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決戦4/あかね
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悪魔のような冷たい笑みで、獲物を定めようとする神の使い 田辺えりな。
「そりゃあ、レーザー兄妹でしょ」
田辺の問いかけに、さっきまでは仲間だったはずのなずながあっさりと言った。
「どっちを?
て言うか、妹の方は、戦意喪失っぽいんだけど」
「よく分かんないんだけど、その子、ナイフを首に突きつけられている女の子を見ると、精神が崩壊するみたいなんだ。
だから、そいつは今は戦力外だから、最初に殺っておくなら兄の方でしょ、やっぱ。
えりなちゃんにあかねソードとか言うものを向けちゃってるんだし」
「じゃあ、それで行きますか」
田辺が言った。
たとえ、その動きが新幹線以上の速度だとしても、一瞬にその速度になる訳じゃないはずだ。
加速期間の速度はもっと遅いはず。だったら、そこに勝機をつかむしかない。
あかねソードを田辺に向けたまま、じりじりと植栽を背に後ずさりしていく。
背後の植栽が俺の足に触れた。もう下がる場所は無い。
引き攣らせた顔で、もう一歩下がると、木の枝が折れる音がした。
さらに植栽を折りながら、足を後退させて行く。
まるで、怯えた生き物が強者から、静かに逃れようとするかのように。
田辺の目つきが変わった。
その次の瞬間、田辺の姿は一瞬にして霧散した。
動いたんだ!
初めて使うあかねソードの防御機能を起動する。
ソード状に直線的に放射していた光のエネルギーを、柄の根元から外周に向かって円盤状に放射させる。光の盾だ。
ひなたがいたコロニーのバリアと同じもの。
光に触れたもの、全てを消失させる。
俺の左右は植栽であって、田辺は正面から俺を襲おうとするはず。
そこに田辺が突っ込んで来れば、田辺は体の大半を消失させて、この世から消えてなくなる。
はずだった。
が、予想以上に田辺の動きは速かった。
目の前に迫る田辺の顔と右腕。
演技ではなく、マジで恐怖した次の瞬間、俺の視界はあかね色の光の壁で覆われた。
全てを消失させる光のバリア。
すでに光のバリアを通り抜けていた田辺の肉体の部分はそこでそぎ落とされ、田辺の顔は俺の顎のあたりに激突し、腕はまるでロケット○ンチかのように、俺の肩にぶつかった。
少し前まで田辺えりなと言う少女だった二つの物体は、俺のバランスを崩させる程度の衝撃を与えた後、地面にぽとりと落ちて行った。
植栽の枝を折りながらも、何とか体を支えなおした俺は地面に転がるカラーのMRI画像のような人間の頭の断層物体を目にしてしまった。
今まで何人ものあの生き物を切りさいてきたが、今ほど死体と言うものに恐怖を感じたことはない。背中が凍り付く。そんな感じだ。
が、まだ俺の近くにはなずなと言う敵もいる。
すぐに気を取り直すと、あかねソードをソード状に戻し、構えなおした。
ひなたの背後にいたはずのなずなだったが、少し移動していた。
ひなたの首筋にナイフを向けていた右腕があったはずところからは血が滴り、額の少し横付近にはあかね色の光が突き抜けていて、なずなは白目をむいていた。
崩れ落ちるなずな。
あかねがあかねソードを引き抜いていなかったため、崩れ落ちながら、頭部を頭頂部に向けて消失させていく。
地面に崩れ落ちたなずなだった肉塊の頭部は、深い谷のようなえぐれが生じていた。
「あかね!」
「お兄ちゃん。連携プレーで勝利だね!」
にこりとした笑顔で、小首を傾げるとやっぱかわいい。
あまりの惨い死。しかも、全く見知らぬ人と言う訳でもない事を思うと、心に突き刺さるものが無い訳じゃないが、そんな事も忘れさせてしまうあかねの無事とあかねの笑顔。
「ところで、あかね。大丈夫だったのか?」
そう。ひなたの首筋に突きつけられたナイフで、あかねは自分が拉致られた記憶をフラッシュバックさせて、呪縛状態になっていたんじゃなかったのか?
「当たり前だよぅ。
前の時は、初めて意味の分からない光景がフラッシュバックして戸惑っただけ。もう戸惑ったりしないよ。
それにお兄ちゃんは私が悪魔みたいでも、好きだし、守ってくれるって言ってくれたんだもん」
「じゃあさ、さっき固まって、戦力外っぽかったのは芝居なのか?」
「うん!」
きっぱりと言い切った。
あかねの芝居はくさい三文芝居。
そう思っていたのは間違いと言う事か?
としたら、いつもの俺に見せるかわいい素振りも、大久保が言うようにやっぱ全部芝居だったのか?
「うぉぉぉ」
思わず、そんな声を上げて、頭を抱え込んでしまった。
「そりゃあ、レーザー兄妹でしょ」
田辺の問いかけに、さっきまでは仲間だったはずのなずながあっさりと言った。
「どっちを?
て言うか、妹の方は、戦意喪失っぽいんだけど」
「よく分かんないんだけど、その子、ナイフを首に突きつけられている女の子を見ると、精神が崩壊するみたいなんだ。
だから、そいつは今は戦力外だから、最初に殺っておくなら兄の方でしょ、やっぱ。
えりなちゃんにあかねソードとか言うものを向けちゃってるんだし」
「じゃあ、それで行きますか」
田辺が言った。
たとえ、その動きが新幹線以上の速度だとしても、一瞬にその速度になる訳じゃないはずだ。
加速期間の速度はもっと遅いはず。だったら、そこに勝機をつかむしかない。
あかねソードを田辺に向けたまま、じりじりと植栽を背に後ずさりしていく。
背後の植栽が俺の足に触れた。もう下がる場所は無い。
引き攣らせた顔で、もう一歩下がると、木の枝が折れる音がした。
さらに植栽を折りながら、足を後退させて行く。
まるで、怯えた生き物が強者から、静かに逃れようとするかのように。
田辺の目つきが変わった。
その次の瞬間、田辺の姿は一瞬にして霧散した。
動いたんだ!
初めて使うあかねソードの防御機能を起動する。
ソード状に直線的に放射していた光のエネルギーを、柄の根元から外周に向かって円盤状に放射させる。光の盾だ。
ひなたがいたコロニーのバリアと同じもの。
光に触れたもの、全てを消失させる。
俺の左右は植栽であって、田辺は正面から俺を襲おうとするはず。
そこに田辺が突っ込んで来れば、田辺は体の大半を消失させて、この世から消えてなくなる。
はずだった。
が、予想以上に田辺の動きは速かった。
目の前に迫る田辺の顔と右腕。
演技ではなく、マジで恐怖した次の瞬間、俺の視界はあかね色の光の壁で覆われた。
全てを消失させる光のバリア。
すでに光のバリアを通り抜けていた田辺の肉体の部分はそこでそぎ落とされ、田辺の顔は俺の顎のあたりに激突し、腕はまるでロケット○ンチかのように、俺の肩にぶつかった。
少し前まで田辺えりなと言う少女だった二つの物体は、俺のバランスを崩させる程度の衝撃を与えた後、地面にぽとりと落ちて行った。
植栽の枝を折りながらも、何とか体を支えなおした俺は地面に転がるカラーのMRI画像のような人間の頭の断層物体を目にしてしまった。
今まで何人ものあの生き物を切りさいてきたが、今ほど死体と言うものに恐怖を感じたことはない。背中が凍り付く。そんな感じだ。
が、まだ俺の近くにはなずなと言う敵もいる。
すぐに気を取り直すと、あかねソードをソード状に戻し、構えなおした。
ひなたの背後にいたはずのなずなだったが、少し移動していた。
ひなたの首筋にナイフを向けていた右腕があったはずところからは血が滴り、額の少し横付近にはあかね色の光が突き抜けていて、なずなは白目をむいていた。
崩れ落ちるなずな。
あかねがあかねソードを引き抜いていなかったため、崩れ落ちながら、頭部を頭頂部に向けて消失させていく。
地面に崩れ落ちたなずなだった肉塊の頭部は、深い谷のようなえぐれが生じていた。
「あかね!」
「お兄ちゃん。連携プレーで勝利だね!」
にこりとした笑顔で、小首を傾げるとやっぱかわいい。
あまりの惨い死。しかも、全く見知らぬ人と言う訳でもない事を思うと、心に突き刺さるものが無い訳じゃないが、そんな事も忘れさせてしまうあかねの無事とあかねの笑顔。
「ところで、あかね。大丈夫だったのか?」
そう。ひなたの首筋に突きつけられたナイフで、あかねは自分が拉致られた記憶をフラッシュバックさせて、呪縛状態になっていたんじゃなかったのか?
「当たり前だよぅ。
前の時は、初めて意味の分からない光景がフラッシュバックして戸惑っただけ。もう戸惑ったりしないよ。
それにお兄ちゃんは私が悪魔みたいでも、好きだし、守ってくれるって言ってくれたんだもん」
「じゃあさ、さっき固まって、戦力外っぽかったのは芝居なのか?」
「うん!」
きっぱりと言い切った。
あかねの芝居はくさい三文芝居。
そう思っていたのは間違いと言う事か?
としたら、いつもの俺に見せるかわいい素振りも、大久保が言うようにやっぱ全部芝居だったのか?
「うぉぉぉ」
思わず、そんな声を上げて、頭を抱え込んでしまった。
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