何も良い案出せなくて」

 ララ達が謝ることじゃない、果穂のことは僕と果穂の我儘で、本当なら小細工せず堂々と治しに行けって話だ。
 それをせずに遠回しに解決しようとしている僕達が自分勝手なのだ。
 僕だって果穂がいなければさっと終わらせてた。

「大丈夫だよ!果穂と精霊士の力でさくっと解決してくるから!」
「……そう言うと格好悪いわね」
「あはは」

 笑ってんじゃないわよ、と肩を叩かれた。




「おはようございます……」
「おはよ……その調子じゃやっぱり眠れなかったみたいだね」
「いえ……」

 相変わらず顔色の悪いカレンが出迎えてくれた。
 昨日泣いてしまったからか目元も腫れてる。
 早く休ませてあげたい。その為には僕と果穂が上手くやらないといけない。

「どう、これ精霊士っぽい?」
「私もお会いしたことないのでなんとも……」
「怪しい感じ出てる?」
「怪しくていいんですか?」

 少し笑ってくれた。少し安心する。

「今日は宜しく」
「はい、今朝精霊士様にお願いしたことは伝えてあります、王様にだけ」
「よし」

 王様が他に言ってなければ、怪しい奴にはバレてない筈。
 多分だけど。
 どんな奴か知らないから、妙なことされなければ、多分。

「まずその第1王子が見たい」
「……大丈夫でしょうか」
「だいじょぶ!」
「……果穂が自信満々だから多分大丈夫だと思う」

 そのままカレンに入り口まで案内してもらう。
 お城大きい、学校より大きいかもしれない。
 門から玄関まで結構歩くし、庭の清掃をしてる人、玄関で頭を下げるメイドさん執事さん。
 当然だがこんな金持ちの家とか初めてで、当初の目的とは違う意味でどきどきする。
 果穂、変なもの触るなよ、と念を込めておく。

「どうぞ」
「……!」
「う」

 玄関を潜ったところで、2人揃って眉を顰めてしまった。
 ずん、と重い空気が僕にでもわかる。
 僕でこれなら、果穂には随分キツいのではないかと思ったが、暫くしたら慣れたのか、もう大丈夫、とこっちを見て頷いた。

 それにしてもこの空気、結界があると聞いたがそれでも第1王子の部屋から漏れてるのか、それともこの城全体に魔法をかけてるやつがいるのか。
 わざとこの城全体にかけているなら厄介かもしれない。
 そこそこの範囲魔法になると思うんだけど、第1王子とカレンを呪い、城に範囲魔法を使い、バレないように涼しい顔をしている奴ってことだ。
 面倒そうな奴。

「ここがリュカ様に休んで頂いてるお部屋です……本当にそのままで大丈夫ですか?」
「……多分、大丈夫、果穂兄ちゃん助けてくれるよな?」
「うん、だいじょぶ」

 果穂がぎゅっと僕に抱き着く。
 こんなに小さな躰が頼もしく感じるなんて。

 ぎい、と重たい音を立てて扉を開けると、そこはこの城を覆ってたものの比ではない空気の重さで充満していた。
 窓の外はまだ明るいのに、部屋の中は薄暗い。

 まっくろ、と果穂が呟いた。
 そう、真っ黒だった。
 カレンも言っていた、リュカ様が真っ黒になっていく、と。
 この部屋も、空気も、ベッドに横になる男性も、真っ黒だ。

 肌が青白いとか紫になっているのではなく、もう肌が黒くなっている。
 痩けた頬、がさがさになった唇から出る荒い息が苦しそうで、いつその息が止まってしまってもおかしくなさそうに見える。

「この方が第1王子……」
「リュカ様です……昨日借りた魔力で少しだけ……良くなったんですけど……」
「果穂、このお兄さん助けられるか?」
「ばれちゃうよ」
「ばれる?」
「わるいひとにかほきたのばれちゃう」
「逃げられるかもしれないってことか」

 こくりと頷く果穂。
 すぐにでも助けたいが、相手に逃げられたら困る、何をされるかわからない。
 先にお城の中を確認しなきゃ。
 そう伝えると、カレンは今にも泣きそうな顔になったけど、ここでも果穂が大丈夫と言う。

「ようせいさんがみててくれるよ、ちょこっとしかいれないけどって」
「探してる間に……悪化したりは」
「大丈夫みたいだ、急いで他の部屋を確認してみよう、カレンが案内してくれないと僕達ここから追い出されちゃう」
「……はい」

 カレンはぐいと手の甲で涙を拭い、覚悟をした瞳で僕達を見上げ、お願いします、と頭を下げた。
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