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回復したらイケメンでした
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あの日、拾った大木……いや、全裸の人らしき物体は、治ったら……キンラキンラに輝く超絶イケメンでした。
あのずぶ濡れになった日から、かれこれ、およそ半年が過ぎました。彼の浮腫みきった様子から、全身の骨が折れているのかと思ったけれど。
驚異的な回復力で一ヶ月程で腫れはどんどんと引いていった。こんなに回復力があるならば、腫れが引かない程の頻度で毎日毎日、殴られ続けでもしないと、あそこまではならないだろうな、と悲しくなった。
ちなみに、髪の汚れは二か月経っても、どうしても落ちなかったので、根元からバッサリ切らせて貰った。彼は何の抵抗もしなければ、未だに一言も話さない。いや、話せないらしいことは分かった。
現在、うちの小屋の寝室で古びた床に跪く彼。
長身で細身の美しい男性は……陽の光を浴びて、あまりにキラキラと輝き過ぎて苦しい。
「あの……すみません、毎朝跪くの止めてもらえますか?落ち着かないので……普通に、隣の椅子に座って下さい」
僕の小屋は狭いので、ベッドは一つ。
毎朝、僕が起きた時には、彼はベッドの隣に跪いている。何度も何度も止めてと言っているが、習慣らしい。とりあえず、隣に置いた椅子に座ってもらう。これに慣れてもらうのにも、かなり時間が掛かった。
あの日、ぐちゃぐちゃになった僕の寝室。
今では、すっかり綺麗になりました。
当然、全ての敷布やら掛布やらは新しく買い替えた。そうは言っても全くの新品ではなく村の人から譲って貰った物も多い。
でも、街の皆が高値で薪を買ってくれるお陰で、あの日に使い物にならなくなった物は全て変えることが出来た。寝台も。
勘違いお嬢様に感謝、かな?
僕の隣の椅子で不安そうにこちらを伺い見る彼に、精一杯の笑顔で笑い掛ける。緊張してるみたいだから、なるべく安心させるように。
「大丈夫ですよ。ここには、あなたを傷付ける人間はいません。話せるようになるまで、ここに居ても良いですから、ゆっくり過ごして下さい。床に跪かないで、必ず椅子に座りましょう。人間なんですから」
僕が笑い掛けると、彼の左の瞳から、ポロリと美しい涙が溢れた。
今の彼は短く刈った髪も耳辺りまで伸び、手入れをしているので艶々サラサラの銀髪だ。肌もすっかり綺麗になって、色は少し浅黒いものの、キメの細かい美肌に生まれ変わった。そうは言っても、無数の傷跡が身体にも顔にも残ってしまっているが。それでも…鼻梁もスッと通り薄い唇、切れ長の瞳。
背は高く、僕よりも頭を二つ分は高いだろうか。浮腫みが取れたら肋骨が浮く程にやせ細っていた身体は、僕が無理にでも食べさせた結果、今は随分と筋肉が付いてきた。いわゆる細マッチョ。
うーん、完璧だな、この人。女の人が見たら、放っておかないだろう。いや、老弱男女か?
「大丈夫ですか?辛かったでしょう。いずれ、この首輪も外す方法を探しましょうね」
「……………」
恥ずかしいのか、涙を拭いながら薄く頬を染めて、コクリと頷く彼を見て、内心溜息をつく。そんな簡単な物じゃないことは、この半年で分かった。何をしても切れないし、外れないのだ。
僕が食べさせた結果、首輪と首の隙間は、もうほぼ無くなっている。このままでは、もうすぐ息が出来なくなりそうにギリギリだ。これじゃあ、会話なんて無理だよな……しかも、こんなもの付けていたら、どこへ行っても働けそうにもない。そもそも労働なんて無理。
それに何より……あまりに美し過ぎて、なんだか悪い人に捕まりそうだ。
「……やっぱり、あそこしかないか……」
「…………??」
僕は、最終手段を取ることにした。
僕は彼に食べさせたいし、話もしたい。
でも、このままだと、彼は息が出来なくなって死ぬ。
もう半年も一緒に暮らしていれば、情も湧くってもの……それだけじゃないのは秘密だ。
「今日は、森の泉に行きます。その首輪を取って貰えるように泉の女神に頼みましょう」
「??????」
疑問しか浮かんでいない彼に僕は精一杯の笑顔で答えた。ほんとは笑えない。
女神は、何かしらの生贄が無ければ願いを聞き入れないのだから。
あのずぶ濡れになった日から、かれこれ、およそ半年が過ぎました。彼の浮腫みきった様子から、全身の骨が折れているのかと思ったけれど。
驚異的な回復力で一ヶ月程で腫れはどんどんと引いていった。こんなに回復力があるならば、腫れが引かない程の頻度で毎日毎日、殴られ続けでもしないと、あそこまではならないだろうな、と悲しくなった。
ちなみに、髪の汚れは二か月経っても、どうしても落ちなかったので、根元からバッサリ切らせて貰った。彼は何の抵抗もしなければ、未だに一言も話さない。いや、話せないらしいことは分かった。
現在、うちの小屋の寝室で古びた床に跪く彼。
長身で細身の美しい男性は……陽の光を浴びて、あまりにキラキラと輝き過ぎて苦しい。
「あの……すみません、毎朝跪くの止めてもらえますか?落ち着かないので……普通に、隣の椅子に座って下さい」
僕の小屋は狭いので、ベッドは一つ。
毎朝、僕が起きた時には、彼はベッドの隣に跪いている。何度も何度も止めてと言っているが、習慣らしい。とりあえず、隣に置いた椅子に座ってもらう。これに慣れてもらうのにも、かなり時間が掛かった。
あの日、ぐちゃぐちゃになった僕の寝室。
今では、すっかり綺麗になりました。
当然、全ての敷布やら掛布やらは新しく買い替えた。そうは言っても全くの新品ではなく村の人から譲って貰った物も多い。
でも、街の皆が高値で薪を買ってくれるお陰で、あの日に使い物にならなくなった物は全て変えることが出来た。寝台も。
勘違いお嬢様に感謝、かな?
僕の隣の椅子で不安そうにこちらを伺い見る彼に、精一杯の笑顔で笑い掛ける。緊張してるみたいだから、なるべく安心させるように。
「大丈夫ですよ。ここには、あなたを傷付ける人間はいません。話せるようになるまで、ここに居ても良いですから、ゆっくり過ごして下さい。床に跪かないで、必ず椅子に座りましょう。人間なんですから」
僕が笑い掛けると、彼の左の瞳から、ポロリと美しい涙が溢れた。
今の彼は短く刈った髪も耳辺りまで伸び、手入れをしているので艶々サラサラの銀髪だ。肌もすっかり綺麗になって、色は少し浅黒いものの、キメの細かい美肌に生まれ変わった。そうは言っても、無数の傷跡が身体にも顔にも残ってしまっているが。それでも…鼻梁もスッと通り薄い唇、切れ長の瞳。
背は高く、僕よりも頭を二つ分は高いだろうか。浮腫みが取れたら肋骨が浮く程にやせ細っていた身体は、僕が無理にでも食べさせた結果、今は随分と筋肉が付いてきた。いわゆる細マッチョ。
うーん、完璧だな、この人。女の人が見たら、放っておかないだろう。いや、老弱男女か?
「大丈夫ですか?辛かったでしょう。いずれ、この首輪も外す方法を探しましょうね」
「……………」
恥ずかしいのか、涙を拭いながら薄く頬を染めて、コクリと頷く彼を見て、内心溜息をつく。そんな簡単な物じゃないことは、この半年で分かった。何をしても切れないし、外れないのだ。
僕が食べさせた結果、首輪と首の隙間は、もうほぼ無くなっている。このままでは、もうすぐ息が出来なくなりそうにギリギリだ。これじゃあ、会話なんて無理だよな……しかも、こんなもの付けていたら、どこへ行っても働けそうにもない。そもそも労働なんて無理。
それに何より……あまりに美し過ぎて、なんだか悪い人に捕まりそうだ。
「……やっぱり、あそこしかないか……」
「…………??」
僕は、最終手段を取ることにした。
僕は彼に食べさせたいし、話もしたい。
でも、このままだと、彼は息が出来なくなって死ぬ。
もう半年も一緒に暮らしていれば、情も湧くってもの……それだけじゃないのは秘密だ。
「今日は、森の泉に行きます。その首輪を取って貰えるように泉の女神に頼みましょう」
「??????」
疑問しか浮かんでいない彼に僕は精一杯の笑顔で答えた。ほんとは笑えない。
女神は、何かしらの生贄が無ければ願いを聞き入れないのだから。
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