ドリーム☆スター

miyu

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プロローグ

第一話 さようなら、ドリーム☆スター

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 ──ワアアアア!と会場いっぱいの人が歓声をあげている。人々は手にペンライトを持ち、一生懸命に振り、大きいステージに立つ五人の少女たちへ視線を送る。
 ステージの上の少女たちは、その歓声に答えるかのように、客席に笑顔を送ったり、手を振り返したりしていた。
「みんな、今日は本当にありがとう。このステージに立てたこと、一生忘れません」
 少女たちの真ん中に立っていた、茶髪でツインテールの人物がそう言う。
 彼女の言葉が終わるのと同時に、会場の歓声は止み、代わりに拍手の音が鳴り響いた。
「今日のこの公演、ドリーム☆スターの演目は全て終了しました。──私たちからみんなに、大事な、伝えたいことがあります」
 伝えたいこと、その言葉が聞こえた瞬間、会場の空気は一気に張りつめた。
「私たち、ドリーム☆スターは……」
 そこで、茶髪の少女は周りを大きく見渡す。一人ひとりの表情を全て見るかのように、時間をかけてゆっくりと、そしてどこか決断をしたような表情の後に、メンバーの顔を見た。
 メンバーのそれぞれが軽く頷くと、続きを話すように促す。
「解散します!」
 少女たちは長い間、観客に深くお辞儀をした。
 会場が突然の発表を受け騒然としている中、ステージの幕が下がり、暗い闇へと姿を変えた。代わりに客席に明かりが点り、本当に全ての演目が終わったことを嫌でも感じられた。
『本日は、ドリーム☆スター、ホールツアーライブへお越しいただきまして、まことにありがとうございました。お手回り品を確かめ、お忘れものなどないよう──』
 会場アナウンスが響き渡る。アナウンスに促されるまま、呆然と帰り支度を始める者が多い中「ミカー!」と大声をあげる者がいた。
「ありがとう! ドリーム☆スター!」
「解散しないでー! おことさまー!」
「なんでっ……なんでっ……解散なんて嫌……」
 それが起爆剤となり、客席から様々な声が飛び交う。大勢が帰り支度をしていたはずだったのだが、再びカバンからペンライトを取り出し、大きく振り始めた。
「ドリーム☆スター! ドリーム☆スター!」
 観客が一丸となって、グループ名を呼ぶ。
 それをステージ袖で、少女たち──ドリーム☆スターは全てを聞いていた。
「ありがとう、みんな……」
 茶髪の少女が少し悲しそうな顔でそう言う。
「いいえ、本当に感謝しなければならないのは、ファンの方たちですわ」
「あとは、梨絵りえちゃんにもね。梨絵ちゃんも大事な一員だもの」
「そうだね。……解散を決めた私たちがしんみりしてても良くないね。もう少し笑っていなきゃ」
「うん……」と少女たちは頷く。
 ──しばらく鳴り止まない呼び声を聞きながら、ステージ袖で微笑んでいる姿は、まさにトップアイドルに成り得た瞬間であっただろう。

 これは、少女たちがトップアイドルになる物語の、序章であり、最終章である。


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