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はじめての旅
にじゅういち
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「この辺でいいかしら」
「川も近いしな」
日が落ちる前に今日の寝床を決める。この世界で初めての野外での夜だ。
小さいとはいえ守られていた町から、こんな何もない野外で寝ることになるとは。
キャンプの時みたいだ。わくわくしてた筈なのに、いざやってみると暗い静かだ怖い!って思ったんだよね。
「あたしたち準備しとくから。ユートはカホとそこで訓練してていいわよ」
「ありがと」
結局モンスターも出ず、それなら何が出せるか訓練で魔力を使ってもいいかと話していたので、あっさりと許可が降りた。
ルルは川に入っていったんだけど何するんだ、魚でも獲るのか。
……川魚、焼いたのかぶりついてみたいな。
「果穂、兄ちゃん倒れたら起こしてな」
「はーい!」
集中して、まずは調味料で試してみた。
何度か気を失い、果穂に起こしてもらい、果穂からリクエストを受け、また気を失い、起こしてもらう。
複数回繰り返し、なんとなく掴めてきた。
調味料はそのままの味で出せた。
出せなかったものもある。何の違いがあるのか数分悩んで気がついた。
成功したものの全て、うちで使っていたものと同じなんだ。
出せなかったのは僕が口にしたことのないもの。
思いついたはいいが、男子高校生が作る簡単な料理にナンプラーは使わないもんな……
試しにケーキを出してみた。たまに食べていた近所のお店のケーキ。美味しい……けどなんかちょっと……いや大分物足りない。
焼いたことのあるホットケーキはどうだ?と思ったがこれも同じく。
テレビで見たことあるだけのモリモリにデコレーションされたケーキは食べたことないからか出せなかった。
違いはなんなんだろう。
イメージが出来るかどうか?
でもそれなら正直、醤油の作り方よりホットケーキの作り方の方がわかる。
よく果穂に作っていたオムライスも食べられるのだが、なんかしっくりこない。
作り方はよくわかっているのに。
その差はなんだ?
暫く出し入れを繰り返し、なんとなくわかったのは、自分で使ったことのある調味料は大丈夫。
使ったことのない調味料は出せない。
食べたことのある食べ物は自作のものでも、買ったものでも出せる。でも味気なく、身になる気がしない。
口にしたことないものは出せなかった。
使ったことないメーカーの会社の食材が出せないのはつまり、僕が使ったことがないから。
例えばファーストフードのハンバーガーは出せるが、その材料は知らないので材料は出せない。
僕の躰と知識に左右されるらしい。
こんなことならもっと色々食べとけば良かった!いや、あんまり美味しくないなら、食べるよりも色んなものを使ってみれば良かったな……だってこんなことなると思わないし。
調理前の肉や魚や米や野菜も出せた。
試しにバナナを齧ってみたが、ちゃんと食べられる。これはそこそこ美味い。残りは果穂にやった。
鍋もフライパンも包丁もまな板も出せた。これもうちにあったのと同じ会社のものだ。
自分で作ったものはどうだろう、この材料を使って料理をするなら、出来上がりはどうなるのだろうか。
「うーん、作ってみなきゃわかんないよなあ、なんか作ってみるか」
「にいにのごはん!?」
「嬉しい?」
「うれしー!かほにいにのごはんすきー」
「そっかそっかー、じゃあバナナ2本目は駄目だぞ」
それならあれだな、キャンプといえばカレーだ。
「何作ってんの?……綺麗なお鍋ね」
いきなり料理を始めたのでびっくりしたのだろう、ララが不思議そうに寄ってきた。
丁度良かった、猫族って玉葱大丈夫なんだろうか。
「タマネギ?なにそれ」
「向こうの世界の野菜で……その、猫には毒なんだけど、猫族って食べちゃだなめなものとかある?」
「毒なんて効かないわよ」
「えっ」
「多少の毒なら耐性あるもの、それよりそれ何?見てていい?」
わくわくした子供のように僕の手元を見つめるララに、準備をしながら先程の結果を話してみた。
いつの間にかルルも来て、獲った魚に串をさしつつ僕の手元を見ている。その表情がやっぱり兄弟だなあと思った。
たまに揺れる耳と尻尾がかわいいんだ。
「それ、魔力の問題じゃない?」
「え?」
「調理済みなのは味気なく感じるっていうの」
「魔力……」
「こっちでは火や水を生活で使うって言ったでしょ?敢えて食事に魔力を入れようとは思ってなくても、自然とこもっちゃうのよね」
「でも僕が魔法で出した時点で魔力少しくらいこもらないのかな」
「うーん、でもこれからは魔力感じないわよ」
「じゃあ今僕が料理することで少し魔力こもって美味しくなるかな」
「多分」
「でも果物とか調味料はこのままでも美味しいんだけどなあ」
「材料となると違うのかしらね?調味料だと味が濃いからなんとなく変わらない気がしてるのかもしれないけど」
「まあ美味しくなるならいっか!」
投槍である。
小学校の時の宿泊学習でキャンプをやったお陰でご飯も炊ける。うろ覚えではあるけど、べしょべしょじゃなければまあどうにかなるでしょ。
カレーの香りはいつでもいいもんだ、お腹空いてきた!
「川も近いしな」
日が落ちる前に今日の寝床を決める。この世界で初めての野外での夜だ。
小さいとはいえ守られていた町から、こんな何もない野外で寝ることになるとは。
キャンプの時みたいだ。わくわくしてた筈なのに、いざやってみると暗い静かだ怖い!って思ったんだよね。
「あたしたち準備しとくから。ユートはカホとそこで訓練してていいわよ」
「ありがと」
結局モンスターも出ず、それなら何が出せるか訓練で魔力を使ってもいいかと話していたので、あっさりと許可が降りた。
ルルは川に入っていったんだけど何するんだ、魚でも獲るのか。
……川魚、焼いたのかぶりついてみたいな。
「果穂、兄ちゃん倒れたら起こしてな」
「はーい!」
集中して、まずは調味料で試してみた。
何度か気を失い、果穂に起こしてもらい、果穂からリクエストを受け、また気を失い、起こしてもらう。
複数回繰り返し、なんとなく掴めてきた。
調味料はそのままの味で出せた。
出せなかったものもある。何の違いがあるのか数分悩んで気がついた。
成功したものの全て、うちで使っていたものと同じなんだ。
出せなかったのは僕が口にしたことのないもの。
思いついたはいいが、男子高校生が作る簡単な料理にナンプラーは使わないもんな……
試しにケーキを出してみた。たまに食べていた近所のお店のケーキ。美味しい……けどなんかちょっと……いや大分物足りない。
焼いたことのあるホットケーキはどうだ?と思ったがこれも同じく。
テレビで見たことあるだけのモリモリにデコレーションされたケーキは食べたことないからか出せなかった。
違いはなんなんだろう。
イメージが出来るかどうか?
でもそれなら正直、醤油の作り方よりホットケーキの作り方の方がわかる。
よく果穂に作っていたオムライスも食べられるのだが、なんかしっくりこない。
作り方はよくわかっているのに。
その差はなんだ?
暫く出し入れを繰り返し、なんとなくわかったのは、自分で使ったことのある調味料は大丈夫。
使ったことのない調味料は出せない。
食べたことのある食べ物は自作のものでも、買ったものでも出せる。でも味気なく、身になる気がしない。
口にしたことないものは出せなかった。
使ったことないメーカーの会社の食材が出せないのはつまり、僕が使ったことがないから。
例えばファーストフードのハンバーガーは出せるが、その材料は知らないので材料は出せない。
僕の躰と知識に左右されるらしい。
こんなことならもっと色々食べとけば良かった!いや、あんまり美味しくないなら、食べるよりも色んなものを使ってみれば良かったな……だってこんなことなると思わないし。
調理前の肉や魚や米や野菜も出せた。
試しにバナナを齧ってみたが、ちゃんと食べられる。これはそこそこ美味い。残りは果穂にやった。
鍋もフライパンも包丁もまな板も出せた。これもうちにあったのと同じ会社のものだ。
自分で作ったものはどうだろう、この材料を使って料理をするなら、出来上がりはどうなるのだろうか。
「うーん、作ってみなきゃわかんないよなあ、なんか作ってみるか」
「にいにのごはん!?」
「嬉しい?」
「うれしー!かほにいにのごはんすきー」
「そっかそっかー、じゃあバナナ2本目は駄目だぞ」
それならあれだな、キャンプといえばカレーだ。
「何作ってんの?……綺麗なお鍋ね」
いきなり料理を始めたのでびっくりしたのだろう、ララが不思議そうに寄ってきた。
丁度良かった、猫族って玉葱大丈夫なんだろうか。
「タマネギ?なにそれ」
「向こうの世界の野菜で……その、猫には毒なんだけど、猫族って食べちゃだなめなものとかある?」
「毒なんて効かないわよ」
「えっ」
「多少の毒なら耐性あるもの、それよりそれ何?見てていい?」
わくわくした子供のように僕の手元を見つめるララに、準備をしながら先程の結果を話してみた。
いつの間にかルルも来て、獲った魚に串をさしつつ僕の手元を見ている。その表情がやっぱり兄弟だなあと思った。
たまに揺れる耳と尻尾がかわいいんだ。
「それ、魔力の問題じゃない?」
「え?」
「調理済みなのは味気なく感じるっていうの」
「魔力……」
「こっちでは火や水を生活で使うって言ったでしょ?敢えて食事に魔力を入れようとは思ってなくても、自然とこもっちゃうのよね」
「でも僕が魔法で出した時点で魔力少しくらいこもらないのかな」
「うーん、でもこれからは魔力感じないわよ」
「じゃあ今僕が料理することで少し魔力こもって美味しくなるかな」
「多分」
「でも果物とか調味料はこのままでも美味しいんだけどなあ」
「材料となると違うのかしらね?調味料だと味が濃いからなんとなく変わらない気がしてるのかもしれないけど」
「まあ美味しくなるならいっか!」
投槍である。
小学校の時の宿泊学習でキャンプをやったお陰でご飯も炊ける。うろ覚えではあるけど、べしょべしょじゃなければまあどうにかなるでしょ。
カレーの香りはいつでもいいもんだ、お腹空いてきた!
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