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はじめての旅

にじゅうよん

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「この家置いてっちゃうの?」

 皆すっきりした顔をしている。
 見張りもたてずに眠りこけてしまったことを3人とも反省したが、何もなかったことを精霊様に感謝した。
 ここまで来るとどのレベルまでならモンスター避けとして使えるのか試してもみたくなる。

「それなんだけど」
「こんなとこにこんな見たことない家あったら皆びっくりしちゃうわね……」
「ここに魔力の高い果穂がいましてね」
「まさか」
「なんとこのロッジは果穂が収納してくれるのです」
「そんな訳ないでしょ!流石にこれは……」

 言いかけたララがあんぐりと口を開ける。
 ふふふ、どうだ、うちの妹はすごいのだ。魔力に応じて収納は変わるとララも言っていたではないか。
 異空間に飲み込まれるように消えるロッジに、僕と果穂はハイタッチした。

「だだだ大丈夫?確かに結構収納出来るけど、あんな大きいの収納する人なんて初めて見たわ、こんなに小さいのに!?どこに消えてるの!?」

 それは僕も聞きたいが。

「かほがおうちもってったらまたよるおふとんでねれるでしょ?ララちゃんうれしー?」
「う、嬉しいけど、ベッド気持ちよかったけど……そうじゃなくて、カホ、体調悪くなったりしてない?大丈夫?」
「げんきー!」

 うきうきしてる果穂と珍しくおろおろしてるララが面白い。
 この世界で驚かされてばかりだったから、僕等で2人を驚かせることが出来るとなんだか楽しくなってきた。

「2人には驚かされてばっかりだな」
「そう?僕達の方がびっくりしっぱなしだよ」
「いや、やることが突拍子もないんだよ」
「何が出来るかわからないからさ、思いついたことはどんどんやっとこうと思って」
「……」
「王都についたら目立ったこと出来ないだろ?今の内に色々やって、2人の表情見てやばいと思ったことは王都では避けるようにするよ」
「……カホもユートも多分なんかやらかすから気をつけた方がいいぞ」
「うん」

 出発するわよー、とララと果穂に声を掛けられて、今日も旅に出る。

 頭の中では、あれを出せたらこれを出せたらとそんなことばかりがごちゃつく。
 車を出せたら……いや運転出来ないし、こんな道は走れない。
 飛行機やヘリコプターで空を飛ぶ……だから運転出来ないし、空からも陸からも攻撃されそうである。
 やっぱりこうやってゆっくり行くのが正解かあ。

「難しい顔してるわね」
「いやー、王都の土地って幾らくらいするのかなって」
「土地?」
「土地さえあれば家はほら、どうにかなるから。目立たない端の方とかでのんびり過ごせたらなあと思うんだよね、流石に勝手に家を建てる訳にはいかないから、土地は買わなきゃと思ったんだけど……絶対僕の手持ちじゃ足りないよね……あっ2人から借りたいって訳じゃないよ」
「はー……まだそんな子供の顔してんのに土地買おうとか考えてるの」
「同い年じゃん」

 ダンジョン行ったり2人で旅に出たりと大人顔負けの生活を送ってるくせに、学園行くくらいだからまだ子供の感覚もあるのだろうか。
 僕からしたらそっちの方がアンバランスなんだけど。

「あーじゃあダンジョン探さない?」
「ダンジョン」
「まだ余裕はあるし、ダンジョン潜ってお宝の幾つか持ってけば物によっては良い値がつくわよ」
「ダンジョンってそんな簡単に見つかるの?ギルドに報告とかなしでいいものなの?」
「ダンジョンは早い者勝ちよ!」
「あ、そうなんだ……」
「簡単にはみつからなくてもあたしたちならまあ余裕ね」
「どういう……」

 自分の目元をちょいちょいと指差しながら、目がいいの、とララ。

「魔力とか、僕のものか果穂の魔力かわかるし、そういうのも……?」
「そうね」
「どおりで……僕達には誰の魔力かなんてわからないもんな」
「ヒトでも分かるのはいるかもしれないけど……獣人は特に感覚に優れてるからね」
「確かに猫って何もない空間見るもんな」
「え?」
「こっちの話です続けて下さい」
「なんなのよもう、……ええっと、ダンジョンの話しよね、ダンジョンにも当然モンスターはいるし、討伐や埋蔵されてるものが目当ての人もいるからその人の魔力が漏れてるのよね」
「つまりその魔力を辿ればいいと」
「せいかーい!ルル、ちょっと見てきて」
「はいよー」
「見てくる?」

 言うが早いが、ルルが飛んだ。飛んだというか、跳ねた。
 魔力があるとはいえ、相変わらずの跳躍力だ。
 戻ってくるなり、あっちにあるぞ、と笑顔で振り向いた。

「そんな簡単に!?1回上から確認しただけで!?えっ近くない!?そんなダンジョンってごろごろしてるもん!?」
「いやいやラッキーラッキー」
「じゃあこの辺も冒険者いるんじゃないの!?」
「大丈夫大丈夫行くわよー!」
「果穂連れてって大丈夫!?」
「そんなの近くに行ってから考えましょー!」

 あっさりと方向転換をされ、僕達は土地代を稼ぎにダンジョンへ向かうことになったのだった。
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