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最後の戦い1/人の心の闇に蝕まれた偽物 凛

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 偽物 凛は俺の父親が佐々木のコピーデータを持っている事を知っていて、そのデータを欲しがっていたらしい。失った佐々木の容姿を持つ人形を作るために。

「話を戻そう。
 だが、俺のお父さんが持っているデータで佐々木さんを作っても、それは佐々木さんじゃないだろ?」
「颯太。そう言う意味じゃないんだろう」

 偽物 凛に向けた言葉に、俺の父親が言った。
 なら、どう言う意味なんだ?
 そんな視線を俺の父親に向けた。

「佐々木と言う容姿の生き物に自分が認められると言う安心感が欲しいんだ。
 それは本物の佐々木でなくてもいいんだ。佐々木の容姿をしている者にほめてもらいたいだけなんだ」
「自分のやっている事に自信が無くて不安な事なら、やめればいいだろ!」

 偽物 凛に向き直って、言った。

「颯太、誰に言っているのぅぅ。
 私は人の総意を知っているのよぅ。
 みんなの記憶や考えがぁぁ、私の中にあるぅ。
 その私は、人間と言うものを一番よく知っているのぅ。
 人はねぇぇぇ、どんなに表面を繕っていても、色んな欲望を持っているのよぅ。
 そしてぇぇ、それが叶わない時に芽生える挫折感、嫉妬やぁ不安と言った心の闇ぃぃ。闇よ。闇ぃぃ。人の心には大きな闇が巣くっているのよぅぅぅ。
 闇に包まれた人間はぁぁ、何かにすがりたいのぅぅ。そんな弱い生き物たち。
 彼らが求めているのは人知を超えた神ぃぃ。
 神ぃぃ。そして、愚かな人々はぁぁ、神を信じぃぃ、救いを求めぇぇ、なんでも言う事を聞く人形になるのよぅぅ。
 歴史を見れば分かるでしょぅぅ。今も世界を見れば、分かるでしょぅぅぅ。
 私はその神と言う架空の存在を祭り上げ、彼らを動かしてぇぇ、この世界を支配して願いを叶えてあげるのぅぅ。
 これは間違ってなんかいないわっ!
 でも、それでも佐々木さんに褒めてもらいたいのよぅぅぅ」

 そう言い終えた偽物 凛はまた激しく頭をくるくると左右に回し、髪を振り乱している。

「間違っていないんなら、なんで自分で教祖にならない。神を名乗らない」
「人が神として崇めるには私のような小娘ではだめなのよぅぅ。
 高山のような者の方が、人の心に入り込めるのぅぅ。
 そんな事より、ねぇぇぇぇ」

 偽物 凛が言葉を止めて、俺の父親に視線を向けた。

「お願い、佐々木さんを作ってぇぇぇ。
 佐々木さんを、佐々木さんをぅぅ」

 偽物 凛が懇願気味の声を上げた。

「颯太。おそらく、人の心の中は闇の方が大きすぎたんだろう。
 その子は取り込んだ人の心の闇に蝕まれている」

 俺の父親はそう言い終えると、視線を偽物 凛に向けて、大きな声できっぱりと言った。

「断る」
「なんで、分かってくれないのぅぅぅ」

 偽物 凛は絶叫したかと思うと、激しく頭を振りながら、手でその頭を掻きむしり始めた。

 やばい。やばすぎる。
 あかねソードを起動して、全神経を集中させる。
 偽物 凛が頭を掻き毟るを止めて、俺たちに視線を向けた。
 その目がカッと見開いた。

 来る!
 そう思った瞬間、そこに偽物 凛はいなかった。

 異様な速さの神の使い。その動きが素早く、攻撃が思うようにできなかったとしても、動き自身は視認できた。

 が、今の偽物 凛は?
 その動きを視認する事すらできず、あかねソードを振りぬくことすらできやしなかった。

 まずい!
 背後はどうなった?

 偽物 凛の狙いは俺の父親の奪取だったのか、俺の父親の近くで立ち止まっていた。
 そして、偽物 凛と俺の父親の間には、あかねソードを構えたあかねが立っていた。

「あなた、もしかしてぇぇぇ」

 偽物 凛が言い終えた瞬間、あかねがあかねソードを振りぬいた。
 が、それはまるであかねソードが弧を描く途中を飛ばしたかのようなイメージだった。

 弧を描くあかねソードの軌跡は見えず、振りぬく前と、振りぬき終わった状態だけが見えた。
 そして、偽物 凛はと言うと、これまた一瞬の内に、あかねから大きく離れた位置に立っていた。

「そう言う事ねぇぇ。
 確か、あなた入院とか言って、姿を消していた時があったけどぅぅぅ、あなた自身が」
「止めろぅぅ」

 偽物 凛が言おうとした言葉。その続きは聞きたくなくて、偽物 凛に襲い掛かった。
 俺の攻撃など意に介していないのか、偽物 凛は無表情のまま動こうともせず、俺を見つめている。
 もうすぐ、あかねソードの間合い。
 凛の容姿。戸惑いが無い訳じゃない。でも、服部の言葉通り、こいつは凛じゃない。
 俺たちの敵。容姿に惑わされはしない。
 そして、続く言葉を言わせないためにも、あかねソードを振り下ろした。

 行ける!
 何故だか動こうとしない偽物 凛にそう感じた時、一瞬にしてその姿は消え去っていた。
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